40話〜クロステルの本性
ここはルポアール亭の応接室。ルミネアはマグドとクロステルのやり取りを見ていた。
だが、そのやり取りを見ていられなくなり2人の間に割って入った。
「クロステル様にマグド王子。ここで言い合いをなさるのは構いませんが、マグド王子は良いとして、クロステル様のその発言は見過ごす訳には行きません」
そう言うとクロステルはマグドの腕を離し、ルミネアの方を向いた。
「ルミネア。まさかお前が、この私に歯向かうとはな」
「私はそういうつもりはなかったのですが、そう聞こえたのならばそうなのでしょう。ですが、クロステル様の行動や言動は、王直属である騎士のなさる事でしょうか?」
そう言うとルミネアはクロステルに冷たい眼差しを浴びせた。
「ルミネア。お前、何を言っているのか分かっているのか?」
「ええ、分かっているつもりです。それに、ビスカ様の事ですが、もしクロステル様が自分の欲の為に行動し、このまま強行手段に出られるのであれば、この水晶に先程の会話を録音しておきましたので、城に持参させて頂きます」
「ル、ルミネア!?クッ……。この私を脅すとはな。フッ、まあいい。ちょうどゴルギアスもまだここに来ていない。その水晶さえ壊してしまえば露見する事もない。後は黙らせればいいだけの事だ」
そう言うとクロステルは剣を鞘から抜き、ルミネアに向けた。
「クロステル!?何をするつもりだ!今、自分が何をしているのか、分かっているのか?」
そう言うとクロステルはルミネアを見たまま、
「王子、申し訳ないが。この事に関しては、貴方様のお言葉でも聞くつもりはありませんので、少し黙っていて欲しいのですが」
いつもは冷静なマグドだったが、クロステルにそう言われ頭に血が上り、
「ク、クロステル。クッ、貴様ァ!よくもぉぉぉぉ〜!?」
そう言いながら剣を抜き、クロステルに斬りかかった。
クロステルはマグドを見ると、ルミネアに向けていた剣を向かってくるマグドの剣にすかさず向けた。
そして、マグドの剣とクロステルの剣が交差し、力と力の押し合いになった。
「クッ、はぁはぁ。マグド王子。冷静な王子が、短時間でこうも変わるとは」
「クロステル。俺は、何も変わってなんていない。はぁはぁ、これが本当の俺だ!」
「なるほど……」
そう言うとクロステルは、マグドを勢いよく蹴り飛ばした。
マグドは近くの壁に激突し口から血を吐いた。
「グハァッ!はぁはぁ、ク、クロステル……。いい加減にしろ!?」
そう言うとマグドは、壁に寄り掛かり荒い息をし、ぐったりとしていた。だが、剣を向けながら徐々に迫りくるクロステルを、マグドは睨み付けていた。
「マグド王子。もう貴方様のお世話をせずに済むと思うと清々しますよ」
そう言うとクロステルはマグドの左胸に剣を突き刺そうとしたその時、扉が開きガルドが入って来た。
そして、その光景を見たガルドは、瞬時に身体が動き突進しクロステルをタックルすると弾き飛ばした。
クロステルは近くの本棚に頭からぶつかり、口と鼻から血を流し意識を失った。
そして、ルミネアやマグド達は、ガルドのあまりの速さに、この一瞬で何が起きたのかが分からず呆然としていた。