39話〜マグド怒る
ここはルポアール亭の応接室。ユリィナ達とルミネアは、ガルドとゴルギアスが戻って来るのを待っていた。
ビスカとユリィナはソファの長椅子に座り話をしていた。
「ガルド。大丈夫なのかな?」
「ねぇ、ビスカ。あの時、ガルドの心の中を覗いたのよね?」
「ユリィナ。うん、そうだけど……」
「じゃ、あの時ガルドが、何を思っていたのか知っているのよね?」
「うん。ユリィナは、ガルドが何を思っていたのか知りたいのかな?」
「知りたいと言えば、そうなのかもね。それに、先程からビスカがやたらとガルドの心配してるから、余計かな……」
「ユリィナ。前から気付いてはいたけど。本当にガルドの事、好きなんだね」
「ビスカ。あ〜えっと……。うん、そうなのかもね。でも、何故か分からないんだけど。今までなら好きになった人には、ちゃんと気持ちを伝える事が出来た。だけど、何故かガルドには言えないのよね。自分でも、何だかなぁって思うんだけどねぇ。はぁ……」
「ユリィナ……そっか……」
そう言うとビスカはユリィナの心の中を覗き、
(そうか、ユリィナはガルドの事を聞いて知ってしまったからか……)
「ねぇ、ユリィナ。ガルドが戻って来たら一緒にレベル上げしよう〜」
「ビ、ビスカ!そうね……ありがとう」
2人はその後も色々と話をしていた。
一方マグドとルミネアは、応接室の隅でテーブルに寄り掛かりながら話をしていた。
「ルミネアさん、話とは何なんだ?」
「それは、貴方に聞きたい事があるのです。主人が帰ってくるまでに確認したい事が……」
「ん?確認したい事って……」
そう言うとマグドは何故か嫌な予感がし、
「すまない。少しトイレに行きたいのですが……」
「それは……分かりました。場所は大丈夫ですよね?」
そう言われマグドは頷き、応接室から出ようと扉の取っ手に手を掛けた。
すると、扉が開き見慣れた顔が目の前にあった為、マグドは慌ててビスカ達の方に逃げ、ソファの長椅子の後ろに隠れた。
それを見たその男……そうクロステルはマグドの側まで来ると、
「ここに居られたのですね。そんな所に隠れていても、既に素性がバレているのですから。さぁ、城に戻りましょう」
そう言われマグドはゆっくりとソファの長椅子の後ろから顔を出し、
「クロステル、それはどういう事だ?」
そう言うとルミネアが近付いて来て、
「クロステル様。お久しぶりでございます」
「ルミネアか、久しぶりだな」
「クロステル様が、ここにお越しになられているという事は、主人に聞いて来られたのですね」
「ああ、ちょうど北門の所で会った。ここにマグド様がおられると聞き、お迎えに上がったのだが」
そう言うとクロステルはマグドを見て溜息をついた。
「やはり、マグド王子だったのですね。私は名前を聞いた時から、もしやと思っていましたが」
「私は、何となく分かってたけどね」
「フッ、ビスカ。それは違うのではないのか?」
「フフフ、そうだね……」
そう言うとクロステルはビスカを見て、
「はて?ビスカ……珍しい名前ですね。それに、ドルマノフ様のお子様も、確かビスカ様と聞いていましたが。もしやとは思いますが?」
そう言うとビスカはクロステルを見て心の中を覗くと、恥ずかしくなり顔を赤らめた。
……そうクロステルは心の中で、
(ほほぅ。このビスカとかいう女、服の上からでも分かるその身体、なかなかの上玉と見た!……)
と、思いながらビスカを品定めするような視線で見ていた。
「……そうだったら、どうするつもりなのかな?……てかね、私は城に行くつもりないんだけど!」
「なるほど。これは、なかなか気が強く、それに、人の心が読めるとは興味深い。……そうなると、ビスカ様は城ではなく、我が家へお連れする方が良さそうだ」
そう言うとクロステルは、ビスカの目の前まで来た。
「クロステル!ビスカから離れろ!?」
そう言われクロステルはマグドの方に顔を向け、
「マグド様が、私に意見を述べるとは……。随分と成長なさいましたね。ですが、申し訳ありませんが、こればかりは王子の命令でも引くつもりはありません」
「クロステル!?お前、ビスカをどうするつもりなんだ!」
そう言うとマグドは立ち上がり、クロステルの胸ぐらを掴んだ。
「マグド様が、私の胸ぐらを掴むとは、城を出られ随分とお変わりになられたご様子。ですが……」
そう言うとクロステルはマグドの右手を掴み思いっきり捻った。
「うわぁっ〜!?ク、クロステル……」
そう言うとマグドは左手で自分の右手を抑えた。
「さぁ、マグド様。大人しく城に帰りましょう。ここにいれば、悪い影響が及びかねない」
そう言うと、ルミネアはその光景を見て、
「いい加減にして下さい!?」
そう言うと2人の間に割って入った。
そしてマグドとクロステルは、そう言われ驚きルミネアを見た。