8話
ディアン「こ、ここか?」
俺はようやく中庭についた。中庭には既にフレイヤがおり、周りにはギャラリーが沢山いた。屋上を見上げると、#サヤ__あいつ__#が不敵な笑みを浮かべて見下ろしていた。
フレイヤ「おっっそい!!どこをほっつき歩いてたのよ!!」
ディアン「ご、ごめん。ここ広すぎて、どこに行けばいいのか分からなかったんだ…」
フレイヤ「フン!まぁいいわ。アレをもう一度見せて!」
ディアン「あ、ああ…」
俺はあのランスを右手に出した。
周りのギャラリーから「おお!」と言う歓声が上がる。
フレイヤ「どうやら、本当にカリブンクルスの転生体らしいわね。アンタ、自分が伝説の勇者の転生体だって自覚、本当にあるのかしら?」
ディアン「そんなこと言われても、その、伝説の勇者だったってことを知ったの、昨日のことなんだもん」
フレイヤ・ギャラリー「「「「昨日ッッッ!?」」」」
フレイヤとギャラリー達は驚いた様子だった。
ディアン「あっ、しまった……」
俺は慌てて口を塞いだ。
フレイヤ「か、からかうのも大概にしなさいよアンタ…」
ディアン「いやっ!からかったつもりは無いんだけど…」
だって本当のことだし…。
ギャラリー1「おっ、始まるか?」
ギャラリー2「やっちまえ転校生!」
ギャラリー3「すげぇ、元伝説の勇者
ギャラリー達は更に興奮し始めた。俺は戦うつもりなんて全くないんだが。
ん?いや待てよ?さっき伝説の勇者
フレイヤ「いいわ、教えてあげる!選ばらし者のあるべき姿ってやつをね!」
すると、フライヤの右手から時計を模したような装飾が施された、大きな杖が現れた。あれは確か、ロッドとか言う種類の杖だ。
ディアン「君は一体何者なんだ?」
フレイヤ「私はフレイヤ・エルポート。伝説の勇者の一人、サフィラスの転生体よ!」
ディアン「えぇ!?」
どう言うことだ?伝説の勇者って俺だけじゃなかったのか?
フレイヤ「知らないようだから教えてあげる。サフィラスは、かつて存在した伝説の勇者の一人。カリブンクルスと同行していた仲間よ」
ディアン「他にも伝説の勇者がいたのか!」
フレイヤ「私達だけじゃない…。伝説の勇者は全部で4人いる。あと他にも二人存在するわ」
ディアン「そうだったのか……。って、仲間なら俺といがみ合う必要ないだろ?なんでそうも殺伐としてるんだよ」
フレイヤ「アンタの勇者としての自覚がこれっぽっちもないからよ」
ディアン「自覚?」
フレイヤ「はぁ……。アンタ本当に勇者ってモノを分かってない」
フレイヤ「いいかしら?勇者と言うものは、誰よりも気高く、高潔で、品性のあるべき存在なの!それなのに貴方と言う人は、この世界の常識と言う物をまるで知らない。だから私がアンタの先輩として、勇者のあるべき姿をみっちり教えてあげるって言うのよ!感謝なさい!」
俺は顎に手を当てて少し考えた。
ディアン「うーん…」
フレイヤ「何よ?」
ディアン「それ、本当に勇者のあるべき姿なのか?」
フレイヤ「はぁ?当たり前じゃない!」
ディアン「じゃあ、君は本当に勇者なの?」
フレイヤ「はぁ?アンタこの私を馬鹿にしてるの!」
ディアン「だって、もし君の言う勇者のあるべき姿が本当なら、君自身も当てはまっていないよ」
フレイヤ「な、なんですって!?」
ディアン「君の言う勇者のあるべき姿と言うのは、君の思う勇者の理想像だろ?君の理想を俺に押し付けることが、気高く、高潔で、品性のある行為だとはとても思えないよ」
フレイヤ「なっ───!」
ディアン「確かに君は俺の先輩だよ。俺にはまだ分からないことが多い。でも、だからって傲慢に君の理想像を俺に押し付けないで欲しい。君は君、俺は俺の理想を追求する。それでいいじゃんか。勇者勇者って、結局は俺たちもただの生徒なんだから…」
フレイヤ「それは………」
その時だった────、
ディアン「なんだ?」
中庭の上空、屋上の方から黒い影が差し掛かった。
上を見上げると、そこには数体のオーブイーターがいた。
ディアン「なっ!?オーブイーター!!」
俺はとっさにランスを構えた。
フレイヤ「そんな、オーブイーターが校内に侵入することは出来ないはず…」
フレイヤが思案する。
ギャラリー1「う、うわぁぁぁぁ化け物だ!」
ギャラリー2「逃げろ逃げろ喰われるぞ!!」
ギャラリー達は慌てふためき、逃げ惑う。
ディアン「1、2…………全部で10体か!初めてみるオーブイーターだ…。あまり強そうには見えないけど…。フレイヤ!君も逃げるんだ!」
フレイヤ「え…?」
ディアン「危険だ、早く!」
フレイヤ「…………馬鹿にしないでよ。私も勇者の転生体よ」
そう言って、フレイヤはロッドを構えた。
フレイヤ「足引っ張らないでよね!」