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32話〜与えられし試練

 ここはルポアール亭の応接室。

 ガルド達はルミネアに事情を聞かれていた。

「それで、まずはビスカさんについて聞きたいのですが。先程この魔族の男が言っていたドルマノフ様のお嬢様というのは本当なのですか?」

「うん、そうだよ。でも、そこまで聞かれてたんだね。まぁ、隠してるわけじゃないし別に構わないけどね」

「はぁ、私も迂闊でした。名前を拝見した時に気付かないなんて……。そうだと分かっていれば、別の場所で仕事をして頂いたのですが」

「別の場所って……まぁいいか」

「ビスカさんの方は、ドルマノフ様のお子様だった為、狙われたという事が分かりました。問題はガルドさんが、何故狙われたのか知りたいのですが」

「その事なんだが、何て話せばいいのか分からねぇ」

「それは、どういう事なのでしょうか?貴方の事を話して頂けないのであれば、これから貴方に対して、どう接した方がいいのか分からないのですが」

「ルミネアさんが言いたい事は分かります。ですが……」

「何故、そこまでガルドの素性が知りたいのか俺には理解出来ない。確かに、さっきの事もあるし信用出来ないのかもしれないが」

 マグドがそう言うとビスカはルミネアの真意が気になり心の中を覗いた。

「ん〜……ねぇガルド。ルミネアさんに話しても問題ないと思うよ」

「ビスカ、それはどういう事なんだ?何故大丈夫だと分かる?」

「そうか、分かった。ビスカが大丈夫だって言うなら、狙われた理由を話す」

「うん、ビスカがそう言うのなら大丈夫ね」

 マグドだけが何故話しても大丈夫なのか分からなかったがビスカを信用する事にした。

 ガルドは自分が狙われた理由を話すとルミネアの態度が一変した。

「なるほど。では、ガルドさんは……いえ、もしその話が本当であれば、ガルド様とお呼びしなければなりませんね。それと、お渡ししなければならない物があります」

「俺に渡したい物って?」

「それは、恐らくこれからガルド様にとって必要となる物です」

「なるほど。だが、それが本当に必要な物なのかは、見ねぇ事には分からねぇしな」

「確かにそうですね。では、倉庫にありますので取ってきますので、少々お待ち下さい」

 そう言うとルミネアはその物を取りに倉庫に向かった。

「なぁ、ビスカ。ルミネアさんの態度が何で変わったんだ?」

「ガルド、あのね。ん〜…………。はぁ、本当に自分の事を分かってないんだねぇ」

「そういえば、ビスカ。俺の時もそうだったが、まさかとは思うが心が読めるのか?」

「うん、そうだよ」

「なるほどな。それで俺の素性が分かったという事か」

 そう話をしているとルミネアは1人の男性を連れ戻ってきた。

「おまたせしてしまい申し訳ありません。たまたま騒ぎを聞きつけ主人が来ておりましたので、ガルド様の事を話しましたら、お会いしたいとの事でしたので連れて参りました」

「俺の名前はゴルギアス=レオ。そして、この街の冒険者ギルドでマスターをしている」

「私はユリィナ=モルグと申します」

「私はビスカ=マードレアだよ」

「俺はオマウグ=ジド」

「俺はガルド=フレイ」

 そう言うとゴルギアスはガルドの側にきて話し出した。

「なるほど。お前が、ガルドか。ルミネアが渡したい物があると言ったのだろうが、簡単にその物を渡す訳にはいかない。本当にお前が神と契約した者なのか分からないからな。それでだが、お前に頼みたい事がある」

「頼みてぇ事ってなんだ?」

「頼みたい事とは、本来ならこれはギルドの依頼だったんだが、引き受けてくれる者がいなくてな」

「ん?依頼か……それで、どんな内容なんだ?」

「依頼内容は、この街の北東の森の中に、特別な場所にしか咲かない虹色スミレが生育している洞窟があり、そこに行き虹色スミレを取って来てほしい。と言う依頼なんだがな」

「ああ、引き受けるのは構わねぇ。だが、何で誰もその依頼を受け様としなかったんだ?」

 ガルドがそう言うとゴルギアスはルミネアから一冊の本を受け取った。

「ガルド、虹色スミレ自体が珍しい花。恐らくは見た事がある者の方が少ないはずだ。この本にはその花の事が記載されている。それと注意事項もな。それを見れば、何でこの依頼を受ける者がいなかったのか分かる」

 そう言いながらゴルギアスはガルドに本を渡した。

 ガルドは本のページをめくり虹色スミレを探してみた。

 虹色スミレが載っているページをみつけると、この花の特徴などを調べてみた。

「なるほどな。それでか、この花は普通の花じゃねぇみてぇだな」

「ああ、その花は生きてる。その為、並みの者では取る事は困難だ。おまけに、大虹色スミレが生えていた場合は更に困難になるだろう。それでだが、この依頼が1人でこなせる様なら、お前の事を信じてやる」

 そう言われガルドは少し考えた。

「そうか、分かった。そうなると、一度宿屋に戻って必要な物を取ってこねぇとならねぇ」

「ああ、それは構わない。まぁ、お前が本物なら、虹色スミレを取って来るのは容易いはずだ」

「ああ、そうだな。……宿屋で必要な荷物を取ったら、俺はそのまま洞窟に向かう」

 そう言うとユリィナ達はガルドを心配そうにみた。

「ガルドなら、大丈夫だとは思うけど。無理はしないでね」

「ユリィナ。ああ、出来るだけ無理はしねぇようにする」

「ガルド。俺はそれほど心配してはいないが。まぁ、もしお前に何かあった時は、二人の事は任せてくれ」

「……マグド、あのなぁ。はぁ、まぁいい。そうだな頼んだ」

「ん〜ガルド、本当に大丈夫?でも、一人じゃなきゃ駄目なんだからしょうがないかぁ」

「ビスカ頼む。今の俺の心を覗くのだけはやめてくれねぇか」

「ガルドごめん。でも……本当に無理しないでね」

 ビスカにそう言われたが、ガルドは振り向かず部屋を出ると、休憩室に置いてある荷物を持ち宿屋に必要な物を取りに向かった。

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