31話〜正体とは
ここはルポアール亭。ガルドは紺のフードの男が逃げないように縄で縛った。
ビスカが、その男のフードを取ると、その男の額には、魔族の象徴である紋様の様な痣があった。
「ちょ、ちょっと!?魔族って……。そっか、だからフードで顔を隠してたのかぁ」
「そういう事みてぇだな。ん〜、俺とビスカが狙われるって事は……」
「恐らくは、魔族側もお前を引き入れたいんだろうな」
「ん?マグド、俺を引き入れてぇって、どういう事だ?それに、何でその事をお前が知っているんだ?いったいお前は何者なんだ?」
「あっ、それはな……」
「ガルド、私の予想が当たってれば、その事については、ここで話さない方がいいかもしれないわね」
「そうだね。私は会った時から分かってたけどねぇ」
「ビスカ。俺の正体が何故分かった?」
「あっ、ここだと面倒だから、後で宿屋に戻ったら話すね」
「ああ、そうだな」
「おい!俺だけか。この状況でマグドが、何者か分からねぇのは。はぁ、まぁいい。それより、こいつどうするかだよな」
「そうだね。ん〜どうしようか?」
そう話をしているとルミネアが入ってきて、ガルド達の方へ歩み寄ってきた。
「……これは、何があったというのですか?何故魔族がこんなところに!」
「ルミネアさんは、魔族をご存じなのですか?」
「これでも若い頃は、ギルドでバリバリやってたからねぇ。魔族だって見た事あるさ」
「そうだったのですね……」
「それにしても、店の中がメチャクチャでヒドイ有様だねぇ」
「それには色々と事情がありまして」
「ふぅ、まぁあなた達のお陰で、お客様に被害が出なかったのはなによりですが」
「あっ、これは俺の責任だ!申し訳ねぇ」
そう言うとガルドは頭を深々と下げた。
「ん〜どう見ても、あなた達に修復費用が出せれる様には思えませんし……。そうですね、被害を最小限に食い止めて頂いた事ですし、しばらくの間、住み込みで働いて頂くという事で、どうでしようか?」
「俺はそれで構わねぇが、何をすればいいんだ?」
「そうだねぇ。この事には私も関係してるし、それでいいよ」
「ビスカ。お前、あ〜いや、何でもねぇ」
「……ガルド、あのね。はぁ、まぁいいか」
ビスカがそう言った後、マグドとユリィナはそれに同意した。
「クスクス。あ、これは失礼しました。そうですね、まずここで働いてもらう前に、この魔族の男をどうしましょう」
そう言うとルミネアは魔族の男を見ていた。
「やはり、街の警備兵の詰所に連れて行った方がいいと思うんだが」
「そうですね。確かにそうかもしれませんが……。狙われたのはガルドさんとビスカさんなのですよね?」
「ルミネアさん。何故、その事が分かったのですか?」
「フフ……。それは……」
そう言おうとした時ビスカがホールの天井の四隅を順番に指を差した。
「ねぇ、ルミネアさん。このホールに入った時から、気が付いてたけど。監視用の小さな水晶を、天井の四隅に仕掛けてるよね?」
「監視用の水晶って!どういう事なの?」
「ふぅ、お店としては従業員に関しては怠けている者がいないか、お客様に対しては先程のような事などがあり得ますので、なるべく目立たないように設置していたのですが、バレてしまいましたね」
「なるほどな。それにしても、そんな便利な物があったんだな」
「クスクス、ガルド。この世界には、もっと色々な物があるのよ」
「そうなのか」
そう話しているとルミネアはガルド達を見ると、
「そうですね。では、この魔族の男を警備兵の所に連れて行く前に、ガルドさんとビスカさんの事について、ここではなんなので応接室で詳しく話を聞かせて頂きましょうか」
そう言うとルミネアは応接室に向かい、ガルド達は魔族の男を連れ後を追った。