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30話〜ガルドの実力

 ここはルポアール亭。マグドとユリィナとビスカは店に来ている客や従業員の避難誘導をし、ガルドは紺のフードの男と睨み合っていた。

「おい、どうした?何で動こうとしねぇ」

「それは、こっちの台詞だ!お前こそ、何で動かない!?」

 そう言いながら2人は更に睨み合っていた。

(クソッ!なんなんだこの威圧感は?ガルド……。この男、思っていた以上の力を持っているのかもしれん)

(どうする?人とやり合うのは、初めてなんだが……。どう動きゃいいってんだ。だが、この先もこんな奴らが襲ってくるんだろうな。それに、今の状況じゃ下手に手出しは出来ねぇ。早く皆が避難してくれねぇとな!)

 そう思いながら2人はピクリとも動かず睨み合い続けていた。

 すると、皆の避難が終わりホールの中にはガルドと紺のフードの男だけになった。

 それを確認するとガルドは一呼吸おき、

「フゥ〜、さて皆は避難出来たみてぇだな」

「フッ、そうみたいだな。だが、どうするつもりだ?今の、この状況が変わるとでもいうのか?」

「さあな。変わるかどうかは分からねぇが。ただ、言える事は思いっきり力を出せるって事だけだがな!!」

 そう言うとガルドは大きく息を吸い込み、紺のフードの男を鋭い眼光で睨み付けた。

 紺のフードの男は、先程とは違うガルドの表情とその威圧感に一瞬怯みそうになるが、なんとか持ち堪えた。

「……ガルド!やはり、お前は思っていた以上の存在らしいな」

 紺のフードの男はガルドを見てある事に気付いた。

「ん?ガルド。お前、武器はどうした?素手で戦うつもりなのか?それとも、それがお前の戦闘スタイルなのか?」

「あっ!?そういやぁ剣はここに持ち込めねぇから、休憩室に置いて来たんだった!クッ、こりゃ武器をどうにかしねぇとな」

 そう言うとガルドはふと厨房に目がいった。

(ん〜、厨房の物を使うのもなぁ。だが、今はそんな事も言ってられねぇしな)

 そう思いながら、ガルドは紺のフードの男を警戒しながら厨房に向かった。

 それを見た紺のフードの男は、ガルドを追いかけた。

「ガルド、どうするつもりだ?厨房にでも逃げるつもりじゃないだろうな!」

「俺が逃げる?フッ、まあいい。そう思いたきゃ思えばいい」

 そう言うとガルドは厨房の中に入っていき、紺のフードの男も追いかけ中に入っていった。

 ガルドは何か使えそうな物を探していると、紺のフードの男は短剣で襲いかかった。

 ガルドは慌てて近くにあった大きなフライパンを2つ持ち攻撃を防いだ。

 フライパンはガルドが考えていた以上に厚みがあり重さがあったが、今更他の物と取り替える暇はなかった。そう既に紺のフードの男が短剣を両手に持ち攻撃を仕掛けてきていたからだ。

 紺のフードの男は二本の短剣をガルド目掛け突き刺そうとした。

 ガルドは、短剣を左のフライパンで滑らせるように攻撃をガードし、その場で回転しながらその遠心力を利用し、右のフライパンで力任せに思いっきり紺のフードの男を殴ると、厨房の壁を壊しホールの方まで吹き飛ばした。

 すかさずガルドは紺のフードの男を追いかけ近づいた。

 紺のフードの男はフライパンで殴られ、フラフラになりながら立ち上がった。

「ハァハァ、何だその威力は!?あれがただのフライパンだというのか?クソッ!ハァハァ、これがガルドの力だというのかぁ」

「まだ、立てるみてぇだな」

「ハァハァ、流石に辛いがな」

「お前、まだやるつもりなのか?」

「フッ、ハァハァ、ここで引き下がったら、あの方に何を言われるか分からないからな」

「お前が言う、あの方っていったい誰なんだ?」

「ハァハァ、それは言うつもりはない」

 そう言うと紺のフードの男はフラフラしながら、ガルドに短剣で襲いかかった。

 しかし、ガルドは既にフードの男の動きを見切り襲いくる短剣を尽く(ことごとく)避けた。

 ガルドに攻撃を見切られた紺のフードの男はよろけたが、体勢を立て直し再びガルドに短剣を突き刺そうとした。

 それを見て、ガルドは持っていたフライパンを男に投げつけ怯んだ一瞬の隙に腕を掴んだ。

 すると紺のフードの男の後ろにビスカがいた。

「フフフ、残念でした〜!じゃあ行くよ〜」

 《ビスカ オリジナル ジャンピングアタッーーク!!》

 ビスカがそう言うと、飛び上がり杖で思いっきり紺のフードの男の頭を殴った。

 紺のフードの男はビスカの不意打ちにあい気絶した。

「ビ、ビスカ!お前……。はぁ、まぁいいか」

 そう言うとビスカはガルドを見た後、

「ん〜ガルドってさあ。本当に言いたい事に限ってちゃんと言えないんだねぇ」

「ビスカ。人の心読むのやめてくれねぇか?」

「そう言われてもなぁ。特にさ、ガルドは本当の事言わないから気になっちゃうんだよねぇ」

「はぁ、まあいい。それより、こいつはどうする?」

 そう言うとマグドとユリィナがホールに入ってきてガルドの側にきた。

「ガルド。これは、お前がやったのか?」

「あっいや、ビスカが杖で思いっきり頭を殴って気絶させた」

「えっ?ビスカが杖で殴ったって……。はぁ、そうなのね」

「ん?私が杖で殴ったらおかしいのかな?」

「いや、別にいいんじゃねぇのか。ただ、意外だったのかもな」

「ふ〜ん、まぁいいか。じゃ、こいつ縄で縛っちゃおう〜」

 ビスカがそう言うとガルドとマグドとユリィナはそのノリについていけず頭を抱えた。

 そして、紺のフードの男を縄で縛ったのだった。

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