29話〜紺のフードの男
ガルド達はギルドの依頼書と書類を持ちルポアール亭という店に来ていた。
この店はそれほど高級な店ではないが、大衆の間では安くて美味しいと評判のお店だった。
ガルド達はこの店のオーナーにギルドの依頼書と書類を見せた。
オーナーは書類を見ながら4人を見ると、
「私は、このルポアール亭のオーナーをしているルミネア=レオと申します。そうですね、とりあえず持ち場を決めたいと思いますので、自己紹介をして頂きたいのですが」
「分かりました。では、私から自己紹介をします。私は、ユリィナ=モルグと申します。歳は20歳で、希望は厨房ではなく出来ればホールの方がいいのですが」
そう言うとルミネアはメモを取っていた。
「では、次の方お願いします」
「あっ!私は、ビスカ=マードレア。歳は、ん〜、ごめんなさい言えません。それで、厨房でもホールでも、私はどっちでもいいかなぁ」
そう言うとルミネアはまたメモを取っていた。
「そうですねぇ。では、次の方お願いします」
「俺は……オ、オマウグ=ジド。歳は18歳、希望は別にないので、どっちでも構わない」
そう言うとルミネアはまたメモを取っていた。
「なるほど。クスクス。そうですねぇ……。では、次の方お願いします」
「ん?あ、俺か。俺は、ガルド=フレイ。歳は18歳、希望は別にどっちでも構わねぇが、出来れば厨房がいいんだが」
そう言うとルミネアはまたメモを取っていたがガルドをじーっと見つめ、
「はあ、そうですねぇ。ん〜ガルドさん、両手を見せて頂けますか?」
そう言われガルドはルミネアに両手を見せた。
ルミネアはガルドの両手を触り見ながら確認していた。
「なるほど、そうですねぇ。ガルドさんは体力もありそうですし、料理経験もあるようですので、厨房の方をお願いしたいと思います。それと、ユリィナさんとビスカさんとオマウグさんはホールの方をお願いします。それでは、職場を案内させますので少しお待ち下さい」
そう言うとルミネアは応接室から出ていった。
「ねぇ、ルミネアさんは、何でガルドの手を見て納得したのかな?」
「ユリィナ、俺にも分からねぇんだが」
そう言いながらガルドは自分の手をみた。
「私は分かったけどね。ガルドの手をみて、本当に料理を作った事があるのかを、確認したみたいだよ」
「なるほど、そういう事か。ガルドが料理の経験がなければ料理ダコやマメが出来てない筈だしな。……っていうか!もしかしてガルドに、それがあったって事なのか?」
「そういう事みたいだね」
ビスカがそう答えると、ユリィナとマグドは信じられないと思いながらガルドを見ていた。
そしてガルド達が話をしていると、ルミネアが厨房の責任者とホールの責任者を連れてきた。
厨房の責任者の名前はルトス=ジノと言い細身で小柄な男性で、ホールの責任者はリィーゼ=ネスクと言い背が高く細身の女性だった。
「それでは、早速仕事をして頂きたいと思いますので、責任者と共に持ち場について下さい」
そう言われガルド達は各自の持ち場に向かった。
そして、ガルドはルトスに厨房を案内され、
「さてと。俺はルトス=ジノ、この厨房の責任者をしてる」
「俺はガルド=フレイだ。こういった店で働くのは初めてだが、ある程度の料理なら家で作ってた」
「ほお、なるほどな。まあ、どこまでの料理を作れるか、お手並み拝見と行くか。じゃ、とりあえずメニューとかを把握してもらわねぇとな」
そう言うとルトスはガルドにメニュー表を渡した。
ガルドはそのメニュー表を受け取りみた。
「聞いてもいいか?」
「ん?どうした」
「悪いんだが、このメニューを見ても、全然分からねぇ。多分、実物見れば分かると思うんだがなぁ」
「ん〜そりゃ困ったな。じゃ、仕方ない。まだ夜までには時間がある。そこに書いてある料理を一通り俺が作るから見てろ」
「ああ申し訳ねぇ」
そう言うとルトスは料理を一通り作りガルドに見せた。
ガルドはそれを食い入るように見ていた。
「どうだ!作れそうか?」
「ん〜多分、大丈夫だとは思うんだが」
「そうだなぁ。まだ時間はある、試しに作ってみるか?」
そう言われガルドは少し考えたが、試しに一通り作ってみる事にした。
そして、ガルドが作り終えるとルトスはそれを試食した。
「ほぉ、初めて作った料理にしては結構いい味出してるじゃねぇか」
そう言うとルトスはガルドの素質を見抜き、自分の助手をさせる事にした。
そして夜になり厨房の担当者が4人、ホールの担当者が1人加わり、その後店には客がちらほら入ってきた。
「さて、これからが忙しくなってくるぞ」
ルトスがそう言うとガルドは頷いた。
どんどんと注文が入ってきて、厨房の中は慌ただしくなってきた。
すると、ホールの方から何やら言い合いをする男女の声がしてきた。厨房の者達も何の騒ぎかと思いホールの方を覗きみた。
そしてガルドも気になりホールの方を覗いてみた。
すると、ビスカが紺のフードの男と言い合いをしていた。
ガルドはそれを見てビスカの元にいき何があったのか事情を聞いた。
「ビスカ、何があったんだ?」
「あ、ガルド。あ〜えっと、これは……」
そう言うと紺のフードの男はガルドの名を聞くとガルドの方を向きみた。
「なるほど。まさかこんな所で、2人も獲物にありつけるとはな」
「お前は、いったい何者だ!?」
「フッ、俺はある方の命を受け、この地に訪れている。ドルマノフ様の御息女であるビスカ様、それとガルド=フレイという男を連れて来いとな。まさか、こんな所で獲物が揃っているとは思わなかったが」
そう言うと、紺のフードの男はガルドを睨み付けた。
すると、ガルドは紺のフードの男を睨み返した。
マグドとユリィナは休憩をしていたが、ホールの方が騒がしかったので、何があったのかと見にきていた。
紺のフードの男はガルドを睨み付けながら、
「さて、先ずはガルド=フレイ、お前からだ!?」
そう言うとガルド目掛け数本の小さなナイフを投げつけた。
ガルドはそれを見て避けた。
「おい、お前!?ここが何処だか分かってんのか!こんな所で暴れたら、怪我人がどんだけ出ると思ってんだ!!」
「さあなぁ、俺にはそんな事は関係ないんでね」
「ガルド、これはいったい何があったっていうの?」
「ユリィナ。悪いが、マ、あ、いや、オマウグとビスカと一緒に、この中の人達を非難させてくれ。そうじゃねぇと俺はまともに戦えねぇ」
「ガルド、分かった。俺は皆を非難させたら直ぐ来る。それまで何とか持ち堪えていて欲しい」
「ああ分かった。何とか持ち堪えてはみるつもりだ」
そう言うとマグド達は店の中の人達を非難させ始めた。
「それはどうかな。さて、大人しく捕まってもらおうか、ガルド!」
そう言うと紺のフードの男は不敵な笑みを浮かべながらガルドを見ていた。