29話〜サブ⇔妹{改}
あれからハクリュウ達は、少し身体を休める為、アクアの街にいた。
必要なものを揃える為、各自で行動する事にし、ハクリュウはシエルと共に街を歩いていた。
「なぁ、シエル。まだ、いまいち納得できないんだけど。俺たちが召喚された理由について、夢や異変で召喚された」
一呼吸おき、
「……確かに必要な事だったのかもしれないけど。俺たちじゃなくても、この世界にも強い奴はいるんじゃないのか?」
「確かに、そうかもしれませんが。私は王の命じられた通りに行動したまでです。何故、王が異世界から勇者をと言われたのかは分からないのです」
シエルは少し困った顔になっていた。
「あっ、ごめん。まぁ俺たちが召喚された真意は、そのうち分かるかもしれないし、今は必要な物を揃えないとな」
そう言いながら歩いていると、ハクリュウは誰かと勢いよくぶつかった。
「イッタァ〜ィ!もう誰よ!?」
ハクリュウはぶつかった女性に慌てて手を差し伸べると、
「あっ!ごめん。大丈夫か?」
そして、ハクリュウはその女性を見るなり、
「あー、お前はあの時の!?グロウディスの全財産を盗んだ女じゃないか!」
「あっ!確かあの時の、いかにも間抜けそうな男。っていうか、何でこんな所にいるのかな?」
「それは、こっちのセリフだ。お前こそ何でここに……」
「えっとね。何でって言われても。あっ、僕は連れ探してんるんだった。ねぇ、人探し手伝ってもらえないかな?」
「ハクリュウ様。どうしますか?あまり時間はありませんが?」
「そうだな。今度は本当なんだよな?」
「うん、流石に2度も騙すつもりはないし。それに、一緒にいた連れが、この土地に慣れていないのか、自分の記憶も曖昧らしく、それで心配で探してたんだ」
「その子が迷子になってるってわけか。仕方ない特徴を教えてくれないか」
「ありがとう。えっと、その子の特徴は……肩まで長い黄色い髪とその両脇に赤いリボン」
特徴を思い出しながら、
「確か、赤いリボンのカチューシャをつけてる可愛いヒューマンの女の子で、名前はユリナって言ってた」
「えっ?い、今なんて言った!?そ、そんな……まさかあり得ない。ちょっと待て!本当にその子は、ユリナって言ったんだな?」
「うん、確かだよ!神殿の近くで倒れてた所を助けたんだけど……知り合いなの?」
「神殿の近くでって……どういう事なんだ?俺の知り合いなのかは分からないけど。知り合いなら、ここに来てること自体ありえないんだけどな」
「そうなんだね。あっ、そうそう自己紹介しないとね。僕はアキ。よろしくね!」
「俺はハクリュウ。よろしくな!じゃ、探さないとな」
「私はシエルです。よろしくお願いします」
そして、3人は手分けして探し始めた。
一方クロノアは、ディアナと共に街を歩いていた。そして、しばらく歩いていると1人の女の子が泣いているのに気づきクロノアは近づいて声をかけた。
「どうしたの、迷子なのかな?」
そう聞くとその女の子は頷き顔をあげた。クロノアはその子の顔をみて、
「なっ!?ちょっと待って!まさか……それはいくらなんでもあり得ない!ねぇ、名前なんだけどユリナって言わないよね?」
「えっと、私の名前しってるの?それなら、教えて欲しい事があるんだけど?私のお兄ちゃん。どこにいるか知らないかな?」
「お兄ちゃんって……1つ聞いていいかな?ユリナは、ハクリュウって名前に聞き覚えはあるかな?」
ユリナは首を横に振り、
「ハクリュウって誰?私のお兄ちゃんは、光って名前だし。私の本当の名前もユリナじゃなく乃亜だよ」
「ん〜、ユリナ。多分、ハクリュウはユリナがいう光だと思うんだよね。そいつなら、ここの宿屋に泊まっているよ」
「光兄が?ハクリュウって!?……あっ、そうか兄は、こっちの世界にいたんだね」
クロノアはディアナを見ると、
「ディアナ。1つ聞いていいかなぁ。同じ神殿で2人も召喚できるの?」
「んー、それは普通なら、あり得ない事だと思う。だけど、1つ例外があるとすれば、召喚した際に召喚した者が異世界の扉を閉め忘れたとしか思えないけど」
「そうなると、シエルが異世界の扉を閉め忘れたって事になるよね」
クロノアは頭を抱えた。
(この事態をハクリュウが知ったら、どう反応するのかな?まぁ面白そうだけどね。
まさかハクリュウの妹が、自分が作ったサブキャラで現れたら、かなり動揺するだろうなぁ。想像しただけで、なんかウケるんだけど)
そう思いながらクロノアはディアナ達と宿屋に向かった。
あれからハクリュウ達は、ユリナを探していたが手がかりが見つからず、いったん宿屋に戻ってきていた。
そして、宿屋の外で話しているとクロノア達が戻ってきた。
そしてハクリュウはクロノア達の方をみて、
「えっと、クロノア。後ろにいるのは、ユリナだよな?」
「そうみたいだね。迷子だったみたいだけどね。それとハクリュウ、こっち来て3人でちょっと話したいんだけど」
そして、ハクリュウとクロノアとユリナの3人だけで話し始めた。
「ユリナちゃん。こいつがハクリュウだよ」
「んー……」
「クロノア?これってどういう事だ!確かユリナは、俺のゲームのサブキャラのはずなのに、何でここにいるんだ?」
「ハクリュウ。何か気づかないかな?ユリナちゃんを見て……」
「ねぇ、クロノアさん。このイケメンが兄?いまいち納得いかないんだけど?だってね。兄はいつも眠そうで、こんなイケメンじゃないし」
「おい!まさか……乃亜なのか?」
ユリナはハクリュウの顔をじーっと見てから、
「私の名前が分かるって事は、本当に異世界での光兄なの?」
ハクリュウは頭を抱えて溜息をついた。
「でも、何でこんな事に?」
「えっとね。兄と一度も連絡とれなくなって、心配で合鍵つかって、アパートに行ったら兄はいないし」
そう言いながらハクリュウを見てすぐ視線をそらし、
「パソコンがつけっぱなしで、見たらゲームのログイン画面になってて、面白そうだからログインしら、急に光り出した」
そう言い辺りを見渡した後、
「そしたら、何だか分からないけど、この世界に来てた」
そう言いながら自分の姿を見ると、
「それとなんだけど、私このキャラ嫌いなんだけど」
「まぁ、キャラはおいといて。でも乃亜が、俺のサブキャラのユリナとしてこの世界に来た。これって、どういう事なんだ?」
「ディアナに聞いてみたんだけど。本来なら同じ祭壇では1人しか召喚できないらしいのよね。でもね、例外もあるみたいだけど」
「その例外って?」
「それはね、ディアナの話しだと扉が開いたままの状態なら、あり得るかもって言ってた」
「ちょっと待て!そうなるとシエルが、扉を閉め忘れたって事なのか?」
「そういう事になるね」
そう言うとハクリュウは真意を知るためシエルとディアナをこの場に呼んだ。
「シエル。聞きたいんだけど。俺を召喚した後って異世界との扉は閉めたのか?」
シエルは不思議そうに、
「異世界の扉?何の事ですか?」
そう言うとディアナはシエルに詰め寄り、
「シエル!お前……一応、召喚魔導師なんだよな?まさかとは思うけど、召喚の際に異世界とのゲートをつなぐ扉の事を知らないなんて事は?」
「異世界の扉って……申し訳ありません。勉強不足でした。私は、魔力そのものはあるのですが、召喚魔導師としてはまだ半人前で、扉の事は知りませんでした」
シエルは申し訳なさそうな表情になり、
「ただ、この召喚に関してホワイトガーデンでは、私以外に出来る者もいません」
「なるほどな。ホワイトガーデンでは、召喚魔導師が貴重な存在という事か……」
シエルは頷き申し訳なさそうに、
「そうなると、まだ扉は開かれたままなのでは?」
「まぁ、長い時間が経っているから、もう召喚の魔法陣は消えているとは思うけど」
「それならばいいのですが。本当に申し訳ありません」
「まぁ仕方ない。そうだユリナ。お前は大丈夫そうか?それと確認するけど、お前の職業は分かってるよな?」
ユリナは自分のプロフをみた。
「うん。何とか大丈夫だと思う。えっと職業はビショップって……ちょっと兄!私は回復系苦手なんだけど?」
「多分。俺が作ったのだから、大丈夫だとは思うんだけどな」
「じゃぁ兄。ちゃんと教えてよね!」
ハクリュウはしぶしぶ頷いた。そこにアキが宿屋から出てきてユリナをみるなり、
「ユリナ、どこにいたんだ?でも、まぁ見つかって良かったよ」
ユリナは頷いた。
「それで、アキとユリナはこれからどうするんだ?まぁユリナは心配だから一緒に連れて行くつもりだけど」
「僕は暇だし。一緒について行っても構わないけど。ただ、訳は話してくれないかな?」
そして、ハクリュウ達はアキとユリナに、いま起きている事を話し、一緒に行動を共にする事になった。