28話〜ラウズハープ城{改}
その頃アリスティア達は、グレイルーズ国のラウズハープ城の近くまで来ていた。
城下街に近づくにつれ闇の力が段々と強くなり歩くのも困難な状況だった。
「クソォッ!何という事だ。ここまで来たというのに先に進めない。ノエルさんが、ここに捕まっているかもしれないというのに」
「今ごろ、ノエル様はどうされているのでしょうか。酷い目に遭っているのでは……」
「どうしたものか。この闇の結界を破る事ができれば先に進めるのだがな」
アリスティアがそう言うとハウベルトは何かを思い出したように自分の剣をみて、
「んー、できるかは分からないが、試してみるか」
「試す?この結界を破る方法があるのか?」
「クレイマルス。ああ、あるにはあるんだが。これは、魔法剣を使う者にしか出来ない魔法だ。この魔法は結界を破る事もできると言われている」
そう言いながらハウベルトは自分の手を見て、
「ただ、初めて使う魔法なので、成功する自信がない。だが、今はそんな事を言っている状況ではないしな」
「ハウベルト。なるほど、その魔法で結界を破るという事か」
「ああ。この魔法ならば大丈夫なはずだ!」
「確かに成功すれば、この中に入る事ができる。そうなるとハウベルト。
「アリスティア。あー、えっと……そこを強調して言われてもなぁ。こう見えて俺はプレッシャーに弱い」
「またまた、冗談はよして下さい。あなたのように強そうな方が、プレッシャーに弱いだなんて。そんな風には見えませんが?」
シャナに言われハウベルトは、
「だから見た目で判断しないでほしい!ディアナによく言われるんだが、見た目と中身が全く正反対だってな」
「なるほど。ここまで来る間の様子を見る限りだと、性格は見た目とは正反対のようだな。だが、強いと言うのは間違いないと思うんだが?」
「アリスティア。まぁ、これでも一応は、王直属の魔法騎士団の団長だ。だが、強いかどうかは分からないけどな。まぁ、やるしかないか」
ハウベルトはそのまま結界の方へ歩み寄って行くと、目の前に垂直より少し傾けた感じに剣を立て、目を閉じ、
《光の精霊よ 聖なる光よ 剣に宿れ!!》
そう唱え剣を頭上に振り上げると光が刃を覆い、
《ノールバーストカット!!》
剣を斜めに振り下ろすと、結界は魔法でかき消されたが、また直ぐに闇の結界が張られた。
「な、何なんだ!?この結界は……。どうみても普通じゃない!!」
「ハウベルト。確かに、おかしいですね。普通であれば、あの威力とあの魔法であれば、結界がかき消されても、おかしくないと私も思います」
「さて、どうする?この状況だと最悪としかいえないが。……打つ手がなくなった。どうする?他の方法を考えるか?」
「アリスティア。確かに、そうするしかないと思う。ただ、他の方法となるとな。居場所だけでも突き止められれば、少しは前に進めるとは思うんだが」
「あっ!ノエル様は、私が召喚しましたので、もしかしたら探索用の召喚獣で、探す事ができるかもしれません」
「なるほど。そういう事なら、試す価値はあるかもしれないな」
アリスティアがそう言うとシャナは杖を構えた。
「それでは皆さん。少し下がっていて下さいね」
シャナは杖の先を地面に翳し召喚する為の魔法陣を描くと、
《我と契約せし者よ 汝その姿を現し命に従え 幻獣影鼠!!》
そう唱えると魔法陣が光りだし、そこから小さな黒い鼠が現れた。
そしてその黒い鼠はシャナをみると、
「お呼びでしょうか。Ms.シャナ」
「なるほど……。幻獣でも喋るんだな。それにしても大丈夫なのか?こんな小さな鼠なんかで?」
そう言うと、その黒い鼠はハウベルト目掛け黒い霧を放った。
それを見てシャナは慌てて、
「あっ、ダメ!?影鼠それ以上は、ハウベルトが!」
シャナが止めに入ったが影鼠は、
「Ms.シャナ。この私に、こいつは侮辱を……」
ハウベルトは黒い霧を剣で何とか防いでいた。
「ふぅ〜、危ない危ない。なるほど、この霧は毒又は強力な催眠ガスか何かか?」
そう言いハウベルトは影鼠を見ると、
「あっ、それと影鼠すまなかった。幻獣自体あまり見た事がなかったのでな。それも喋るタイプは特に……」
「なるほど。それならば良いでしょう。では、改めて私の名前は、シャドウラットの影鼠と申します」
「おい、影鼠って……。名前だったのか?てっきりそういう種類かと思っていた。それにその名前って、そのまま言い方を変えただけなんじゃ……」
「アリスティア。その名前は、私がつけたのですが」
「シャナ。前から思ってたんだが、幻獣に名前つけるのはいいが、よく考えてつけてあげた方が、いいんじゃないのか?」
「これはこれで、私は気に入っていますので、お気になさらず。Ms.シャナ。それでは改めて、私は何をすればよいのでしょうか?」
そう聞かれシャナは、ノエルを探すよう指示をだし、影鼠は一度会釈をした後、姿を消し探しに向かった。
「さてそうなると、これからどうする?」
「ハウベルト、そうだな。このままここで、影鼠を待っているわけにもいかないだろうし。俺たちも、手がかりを探した方がいいだろうな」
「クレイマルスの言う通り、そうした方が良さそうだな。確か、この先に村があったはず。そこで少し休みながら、この先の事を考えよう」
そしてアリスティア達は、この場を離れ城の近くにある村に向かった。