30話〜3人の大臣{改}
ここは辺境の地に新しく作られた城。ノエルは城の牢屋の中に入れられていた。そしてユウは疲れた為、用意されていた寝室でやすむことにした。
一方、大臣のオルドパルスは客室にて、2人の者と話をしていた。
「これはこれは、お待たせしてしまい申し訳ない。ホワイトガーデンの大臣ゲラン殿に、ブラックレギオンの大臣カプリア嬢」
少し間をおき、
「ここまでは我々の思惑どうり事が進んでおります」
カプリアが笑みを浮かべながら、
「オルドパルス。本当に、うまくいくのだろうな。そうでなければ、これまでの計画が……」
そう言おうとしたのを遮り、オルドパルスは持ってきた水晶玉を2人の目の前に置いた。
「ふっ、そう案じなさるな。この水晶がある限り、計画はうまくいくはずなのでね」
「うむ、だがなぁ。もう少し用心した方が良いのではないのか?」
「まぁ、計画どおり各地で異変を起こし、各国に勇者を異世界から召喚するように仕向け、各城を結界で覆う事ができた」
そう言いオルドパルスは身振り手振りを交えながら、
「そして、こうして魔王の器となられる異世界の者を召喚することに成功した」
笑みを浮かべるとカプリアとゲランを見た。
「それに、運良く異世界の勇者のうちの1人を捕まえることができた。まだ本来の力を手に入れていない今であればどうにでもなる」
「だが、オルドパルス。その異世界の女を、生贄にする案なのだが……」
「ゲラン殿。不服なのですか?私は良いとは思うのですが」
「カプリア嬢。何となくだが、どうも気が乗らない。それに、その水晶玉は本当に信用できるのか?」
「この水晶の玉は紛れもなく、あの伝説の水晶に間違いない。それにゲラン殿、貴殿も我々と同じ気持ちのはずでは?今のこの世界を根本的に変えたいと」
そう言いながらゲランに視線を向け、
「……そして、あわよくば魔王様に、この世界を支配して頂き、我々は魔王様と共に新たな国を再建していく。そうあの時、決めたはずでは?」
「そうなのだが。ただ、腑に落ちない事がある。なぜ魔王様でなければならないのか」
「ふぅ、こんな議論などするより。本当に、魔王様にお会いする事が出来るのだろうな?」
「今は、寝室でお休みになりたいとの事ですので、明日までお待ち頂ければと」
「異世界の女に会ってみたいが。可能か?」
「はて?ゲラン殿。何故、あの異世界の小娘に会いたいと言われるのか?」
「それは……ただ、どんな女なのかと思い会ってみたくなっただけなのだがな」
「まぁ、会うだけであれば差し支えないとは思いますが」
「それならば、私も生贄にされる前に会っておくとしましょう」
「それでは、小娘の所にご案内いたしましょう」
そして、3人は部屋から出て地下の牢屋に向かった。
その頃ノエルは牢屋の中にいた。
相変わらず動けないように拘束されていたが、口を塞いでた布はここに来た時に外され、喋れるようになっていた。
(それにしても、妙に真新しい牢屋だにゃ。もしかしてここって、私が最初に入れられたのかにゃ?
にゃんか妙に嬉しい……って言うか〜!?こんにゃんで1番ににゃっても嬉しくにゃ〜い!!)
そう思っていると階段を降りてくる数人の足音がした。
そしてノエルは音がする方を見ようとしたが、
「うっ、動けにゃ〜い!!」
ノエルは大声をあげた。そして足音はノエルの近くで止まり、
「ふぉ、なるほどのぅ。これが異世界の勇者か。まだ本来の力を手に入れていないと言っても不甲斐ない」
カプリアはノエルを見下すような態度で、
「それに、これほど小さく子供のような容姿。どれほどの力を持っているかは分からぬが。これほど頑丈に拘束する必要などあるのかのぅ」
「誰か知らにゃいけど、言いたいことをズケズケと……そこの化粧の濃いおばさん!!」
「おっ、おばさんて……面白い!この私を、おばさんと呼ぶとは、ノエルとかいったわね。オルドパルス殿。悪いが、この鍵を開けてもらえるか?」
「カプリア嬢。構いませんが、何をなされるおつもりか?」
「ププッ、カプリア嬢がおばさんって……」
「黙れ!ゲラン殿。それ以上、言ったら貴殿でも私は何をするかわからぬぞ」
「ふっ、まぁなんにせよ、この小娘は……」
「カプリア嬢にゲラン殿。まぁ話す事は出来ても、拘束しているので抵抗する事は出来ないとかと。危害が加えられる心配はないと思いますので」
そう言いながら鍵を開けた。
「悪いが少し2人にしてはもらえまいか」
「何をしたいのかは分かりませんが。まあいいでしょう。ではゲラン殿。我々は上で……」
「まあ、ここでこうして見ていても、仕方ないだろうし。僕の目的は果たしたしな」
2人はそう言いながら、上へとあがっていった。
そしてカプリアはそれを確認すると、牢の中に入りノエルの前に立ち耳元で、何かを呟いた。
すると、カプリアはノエルの腹部を思っ切り蹴り上げた。
「うっ、ぐはぁ!!クッ、い、痛い!にゃにするんだにゃ〜!?」
「当然しれた事。この私を、おばさんと呼んだ報いだ。まぁ、この程度で済ませてやるがのぅ。お前は魔王様への生贄。ここで殺すわけにもいくまい」
カプリアは階段がある方を向くと、
「せいぜい、ここでその日が来るまで、おとなしく待ってるんだねぇ。アハハ……」
そう言うとカプリアは高笑いしながら歩き出し、階段をのぼって行った。
そしてノエルは、蹴られた所が痛いのを堪えながら、カプリアが耳元で呟いた言葉の意味を考えていた。