22話〜魔族と人間とのハーフ
ビスカはマリアンヌに言われ水晶に両手を乗せた。マリアンヌはそれを確認すると、水晶に両手をかざし天職と現職を調べ始めた。
すると、水晶は漆黒に近い紫色に染まり光を放った。
「ビスカさん……申し訳ないのですが、貴方に少しばかり聞きたい事があるのですが?」
「ん?何かなぁ」
「単刀直入にお聞きしますが、貴方は魔族なのですか?それとも人間なのですか?」
「ハハハ……。えっと、何て言ったらいいのかなぁ。ん〜そうだなぁ、魔族でもあるし人間でもあるしなぁ」
「それは、どういう事なのですか?魔族と人間の間に出来た子供という事なのでしょうか?」
「ん〜そうなるんだろうね。でも、その事と今調べてる事に何の関係があるのかな?」
そう言われマリアンヌは少し考えた後、
「ビスカさんの天職なのですが、ハッキリと出ている方は大魔道師です。しかしながら、ぼんやりとですが、大賢者という答えも出ているのです。ただ、これは、貴方が、魔族として生きる道を選ぶか人間として生きる道を選ぶかで決まってしまいます」
「ねぇ、もし魔族として生きる道を選ぶと、どっちになるのかな?」
「そうですね。魔族として生きる道を選んだ場合は今のまま大魔道師になると思います。しかし、人間として生きる道を選べば、大賢者になる可能性はあるのですが……。でも、気になりますね。何故、ビスカさんの天職に大賢者という選択肢が現れたのか?」
「あ〜それね。答えは凄く簡単だと思うよ。多分、お父様が人間で大賢者だからじゃないのかな?」
そう言うとマリアンヌは驚きビスカを覗き込んだ。
「い、今何とおっしゃられたのですか!?まさか!貴方は、あのド、ドルマノフ様のお子様なのですか?」
「うん、そうだよ。でも、何でそんなに驚くのかな?」
「しかし、まさかこんな所にドルマノフ様のお子様が、お見えになられるとは思いもよりませんでしたので……」
そう言うとマリアンヌは俯向き少し考え始めた。
(まさか、こんな所にドルマノフ様のお子様が来るとはね。それにこの水晶では人間として生きる道を選べば大賢者になれると出ている。それならば、まだ何も自覚していない今のうちにこちら側に引き入れれば……。ただ私の一存ではどうする事も出来ない。そうなると、この事を陛下に急ぎお伝えした方が良さそうね)
そう思っているとビスカがマリアンヌをジッと見ていた。
「ねぇ、マリアンヌ。ちょっと言ってもいいかな?」
「はい、構いませんが。どうされたのですか?」
「ん〜どうしようかなぁ。これ本当は言いたくないんだけどね。私がこの能力使えるのがバレるから。でも、流石にさぁマリアンヌの表情が明らかにおかしかったから使っちゃったけど」
「はぁ、いったい私の表情がおかしかったとは、どういう事なのでしょうか?」
「マリアンヌ。本当に水晶にはそう出たみたいだけど。そもそも私は大賢者になるつもりもないし、誰かに利用されるつもりもないわけで。それに、そう考えるのは貴方の勝手だけどね。ただ、そういう面倒な事に巻き込まないでほしいわけ。言ってる事分かってくれたかな?」
そう言われ、マリアンヌは一瞬驚き目が点になった。
「あ、あの……。もしや、ビスカさんって人の考えている事が分かるのですか?」
「まあねぇ。ただ、この能力は意識して覗かないと見えないし分からないんだけどね」
「なるほど、そうなると先程、私が考えていた事は全部筒抜けになってしまった。と、いう事になりますね」
「そうなるね。でも、やっぱり人は見かけじゃ分からないよねぇ。こんな事を平気で考えているんだもんね」
そう言うとマリアンヌは表情を変え、
「そうですね。そうなると隠しても仕方がないですし」
そう言うとマリアンヌは片膝をつきビスカを見ると、
「ビスカさん。いえビスカ様。貴方はドルマノフ様の後を継ぎ大賢者となるべきです。そして、願わくば、我々人間側に……」
「ふ〜ん。どうしようかなぁ……。な〜んてね。てかねぇ、さっきも言ったと思うけど、私は、大賢者になる気はゼーーーッタイ無いし。それに面倒な事は嫌いなのよね」
そう言っているとユリィナがマリアンヌを見て、
「マリアンヌ。いったい、貴方はここで何をしようとしていたのですか?まるで、特別な存在を探していたように見えるのですが?」
そう言うとマリアンヌはユリィナを見てから俯向き少し考えた後、ここにいる本当の理由を話し出した。