25話〜母は強し
ブラット達は宿屋に戻ってきた。
だが、ブラットが泊まっている部屋だけ、何故か扉が開いていた。
ブラット達は恐る恐る部屋を覗いてみた。
すると、そこには綺麗な女性がいた。
「お前は誰だ?ここは……」
サアヤがそう言いかけたが、その女性はブラットを見るなり、
「……ああ、ブラットなのですね。こんなに大きくなって」
ブラットに抱きついて来た。
ブラットは抱きつかれ困惑しながら、
「あの〜すみませんが、どなたですか?」
「そうですよね。会ったこともない母親が、いきなり目の前に現れ、こんな事を言っても困りますよね」
「まさか、貴方は元魔族の女王カトレア様なのですか?」
カトレアは頷き、
「ええ、カトレアです」
「えっ⁉︎何でここに母さんが?」
「もちろん、ブラットの顔が見たくて会いに来てしまいました」
「しかし、カトレア様。よく、あのクレイデイル様が城から出る事をお許しになられましたね」
「ブラットの件もそうなのですが。私は、あの人に会いたいのと、いい加減にビスカをエクスダールに連れ戻さなければなりませんので、でなければ被害が増えるかと。はぁ……」
「もしかしてビスカって、あの破壊魔女のビスカ=マードレアおばさんの事かな?」
「あら、貴方はビスカの事を知っているのですか?」
「うん、私に魔法を教えてくれた人だよ!」
「なるほど、それで魔法が少し崩壊しているわけか」
「崩壊って……あのね威力があるって言って欲しいんだけど!!」
「それで。えっと、母さんはそのビスカって人探しているのか?」
「ふふふふ、いいえ。だいたいの居場所は分かっています。ただ、今はブラットの顔が見たくて、ここに来ただけです!」
「はぁ……」
「そうなると、カトレア様はこれからどちらに?」
「そうですね。恐らくは、ビスカはあの人の所に居ると思いますので」
「えっと、そのビスカって人と親父ってどういう関係なんだ?」
「そうですね。早い話が、ビスカにとってあの人は片想いの相手なのですが。流石に、あの人は相手にしてはいないようですけどね」
「なるほどねぇ。しかし、カトレア様1人であの村まで行かれるのですか?」
「ふふ、そうですね。ここまで来れたのですから、恐らく大丈夫でしょう」
「母さん。本当に、大丈夫なのか?」
そう言うとカトレアは溜息をつき、
「はぁ、ブラット。貴方に、心配されるとは……」
「ククッ…ブラット。お前よりは、カトレア様の方が強いと思うぞ!」
サアヤが意地悪そうに言うとブラットは、
「えっ、マジで?」
「ブラット。これからは、私をも超えなければなりません。そして、父ガルドをも超える覚悟で、この先歩んで行かねばなりません」
「母さんと親父を超える覚悟で、俺が……」
「カトレア様。貴方は、ブラットにその事を言いたくてここに」
「ええ、そうですね。ブラットは、あの人にかなり軟弱に育てられたみたいですので」
「それは、はははは、はぁ……」
ブラットは苦笑し溜息をついた。
そしてカトレアは、しばらく話をしてから、暗くなる前にディクス村に着くように、名残惜しそうに街から出て行ったのだった…。