嘆願
ある日の交流場にて、れいは第二世代の面々に頼みこまれていた。
「………………つまりは、もっと強くなりたいと?」
「はい。恥ずかしながらそうです」
第二世代の管理者達の話によると、現在管理者間、特に若い世代の管理者達を中心に治安と言うか、規律が乱れ始めているそうだ。
それについてはれいも把握していたし、それが最も酷い時が世界の大量消滅だったわけだが、やや落ち着いたとはいえ今でもそれが続いていて、規模が大きすぎて抑えるのが大変らしい。
第二世代を中心に組まれている管理者達を纏める組織は機能しているが、数は暴れている方が多く、流石の第二世代も少数程度が相手ならばまだしも、大量の管理者相手となると手を焼くらしい。
それでれいへと相談を持ち掛けたということ。最初はれいに戻ってきて欲しいという話だったが、既に創造主とは距離を置いているのでそれは断った。
では誰かを派遣して欲しいという話になったが、それも断った。れいが創造する管理補佐は既に創造主を超えているので、管理者程度であれば束になっても問題ない。それはペット達も同様だが、やはり関わり合いにはなりたくないのだ。
そういうわけで、最終的にはどうにか自分達が強くなれないか、という話になった。
第二世代の管理者達は、全員がれいが直接指導した者達。それも初めて指導した者達なので、相談を受けたれいは直接指導していなくとも、記憶は共有されているので多少は助けようかという気にもなりはするが、だからといって、折角切った縁をまた結ぶという気にもなれない。
ではどうしようかと、眼前で真剣な眼差しを向けてくる教え子達相手に考える。
「では、そうですね………………少し成長の手助けをしてあげましょうか」
「ありがとうございます!!」
自身の力で解決させる分には問題ないだろう。そう考えたれいは、手っ取り早く第二世代全員の能力を底上げすることにした。
元々創造主によって制限が設けられている状態なのでそれを取り払い、そのうえで成長速度を適正値に戻し、現在の能力を一気に強化する。
れいは第二世代の管理者全員分を一瞬で終わらせると、第二世代の管理者全員が礼を口にしたので、その後に調節した内容を伝えておく。
「とりあえず、能力を十倍ほどにしておきました。成長速度も上げておきましたし、成長の上限も取り払いましたので、いずれ全員創造主も超えられることでしょう」
「え?」
れいの言葉に、全員がぽかんとする。もっとも、それが普通の反応だろうが。
「これで管理者程度であれば問題なく対処可能でしょう。その前に上昇した力に慣れる方が先でしょうが」
唖然としている者達を無視して、れいはそう話を締めくくる。強くなりたいというのが願いだったので、それを叶えてしまえばもう用はないだろう。
そうして第二世代を強化したことで、騒動が少しは収束してくれるだろうとれいは期待する。
現在騒動を起こしている管理者達は、おそらく各世界で創造されている生き物を参考にして創られたのだろう。
創造主自身も参考というよりも、永く観察したせいか影響を受けてしまっているような気がしていた。
浅はかで欲に塗れた存在。それを導くことこそあれ、逆にそれに影響を受けてしまうなど困ったものだとれいは思うも、既に創造主とは縁は切っているので、どうだっていいかと思い直す。
交流場では、そういった騒動は今でも少ない。それでも教訓というのは薄れていくもののようで、また騒ぎを起こす者が出てきていた。それは管理者が起こした騒動だったり、連れてきた管理補佐が起こした騒動だったりと様々だが、とりあえず騒動の元が管理補佐だった場合は、大勢に影響は無いとして即消滅させている。
そうすると、面白いように連れてきた管理者が釣れるので、故意的な場合は管理者も断罪していた。
もっとも、監督不行き届きでも幾らかのペナルティは与えているのだが。そういった解りやすいパフォーマンスのおかげで、今でも交流場での騒動は少数で済んでいた。
れいが交流場を管理する補佐のために創造した管理補佐達はそういった業務もあるので、強さはハードゥスの管理補佐であるメイマネ達以上、ネメシス達未満といったところ。
管理補佐が管理者を断罪してもその責任は全てれいが請け負っているので、管理補佐達には騒動を起こす相手には容赦せずに罰を与えるように言い聞かせている。
そういった努力のおかげで、交流場は今日も平和であった。
折角第二世代を強化したのだから、これからは他の世界間でもこれぐらいの平和が欲しいものだとれいは思うが、それは難しいだろうなとも同時に思うのだった。なにせ、それを創る側が変わっていないのだから。