20話〜ブラックレギオンの異変{改}
あれからクロノア達はクロック村を出て、城の前まできていた。
そしてディアナとハウベルトは城の様子がおかしい事に気がつき、
「ディアナ!これは、どうなっているんだ?」
「あたしにも分からない。何で城の周りに見た事の無いような結界が張られているの?それに、城の上には暗雲が立ち込めているし」
「もしかして、あそこに目的の城があるの?」
「ええ、そうなのですが。ああ、どうなってしまったっていうんだ!王はご無事でいるのか?」
そう言いながらハウベルトは、城があるであろう場所を見つめながら、
「考えていても仕方がない。どうする?ここにいても仕方がないと思うんだが」
「そうねぇ。ひとまずはここを離れ、何か策を考えて来た方がいいわね」
クロノア達はその場を離れる事にした。
「それで、これから行くあてはあるの?」
「行くあてはあるのですが。その前に、歩きながら色々と話さなければならない事があります」
「そうだな。これは、話さなければならない。そして、何でクロノア様を召喚しなければならなかったのか、その本当の理由を」
そう言いハウベルトはクロノアを見た。
「数ヶ月前、城内で異変が起こり始めた。仲間同士の言い争い。そして貴族たちがおかしくなり始め、王もまた身体の不調を……」
「それで王様に頼まれたって事なの?」
「王はさっきもハウベルトが言った通り、身体の調子が悪くなり、床に伏せている状態なの。それ故、これはある組織との相談で事を起こした」
ディアナはそう言うとハウベルトを見た後クロノアへと視線を向けた。
「だけど、異世界の者の召喚をするには、上層部の許可がいる。あたしだけの力では動けない。だから、嫌でもハウベルトを頼るしかなかった」
ディアナは意地悪そうな顔でハウベルトをみた。
「おいおい、嫌なら俺は別に、って言いたいところだが、今はこんな事をしてる場合じゃない!!」
「ちょっと待って、ハウベルトって……そんなに偉い人だったの?」
「偉いといえば、偉いのだろうなぁ。これでも王直属の魔法騎士団長を務めているぐらいだからな」
ディアナがそう言うとクロノアは目を丸くして驚いた。
「本当なの!?えっと……」
「クロノア様から見ても、こいつが魔法騎士団長に見えないよねぇ。それも王直属のだなんてね」
「あのなディアナ。クロノア様に言われるのは構わないが。いくら幼馴染でも普通、そこまで言うか」
ハウベルトはそっぽを向きいじけた。
「悪い悪い。ハウベルトをからかうと面白いから、ついついね」
「そっか、2人は幼馴染なんだね。……幼馴染じゃないけど友人は1人いた。だけどある事がきっかけで今は絶縁状態だけどね」
そう言うとクロノアは果てない空の彼方を見つめ、
「……でも今はそういう友達とかはいない。だけど、気軽に話せる友人は出来た」
クロノアは軽く笑みを浮かべ、
「顔も本当の名前も知らないけど、そいつらと話していると、普段の私でなく別の自分になれたようで……」
クロノアはそう言うと少し俯いてから、空を見上げた。
「何か、クロノア様を召喚してしまい、申し訳ないと思ってしまったのですが……」
「大丈夫だよ!そんなに気にしてないから。ただ、なんとなく懐かしくなっただけ。それよりも、これからその協力者がいる所に行くんでしょ?」
「行くというか戻ると言った方が、正しいのだろう」
そう言いハウベルトはもと来た道の先を指さした。
「あの盗賊がいると言われて行った洞窟を覚えてますか?あそこが実は、その協力者がいるアジトだったんですよ」
ハウベルトはそう言うと少し申し訳なさそうな顔をした。
「確かに、あの時はヒヤヒヤした。まさかあんな依頼受けた上に、自分のアジトに行くはめになるとは思わなかったからね」
「なるほど、そうだったんだね」
「そうそう、その協力者がいる組織なのだが、革命派という組織で、いち早くこの異変に気づいた男が立ち上げたんだが」
少し間をおき、
「ただ、その人はこの国の者ではないんだがな」
そして過去の話や言い伝えなど話しながら3人は歩いていた。
「……じゃ、もしかしたら、他にも異世界から来た人がいるって事なのよね?」
「そうなりますね」
「……待って!前回召喚された異世界の者たち以前にも、召喚された異世界の者たちがいた」
クロノアはそう言い、聞いた話を言葉に出しながら整理はじめた。
「それも、その3人がドラゴンマスターで、この世界を焼きつくした。……残ったものだけが……えっと、それでなんだけどね」
そう言いディアナとハウベルトを見ると、
「私の頭が硬いせいなのかは分からないけど、それって救ったって言えるのかなって思うんだけど?」
「確かにそうかもしれない。でも事実、あの頃はそうするしかない状態だったんだと思う」
「ん〜、そうだとしても……」
「今のように知識などない者たちの集まりだったらしいからな。それに争いがとにかく絶えなかったらしい」
そして3人はそう話しながら、ひたすら洞窟にあるアジトへと向かった。