1話〜運命の歯車が動き出す{改}
かつてこのサラディアーナには、魔法など存在しなかった。
しかし神々は人々の争い、魔族との争いを阻止する為、人間の中から1人の魔導師を誕生させた。
その魔導師はあらゆる魔法を広め、この世界の理を変えた。
そう、王に助言できる賢者の地位を確立し、神々からのメッセージを受け取れる存在である、賢者の地位を高めた。
その魔導師は、大賢者と呼ばれる程になった。だがその地位と力を巡り、更に争いは増した。
神々は思った。考えが間違っていたと……。
そんなある日、神々は1人の男に目をつけた。
その男は、誰よりも強く、誰よりも清く、誰よりも忍耐強く、そして誰よりも孤独だった。
ここはディクス村。村の西北西の端の方に、小さな家が立っており、青年が1人暮らしている。
青年の名はガルド=フレイと言う。
ガルドは、幼き頃に両親を亡くしているせいか、人付き合いが苦手だった。
それでも、頼まれれば断れない性分な為、村の者達にいいように利用されていた。
ガルドはその事に気づいていたが、頼られる事が嬉しかった。
村の外で魔物や獣が現れた時も、ガルドは村の人々の為に立ち上がった。
ガルドは感謝されたが、やはりその場限りでしかなく、家に帰ればまた1人になる。
そうガルドの心は、どんなに頑張っていても、いつも孤独のままだったのだ。
そして月日が流れ……18歳のこの日、新たな運命が動き出す。
ガルドはいつものように頼まれ、村の外壁の修理をしていた。
すると山の洞窟の方から女性の悲鳴が聞こえ、ガルドはその声がした方へと急ぎ向かった。
そして洞窟の近くまで来ると、入り口付近に倒れている女性を見つけた。
ガルドはその女性に近づき話しかけた。
「これは……おい!ここで、何があったんだ?」
「た、助けて下さい。ど、洞窟の中に、巨大な魔物が現れて……。はぁはぁ、あの人がまだ中に……」
女性は魔物に襲われ、致命傷ではなかったが、腹部に深い傷を負っていた。
ガルドは持っていた薬草や傷薬などで、その女性の手当てを簡単に済ませ、安全な場所に避難させた。
そして、動けるようになったら、村の方に行くようにと言うと、ガルドは洞窟の中に入って行った。
(いったい何があったって言うんだ?この洞窟には、それほど強い魔物などいねぇはずだ)
そう思いながら辺りを警戒しつつ、更に奥へと進んだ。
(それに最近、何かおかしい。前よりも、魔物や獣が凶暴化しているような気がする)
そう思っていると洞窟の奥の方から、男の悲鳴が聞こえて来た。
ガルドは慌てて、悲鳴が聞こえた方へと急いだ。
するとそこには、女性の仲間らしき男性が、魔物にやられ血を流し倒れていた。
ガルドは一瞬、後退りしそうになった。だが目の前の巨大な魔物が、ガルドに気づき襲おうとしていた。
そしてガルドはそれに気づき身構えたが、その魔物を見て驚いた。
「本でしか見た事がなかったが……。てかその前に、何でこんな所にこいつがイヤがる!」
そう洞窟の中にいた巨大な魔物は、普通であればこんな場所にいるはずがない、キングオーガだった。
そのキングオーガは、雄叫びをあげ斧を振り上げると、ガルドに襲いかかって来た。
「グオォォォォ〜!!!」