自立のための下準備
世界の消滅に伴い、ハードゥスに流れ着く人が急激に増えた事で、住居の方がかなりの速度で埋まっていく。今はまだ余裕があるが、今のペースだと近いうちに確実に足りなくなってしまうだろう。
住居もそれなりの数が流れ着いているはずなのだが、一人で一軒とまではいかないが、やって来る人は世界も所属もバラバラなので、中々に難しい。やってくる建物だって全てが無傷という訳ではないのも面倒なところ。
これからは住民達が自分達の手で家を建てる必要が出てきたので、そうなると土地の問題が出てくる。周囲の平原はかなり広いとはいえ、それでも限りがある。
というのも、やはり森の漂着率の高さが問題だろう。最も多いのは海水だが、それは海として創った水槽がもの凄く広大で深いので、その辺りは問題ない。水槽には今でも余裕がある。
それに現在れいは、漂着物を集めた一角の外側を海で囲おうかと考えていた。やはりペット区画と漂着物を集めた一角は別物という事で、その間に明確は線を引こうと考えたのだ。
しかし問題は、周囲全てを海で囲ってしまうと、土地を拡張する際に少々面倒という事だろうか。もっとも、少々面倒なだけだが。
次に多いのは土だが、それも山に追加するか、土を積み重ねて造った丘があるので、そこに追加すれば問題ない。
だが、森に関してはそうはいかない。森は平地や斜面などの土に接していなければならないので、森の上に森を重ねるなんてことは出来ないのだ。つまりは場所を喰う。
おかげで、漂着物を集めた一角は、ほとんどが森という状態になっている。実際は海が最も場所を取ってはいるが、それは一角の外側なのでそこまで気にはならない。
森以外にも、ハードゥスには山や砂漠や草原やらと色々在るのだが、ほとんどが端の方に追いやられているか、侵食されている。
そういう訳で、れいは世界を再配置することにした。一角の範囲を大幅に拡げ、森以外も中の方に配置していく。そのまま森に呑まれたら、その時はその時だ。
居住区画周辺の平原も広げる必要があるし、建築に必要となる木材になる森もその中に配置しておいた方がいいだろう。その森の中には魔物は配置しないようにしなければならないが。
他の場所も色々と考えていく。最終的には、いつか人も各地で好きに村でも町でもいいから住処を造って欲しいものだと思う。それか各地に棲む魔物が進化するというのも面白そうだ。
そこまで考えたところで、れいは海の先を造ってもいいなと考える。ただし、こちらは一角に余裕が無くなってからでいいので、手をつけるにしても大分後の話になるだろうが。
色々と構想しながら、れいは空いている場所からサクサク再配置していく。動かした時に魔物や人が居ると驚かしてしまうだろうから、そこは後回しにしていく。
そうしていくと、全て配置し終える。掛かった時間は、ほとんど魔物や人の移動時間ぐらい。他はほぼ一瞬で終わった。
再配置を終えたところで、後は管理補佐達に任せる事にした。自然の配置については引き続きれいが行うが、他は全て代行を創造したので問題はない。
これでたまに見回りをするだけしかれいの仕事は無くなる。
もっとも、一角での仕事が無くなっても、れいの本当の仕事が無くなるわけではない。世界の維持というのが、れいが行う仕事で最も重要な仕事なのだから。