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ーーここは天界。大雑把に説明すると天使とか神が住む平和が1番! というような世界。

俺は今、天界の薄暗い森に身を潜めている。
なぜこの様な場所に身を潜めているかと言うと、俺は今から革命を起こすからだ。
とは言ってもフランス革命やらロシア革命みたいな大規模なものではなく、俺独断の革命。
名付けるならルシファー革命という名のゼウス暗殺だ。
この判断に至ったのは今日で実行するのも今日。
つまりスピード出世ならぬスピード革命である!

本当にもう。ゼウスにはうんざりだ。
毎日毎日毎日毎日×100……
俺をこき使いやがって……
こき使われるならまだ良い。だけどな、今日の昼にあった“あれ”だけは絶対に許せない。

ーーだから、ゼウスの時代を終わらせてやる。

この俺、天界最強の熾天使(セラフィム)ルシファーなら、ゼウスに勝てるかもしれない。
勝てなくても、致命傷くらいは負わせてやる!

俺は天使の象徴である大きな純白の翼を広げ、羽ばたかせてゼウスのいる城へと飛んで行った。







ここにゼウスがいるはずだ。
今は夜。
天界にも朝昼夜があるため、人間達と差して変わらない生活をしている。
そんな暗闇の中、目の前にあるのは人際目立つ純白で威圧的な高い城。ここにゼウスが暮らしている。
いつもなら警備が厚くてとてもじゃないけど、侵入は難しいが、今日はサボりの警備員多発なのか警備が薄い。
ストライキでも起こしてんのか? ざまぁみやがれ。

俺は特に深く考えずにバレないよに空を飛び、塀を超えて難なく城の中に侵入することが出来た。

だがーー。

「お、お前ら……っ!」

実際には罠だったみたいだ。

城の塀を超えた途端、多くの兵士に囲まれ逃げ道を失った。
どうやら、俺のゼウス暗殺計画バレていたらしく警備は薄いどころか分厚かった。
城の中に降り立ったタイミングを計って俺の周り数百の兵がを3重の半円を描いて囲んだ。

くそっ……どこで漏れたんだ? 今日決めて今日実行したのによ! 俺、無意識のうちに仕事中独り言で計画バラしてたのかな!? だ、大丈夫だ。落ち着けルシファー。なにも焦ることは無い。こんな雑魚共が束になって来たところで所詮雑魚。

ーーこの俺に勝てるわけがない。

「灰になってしまえ!!」

俺は両手から炎を出し、撒き散らす。
兵士達は為す術もなく次々と倒れて行った。そして、あっという間に3重の兵士の壁は破壊し、残り数人。
はっ。余裕だなぁ! これならここは突破出来そうだ!
ったく。無駄に時間使わせやがって、チクったのはどこのどいつだ……

「ーー兄さん、隙だらけですよ」
「は?」

聞き覚えのある声が背後からして、振り返った瞬間胸に何かが刺さった。
が、俺の瞬発力の速さでギリギリの所で体内に何重もの氷の盾を作りどうにか致命傷は逃れた。

あ、危ねぇ! 無言で攻撃されてたら確実に殺されてたわ!

声の主を見ると真っ白いフードを深く被り顔こそは見えなかったが、胸元にある大天使の紋章でかなりの強敵だとわかる。
それに、「兄さん」って言ったな。
まさか、俺を殺そうとしたのも、計画バラしたのも……
かなりの至近距離にいる相手は俺の胸元に刺さってる刃を抜き、鞘に納めた。
俺はすぐにそいつから離れ、傷口に触れると何事もなかったかのように傷口が塞いでいく。

「低脳なクセにスピードだけは速いですね。さっさと大人しく眠ればいいのに……」
「はっ! お前、正体隠してるつもりだろうけど、俺にはバレてるからな! この愚弟が!」
「ははっ。本当に、おつむの弱い方だ」
「んだと!? この腐れ外ど……」

ーードクンっ。

1回心臓が大きく鳴ったと思ったらだんだんと加速していく。
息を吸ってるのにだんだん上手く吸えなくなってくる。吸っても吸っても穴の空いたボールのように抜けていってしまう。
な、なんだよ……これ……
くそ……傷口塞いで、治癒したのに……

「やはり、貴方でも神が作った毒は効くんだね」
「ぐっ……はっ……てめぇ……」

立っていられず胸を抑え前に倒れた。
どうにか頭だけ上げそいつを睨んでいると、深く被っていたフードを取った。
稲のような綺麗な金髪をひとつに結い、空のような碧眼。
あの……やろっ……
薄れていく意識の中でもどうにか耐えていると頭に黒光りした銃口が当てられた。
カチャっと音がしていつでも撃てるような準備に入る。

「貴方の生命力には尊敬するよ。現世の生き物で例えるならゴキブリみたい」

それだけ言うと、無情にもそいつは引き金を引き、パァンっという破裂音と共に暗闇へと落ちていった。
痛みは何も感じない。ただどこかへ引きずり込まれるような感覚。

あー……このまま堕天使になっちゃうのかな……
愚弟のせいだ……愚弟ミカエルの……

……あれ? ミカエルってあんな顔だったっけ?

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