ダンジョン探索
洞穴に入ると、RPGさながらの音楽が流れてきた。独自にアレンジしたのだろうけど、どこかで聞いたようなリズムだった。
耳に届く音は、一時的な気休めにもってこいだった。ゲームの世界観に神経を尖らせていたら、メンタルをやられてしまいかねない。気分でプレイヤーは強くならないとわかっていても、少しだけ救われたように感じる。
洞穴は一直線だったので、ルートに従う。これで違っていたら、かなりの時間を浪費することになる。PRGでは思いもよらないところから、前進するためのルートを用意されていることも珍しくない。
ルートに沿って進んでいると、戦闘画面に切り替わることとなった。洞窟内においても、敵と戦うシステムのようだ。
「ピータンが3匹現れた」
「ピータン」1体に苦戦していたのに、3体も同時に現れるとは。80のHPがあるとはいえ、全滅させられるかわからない。
クスリは装備した武器、防具を信じて戦いを挑むことにした。4つのコマンドから「こうげき」を選択した。
「ピータン1」に20のダメージを与えるも、撃破するには至らなかった。ライフポイントは20を上回っているようだ。
ピータン1の攻撃。クスリは6のダメージを受けた。ピータン2、3と攻撃を受けライフポイントは合計で20減った。「てつのよろい」によってダメージは緩和されたといえ、無視できない数値だった。
クスリは引き続きピータン1を攻撃。ピータンに20のダメージを与える。さすがに倒れるかなと思っていたけど、しぶとく生き残っていた。ライフは40を超えていることがわかった。先ほどクリーンヒットしていなければ、2ターンであの世へお陀仏だったということになる。体内は大いに武者震いしていた。
ピータン*3の攻撃で、クスリは合計で19のダメージを受けた。「ピータン」を1体も撃破していない状態で、半分近くもライフポイントを持っていかれた。1対3では雑魚的であっても、部はかなり悪くなる。せめてもう一人くらいは仲間を欲しいところ。
「こうげき」の下にある、「ぼうぎょ」コマンドに目をやった。一人で戦闘するのに、どうして表示されるのかわからない。敵の攻撃力を半分にできたとしても、ダメージを受け続ければ、HPはいずれ0となり命は潰える。プレイヤーの選択ミスを誘うために、「ぼうぎょ」コマンドを作ったとしか思えない。
クスリは「ピータン1」を攻撃。3度目の攻撃でようやく敵を倒すことができた。最初の敵にもかかわらず、相当な強さを誇っている。
瀕死の状態になりながらも、「ピータン」3体を撃破することに成功した。18の経験値を得て、レベルアップした。
マップに戻ると、「やくそう」でライフポイントを回復。後々に取っておこうかなと思ったけど死んでしまっては元も子もない。HPを満タンの状態にもっていくことで、複数の敵に耐えられるシチュエーションを作り上げた。
レベルアップしたことにより、最大HPは92に上昇。耐久力は少しだけ上昇することとなった。
「こうげき」、「ぶつりぼうぎょ」、「すばやさ」、「まほうぼうぎょ」、「うん」については1ずつ上昇していた。レベルを上げるごとに、ステータスに変化をもたらすようだ。
「おなか」のステータスを確認した。洞窟に入るまでは98だったけど、90まで減少している。クスリの過去のデータから減少度などを導き出しているのかな。
睡眠は11時間後に必要となっていた。洞窟に入ってから、早くも1時間が経過したことになる。 ほとんど移動していないと思っていただけに、時の流れの速さにびっくりした。
ダンジョン内に寝るための場所はおそらく用意されていない。洞窟内で野宿することになりそうだ。敵にいつ襲われるのかわからないシチュエーションで、安眠できるのだろうか。
進行方向に移動していると、戦闘画面に切り替わった。
「ピータンが4体現れた」
3体できついのに、4体と戦わなければならないなんて。クスリは戦闘における死を覚悟した。
画面に「敵はプレイヤーに気づいていない」と表示された。「にげる」を選択すれば、敵から脱出できる確率は高い。
「にげる」を選択しようかなと思ったものの、4体の「ピータン」を撃破しようかなと思った。敵の攻撃は次ターンからなので、総ダメージ量を抑制できる。レベルアップによって「ぶつりぼうぎょ」も上昇しているため、被ダメージも抑えられる。
クスリは「こうげき」コマンドを選択した。「ピータン」にクリティカルヒットし、一撃で1体をやっつけることに成功した。
残りは3体となった。レベル1の状態であっても、全滅させられたのでおそらく大丈夫だ。
「ピータンはこちらの存在に気づいた」と表示された。発見しただけで、攻撃を仕掛けてくることはなかった。
クスリは「ピータン2」を攻撃した。
「ピータンに27のダメージを与えた」
先ほどよりも威力は格段に増している。この調子なら、「ピータン」を問題なく倒せそうだ。
クスリの計算は「ピータン」の3回連続のクリティカルヒットによって、覆されることとなった。3回連続でクリティカルヒットになるとは思ってもみなかった。
不運に見舞われたものの、HPは50くらい残されていた。レベル1の状態のときに、クリティカルヒットにならなかったことを前向きにとらえよう。あのときなら、HPの80パーセント近くを失っていてもおかしくない。最悪の場合、命を落としていた。
クスリは迷うことなく、「こうげき」を選択。「ピータン2」に命中し、あっさりと倒すことに成功。レベル1のときは苦戦したのに、レベル2となると簡単に倒せる。レベルによる戦闘力の違いをまざまざと見せつけられた。
ダメージを受けながらも、ようへい4体を倒すことに成功。24ポイントの経験点を得た。