バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

僕が次の言葉を(さが)している間に、
振動音(しんどうおん)徐々(じょじょ)にその距離(きょり)(ちぢ)めていた。

ブーンと言う機械的(きかいてき)規則的(きそくてき)低周波(ていしゅうは)()振動(しんどう)

胎内(たいない)から(ひび)いてくる(よう)なくぐもった音。

ペットロボの警戒(けいかい)する(よう)灼眼(しゃくがん)の瞳が、
否応(いやおう)にも未知の最悪をそうきさせ、
不穏(ふおん)な空気をいっそう緊迫(きんぱく)させていく。

(せま)低周音(ていしゅうおん)

その波がトイレの小窓を(ふる)わせ始めた。

同時に小窓から赤色の灯火(とうか)(あふ)れ出し、
ペルボの華奢(きゃしゃ)なボディーを鮮血(せんけつ)()()げていた。

緊迫(きんぱく)した時間。

業火(ごうか)に浮かぶシルエット。

ペルボの赤眼(せきがん)の瞳が煉獄(れんごく)業火(ごうか)()がされてなを、
意思(いし)(うしな)わない(よう)な強い光を(はな)っていた。

その異様(いよう)を前に固まる時間。

それは唐突(とうとつ)(やぶ)られた。

壁を透過(とうか)する様に突き抜けた光線が、
赤い刃物が個室の上半分を分断(ぶんだん)したのだ。

それはまるで突然(とつぜん)クリスマスのケーキに入った、
()()な刃物のように。

なんの前触(まえぶ)れもなく唐突(とうとつ)に切り()かれた天上が、
真っ赤な断面(だんめん)(さら)していた。

それが何なのか理解する()()く、
赤外線のような真っ赤な光のフィルターは、
頭頂部(とうちょうぶ)から足元に流れ降りた。

スキャンされている(よう)感覚(かんかく)(おぼ)える。

それが終わると唐突(とうとつ)に壁が(うず)()(よう)()け出し、
排水溝(はいすいこう)()まれる様に消えていった。

残された真円の穴が痛々(いたいた)しい傷痕(きずあと)(きざ)んでいる。

その先に(ただよ)陰影(いんえい)

満月(まんげつ)(かた)どられた(あや)しく()らめく輪光(りんこう)

異様(いよう)(ふく)らんだ方眼球(ほうがんきゅう)とでも
形容(けいよう)したらいいのだろうか。

それはコープ(自動追跡監視(じどうついせきかんし)システム)だった。


しおり