僕が次の言葉を探している間に、
振動音は徐々にその距離を縮めていた。
ブーンと言う機械的で規則的な低周波に似た振動。
胎内から響いてくる様なくぐもった音。
ペットロボの警戒する様な灼眼の瞳が、
否応にも未知の最悪をそうきさせ、
不穏な空気をいっそう緊迫させていく。
迫る低周音。
その波がトイレの小窓を震わせ始めた。
同時に小窓から赤色の灯火が溢れ出し、
ペルボの華奢なボディーを鮮血に染め上げていた。
緊迫した時間。
業火に浮かぶシルエット。
ペルボの赤眼の瞳が煉獄の業火に焦がされてなを、
意思を失わない様な強い光を放っていた。
その異様を前に固まる時間。
それは唐突に破られた。
壁を透過する様に突き抜けた光線が、
赤い刃物が個室の上半分を分断したのだ。
それはまるで突然クリスマスのケーキに入った、
真っ赤な刃物のように。
なんの前触れもなく唐突に切り裂かれた天上が、
真っ赤な断面を晒していた。
それが何なのか理解する間も無く、
赤外線のような真っ赤な光のフィルターは、
頭頂部から足元に流れ降りた。
スキャンされている様な感覚を覚える。
それが終わると唐突に壁が渦を巻く様に溶け出し、
排水溝に呑まれる様に消えていった。
残された真円の穴が痛々しい傷痕を刻んでいる。
その先に漂う陰影。
満月に型どられた怪しく揺らめく輪光。
異様に膨らんだ方眼球とでも
形容したらいいのだろうか。
それはコープ(自動追跡監視システム)だった。
しおり