偶発的とはいえない衝撃が全身を打つ。
その衝撃でよろける様に少女に覆い被さると、
トイレの中に倒れ込んでいた。
少女の顔を覆った金属製のフレームが、
自転する様に床を滑る。
びっくりした様に僕を見上げる幼女の顔が、
間近にあった。
震えた瞳。
それを覆う銀髪。
僕は慌てて空いた手を伸ばすと、
扉を閉め錠をかけていた。
その間も少女は微動だにせず
腕の合間で僕を静かに見上げていた。
顔を覆っていた金属製のバイザーは床に転がり、
少女の柔らかな輪郭があらわになっていた。
ぷくっと膨らんだ唇。
艶のある銀髪が頬に張り付き儚さを匂わせる。
胸の鼓動が脈動を速めていくのを感じた。
高鳴る動機が息苦しさを覚えさせる。
少女はそんな僕を不思議そうに見上げていた。
何か言わなければ警戒される。
そう焦るばかりで言葉はなかなか出てこなかでた。
そんな緊迫した空気を最初に破ったのは、
いつの間にか頭越しに鎮座したペットロボだった。
ロボは張りつめた空気を打ち消すように、
小動物を思わせる音声でピッピッピッピッと
鳴き始めていた。
少女はそんなお供を放心した様にしばし見つめ、
何かに気付いたように表情を変えた。
馬乗りになったままの僕の胸元を、
少女は両手で押し上げる。
ようやく自由になった少女は、
ヘルメットを拾い上げ頭に被せると、
相変わらずピッピッピッと鳴くお供に頷いていた。
そして不思議の国に迷い込んだように、
独り言を言い始めたのだった。
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