四章 かさ地蔵(二話)
アカネは言った。
「谷野はね・・・、一回この世界を救ったの。」
「・・・え!?」
「まあMr.キャットがびっくりするのは仕方無いけど、事実なの。」
Mr.キャットは驚きを隠せないが言った。
「まあとりあえず聞こう。」
「うん。」
アカネは頷いた。
約二年前
谷野は中学二年生だった。そんな谷野がこの世界に来た。どこから来たのかというと扉だ。異世界と現世界を繋ぐ不思議な扉だ。そこを何回も出入りしていた。入れたのは実はある日森の空き家で餓死寸前の魔族の男を助けた際に、
「魔族の皆を助けてください!」
そう言われたのが始まりだった。それまで天族と神軍人間の同盟軍に圧倒的劣勢にまで追い込まれていた。それは本当に残酷で、ある魔族は見せしめに町の中心で処刑。ある魔族は性欲の捨て場に。ある魔族は拷問で徐々に弱らせていって同盟軍に忠誠を迫るなど、もう終わっていた。
しかし、谷野が来てからは変わった。劣勢が徐々に戻り遂には攻められて奪われていた所を取り戻し、最初の状態に戻った。そこで同盟軍は驚く行動をした。和解である。すると、魔族側はこれに条件付きで了承した。条件は囚われた捕虜の解放だ。因みに魔族側も同盟軍の兵を捕虜として囚えていたが、衣食住は揃えていた。服はきちんと綺麗な物を揃え、食事はコックが作った美味しい物を食べさせ、住は一人一人個室できちんとプライバシーを守るという簡単に言えば至れり尽くせりだ。そんな中捕虜達にはある考えができた。
「自分達人間は見せしめに殺したり、徐々に弱らせてそれを楽しんだり、奴隷にしたりしていたのが馬鹿馬鹿しい。」
それからは捕虜達はせめてもの償いと思い、町で働き始めた。捕虜達は残る側と出る側に別れた。勿論出ると決意した捕虜は解放した。
しかし、同盟軍は違った。いつまで経っても捕虜を解放しないのだ。 しかも見せしめにわざわざ魔族達の目の前に来て捕虜の魔族を殺した。そして、また戦いが始まった。
そんな中谷野は世界を救った。
男は言った。
「正直ここまでしか書いてないんだよ。」
「・・・『 』様までわからないとはどういうことですか?」
男は少し笑みを見せて言った。
「谷野をこっち側に持ってくか。そうすればあいつの企みを何とか出来るだろう。」
異世界
「とういう所なの。」
アカネはそう言った。するとMr.キャットは、
「おい、なんでそんなことアカネが知ってるんだ。」
「それはヒミツね。」
そう少し魅惑びた声で言った。
「なんだよ。」
まあ『保留』だな、そうMr.キャットは思った。
一方、谷野とメタナセは。気まずそうにどちらも話しかけずに静かだった。実は谷野は少し偉そうな話し方していながら、人見知りだ。
(どうしよう。)
谷野は言った。
「あの、その探している仲間ってどんな人達ですか?」
「んー、一人は本当に存在感がなくていつの間にいなくなってる事が多いですね。あともう一人は少し話が苦手だけど頼れる人ですね・・・。」
メタナセは少し楽しそうにそう言った。
(頼れるか・・・。)
「二人の事が大切なんですね。」
「はい、大切な仲間です。」
メタナセはそう言うと、
「ヤノさんって旅人なんですか?」
谷野は言った。
「確かに旅人と言ったら旅人ですね。」
谷野がそう言うと、メタナセは少し不思議そうな顔をした。そうすると谷野は付け加えた。
「正直に言うと、目的のない旅人です。」
メタナセはそれを聞いてあることを思った。私達と同じだと。すると、メタナセは言った。
「ねえ、あなた行き場所ないのなら私達のギルドに入りませんか?」
谷野はびっくりした。しかし、本当に嬉しいかった。今まで仲間がいなくなって辛い思いをしていた谷野にとっては、とても嬉しい出来事だった。
「ありがとうございます!」
谷野は笑顔でそう言った。
「あの、ギルドに入ったので敬語やめよ!」
メタナセはそう言うと手を差し出した。
(ん?なんだ?)
「ハイタッチ!」
「おっ、おう。」
谷野は戸惑いつつもハイタッチをした。メタナセの笑顔、ハイタッチの音。その一つ一つが谷野に実感を与えてくれた。
(やっと俺の終着点に着いたか。いや、始まりか。)
アカネ、Mr.キャット側
「谷野嬉しそう!」
そう言ったアカネがの顔も笑顔だった。
「そうだな、ところで俺達隠れる必要あるか?」
そう言ったMr.キャットにアカネはどや顔をして言った。
「出るタイミングがあるの!」
「・・・うん。」
Mr.キャットは少し唖然した。
谷野、メタナセ側
「ねー、谷野って何処から来たの?」
メタナセの質問に谷野は、
「んー何処だろ?」
「いやいやあるでしょ。」
メタナセは手を横に振りながらそう言った。
「実は俺の中でも不思議なんだ。なんか死んだらしんだけど、覚えてないって言われて正直謎だ。」
メタナセは少しびっくりした顔をしながら、
「へー、なるほど。」
「まあ、そうなるよな。」
谷野は少し悲しそうな顔をしてそう言った。確かに分からない事は辛い事だ。
「それより、谷野!山頂までもう少しだよ!」
メタナセは山頂に向かって走り始めた。谷野もそのあとを追っていった。山頂に着いたメタナセは唖然とした。
「谷野・・・。」
あとを追っていた谷野も見た。
「えっ・・・。」
そこで見たのは燃える建物、黒くなった建物跡。
「なんでこんなことに・・・。」
そして、
「谷野!後ろ!」
アカネがそう叫んだ!谷野は後ろを振り向いたが、
(間に合わない!)
「カウント30、バースト!」
すると、周りの人達が動かなくなった。しかし、Mr.キャット以外に動ける人がいた。谷野である・・・。
続く