これがM探偵! これがジン子の艶技!
ぴちゃ……。
ほのかを抱きかかえるジン子の身体がビクッとした。
この部屋に誰か……いる……?
耳を澄ますとブーンというジン子のローターの音が響く。
ジン子は静かにローターのスイッチを切った。
ジン子のいる場所からはロッカールームの奥は見えない。そこに誰か隠れているのか。
あたりに静けさが戻った瞬間、ぴちゃ……とまた、音がした。
ジン子は気付かないふりをして、ほのかを気遣う言葉を投げ続ける事にした。
「ほのかさん! ほのかさん! もうすぐ警察が来るからね!」
言いながら意識は音の方に集中していた。
「ほのかさん、死んじゃダメだよ! まだもっとAV出るんでしょ? 返事して!」
ほのかはすでに息絶えている。そんなことはジン子も分かっていた。しかし、今ここにいるかも知れない第三者を逃す訳にはいかない。何とか冴渡が来るまで、時間を稼ぐんだ。
ブーン……。
再びローターのスイッチを入れたジン子は、おもむろに自分の胸に押し付けた。
「ほのかさん……ダメ……そんなところ……良かった……元気で……」
ジン子の艶やかな声がロッカールームに響く。
ぴちゃ……。
足音らしきその音は、先ほどより近づいてきたように聞こえた。
「あん……ほのかさんもどう?」
「すごい……さすがAV女優さん……えっち」
ほのかは、元々ファッションヘルスで働いており、そこのお客さんから聞いたDNNNの女優の待遇に惹かれ、AV女優への扉を叩いた。身バレを気にするような境遇でもなく、ほのかは15歳から天涯孤独の身であったのも決断を後押しした理由だった。だが、その短い生涯を閉じてしまった。
ジン子はほのかとは一瞬しか会っていないが、なぜか親近感が湧いていた。それは恐らくジン子も同じく天涯孤独の身だった事からなのかも知れない。
「わたしも……頑張ります……」
ジン子はほのかの身体を優しく床に寝かせ、自らの服を脱ぎ始めた。これからアダルトビデオの撮影を控えていた身体は奥の方で何かを求めていたのかもしれない。ジン子は、ローターを乳首にあてた。小刻みな振動を続けるローターを乳輪に沿って回す。そして乳首の先、乳頭にツンとあてる。すぐにぷっくりと突き立つ乳首。
「もっと……もっと感じるの……」
自分に言い聞かすジン子。もっと感じればM探偵の真の力が発動するはずだ。しかし、その気配はなかった。おかしい。こんなはずじゃない……。
ぴちゃ……。
ジン子は隠れている何者かに向け艶技を続けながら、うっすら音の方を確認した。すると、ひょこっとスマホのカメラ部分が覗いていることに気付いた。
しめた……。こちらを見ている。
いや、すでに撮影しているかもしれない。
どうするわたし。どうするM探偵。考えるの。考えるのよ!
M字……。
M字開脚よ。
Ⅿ字開脚でもっと気を引く。わたしなら出来る!
Mのパワーが出ない今、わたしに出来ることを全てするだけだ。
たとえ、そばにAV女優の死体があったって、これがM探偵だって思わせる!
そうだ。わたしはMだ。
見られてなんぼなの!
ジン子はジンジン感じながら、スマホに向け足を開脚していく。
がっつりM字に開脚されたその中心は、ちょうどベビーホタテを縦に見たときと似ていた。
何者か分からない者に、自分のすべてを見せつけるジン子。それが出来るのは、冴渡が来ると信じているからなのか。
ジン子は持っているローターを、乳首からベビーホタテにゆっくり移動させる。
「ああ……すごい……」
何も音などない。しかしジン子には、スマホを持っている何者かが興奮している様子が伝わってくる。
そう。その何者かを釘付けする事に成功した。
ジン子の熱い吐息が漏れる。
自然とロッカールームの室温が1度上がった。
その時、すぐそばの扉が開いた。
「M探偵!」
途端、冴渡たちは、その異様な光景に目を奪われた。
ジン子は全裸でピンクローターと戯れ、傍らにびしょ濡れの女性が寝ている。
奥からガシャンと窓が割れる音がした! スマホを持っていた何者かが窓から逃げたようだ。
「奥に誰か居ます!捕まえて!」
ジン子が絶叫する。
「追え! 追うんだ!」
冴渡が絶叫し、数名の刑事が奥に走り出す。
「大丈夫か!? M探偵!」
「冴渡さん! ほのかさんが! ほのかさんが!」
冴渡はほのかの死体を確認する。周囲は水浸しで、ほのかの頭と胸に物凄い衝撃があったような痣がついている。
「また……カエデさんと同じだ……くそっ!」
「わたし……」
ジン子は冴渡に抱き着いていく。
「おれには妻子がいるんだ!」
抱き着こうとしたジン子を突き飛ばす冴渡。
全裸のまま床に転がるジン子だったが、そのドSぶりに心奪われ逆に興奮した。
「よく頑張った。あとはおれに任せろ」
「冴渡さん……」
ジン子は冴渡を見つめる。
冴渡は勢いよく走り出し、ここにいた何者かを追うため窓を飛び越えた。
ここが5階だと忘れて。