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遠隔探偵バイブ! 急げ冴渡!

 ジン子がピンクローターのスイッチを入れた瞬間、はるか30キロ以上離れた警視庁捜査一課の冴渡のデスクの上にあった親機の巨根バイブが激しく亀頭を回転させた。
 全体的に肌色で作られたその巨根バイブは、雁(カリ)より下の竿部分にはわずかなツブ状の突起が無数にあり、根元には睾丸(こうがん)を収納する陰嚢(いんのう)が、だらんと垂れ下がるようなデザインでリアルに表現されていた。
 なにより亀頭の直径はゆうに5センチを超えており、雁(カリ)の高さ、いわゆる竿から亀頭に至る高低差は2センチ以上あった。冴渡のこだわり抜いた設計であった。竿にまとう蛇のような血管の筋一本に至るまで冴渡の願望が込められており、匠の技が見事にそれを再現していた。
 そのバイブが今、うねりを見せている。
「ジン子……!」
 亀頭の回転によりバイブは机の上を死にかけの芋虫のように右往左往し、やがて竿の部分がローリングし出した。
 冴渡の顔つきが一瞬で緊張する。
「何っ……! 第2段階に入った!」
 
 昨日の夜、冴渡はジン子にアクメ自転車とともにこの遠隔探偵バイブを渡していた。
「緊急の時、これを振動させろ。探偵バッジみたいなもんだ」
 ジン子が受け取ったそのピンクローターはいつもより小振りであった。
「探偵バッジ?」
 冴渡は親機である巨根バイブを見せつけて真顔で答える。
「そうだ。もし何か危険なことに巻き込まれたらそのスイッチを入れろ。俺が持つ親機が雄たけびを上げるようになっている」
「どこにいても?」
「日本全国、北海道にいても分かるようになってる。安心してAV女優になれ」
 どこにいても……。繋がっている……。冴渡さんと私が繋がっている……。
 そう思うだけでジン子の奥がジンジンした。
「冴渡さん……」
 冴渡はジン子に背を向け小さな声で言う。
「嫁には別居を申し入れた……」
「え?」
 ジン子の耳にはそのセリフは届いていなったようだ。冴渡は、今すぐ言う事でもないと思い、
「いや。なんでもない。事件解決に集中しよう」
「はい」
 笑顔を見せる冴渡だった。
「まず、緊急ではないが何か知らせがあるときはこの『1』のボタンだ」
「はい」
 ジン子が1のボタンを押すと、親機の亀頭の部分が卑猥にうねり出す。
「やだ……」
 ジンっと来て目をそらすジン子。
「よく見ろ! これが『1』の動きだ!」
 冴渡はジン子の眼前にその卑猥な動きを見せつける。
「……冴渡さん……はい……」
 ジン子は以前、冴渡のイチモツを見た事があった。それは、いわゆる短小包茎と言われるペンシル型ペニスの典型であった。
 冴渡さんがもしこんな重厚なペニスを兼ね備えていたら私どうなるか分からない……。素直に思ってしまうジン子であった。
 冴渡はジン子のそんな思いも気にせず解説を続ける。
「で、何か身の危険を感じた時、もしくは今すぐ羞恥されたいぐらい緊急で俺に会いたい場合は『2』のボタンを押すんだ」
 ジン子が『2』のボタンを押すと、バイブの竿の部分が回転し出す。
「すごい……」
 ジン子は思わず口走ってしまう。それほどうっとりする動きだった。
 人では成しえないその動きは、女性の膣内部に滞在して膣内全ての皮膚に摩擦し感じたことの無い感覚を味わえそうだった。
 これを入れてみたい……今すぐに……そんな衝動を抑えるジン子。
「そして次が最終段階だ」
 冴渡がジン子の持つ子機のローターの『3』のボタンを見る。
「これは?」
「いや、これは押さなくてもいい……」
「そうなんですか?」
「ああ。これについては押す必要はないだろう。さぁもう時間だ」
「あの……冴渡さん……わたし……」
「怖いか?」
 ジン子は迷った。その答えを言ってしまうと今回の事件から降ろされるかも知れない。
 冴渡はジン子の耳元に口を近づけた。
「大勢の前で抱かれて来い」
 どこまでもSを発揮し、ジン子を濡らす刑事だった。
「わかりました」

 警視庁捜査一課のデスクの上で、第2段階に入ったうねるバイブを見つめる冴渡。
 周囲に捜査一課の刑事が集まり、バイブの動きを固唾をのんで見守っている。
「冴渡、これは?」
 捜査一課長の藤堂が冴渡に尋ねた。
「課長、AV女優に派遣したM探偵からの緊急メッセージです。すぐにDNNNのスタジオに行かせてください! 何か危険なことが起こっているのかも知れません!」
「よし、分かった! 全員、冴渡に続け!」
「ちょっと待って!」
 昨年の春から捜査一課に加わった唯一の女性刑事である島川明菜が声を上げた。
「動きが変です!」
 机の上のバイブが『ビクンッ! ビクンッ!』と2回動いた。
「ま、まさかぁ!」
 冴渡が動揺した声を上げる。
「どうしたぁ冴渡!」
 陰嚢に収納された睾丸が徐々に根元に上がっていく。そのリアルな動きに一同声をなくす。
 天を仰ぎ、頭をかきむしる冴渡。
「第3段階だ……」
「なんなんだこれは!?」
 藤堂が冴渡の身体を揺さぶり答えを求める。
 その瞬間、竿の部分がグッ!と1.5倍ほど膨れ上がる。
 バイブを見つめていた明菜から思わず声が漏れる。
「すごい……」
 想像通りの展開だ。バイブの亀頭の先から真っ白い液体が勢いよく四方八方に飛び出す。
 ある程度固形的な要素を残している液体であり、それもリアルとしか言いようがない。四方八方に飛ぶのは、冴渡のアイディアだった。膣内での直線的な発射より、より広範囲に『自分』を感じてほしい。
 まぁ。『自分』ではないのだが……。そんな思いが込められていた。
 そう。冴渡はこのバイブをいつかジン子に使うつもりだったのだ。だから、『3』のスイッチについては説明しなくても良かったのだ。
 飛び散った疑似精子は、明菜の手にも付いていた。
「ティッシュ……」
 怒りを滲ませた明菜の言葉が切なく響いた。

 少し時間を無駄にした感をぬぐえない藤堂だったが、全員をジン子の元に向かわせる事にした。

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