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夢のオナ2!「ヌック4545」!

 開発コード『4545』(シコシコ)。その新製品は、いよいよ現実味をおびて亀吉の目の前に存在していた。
 感慨深そうに亀吉はテレビのスイッチを入れ、動画を再生し始めた。
 画面には、AV女優カエデさんの顔が映る。
 
 亀吉には大きな夢があった。
 手を使わずにオナ2が出来ればどんなにすごいだろうか?
 ほとんど無人風俗と言えるのではないか?
 近未来のオナ2としては申し分ない。
 画面を見ながら、右手にリモコン、左手にテッシュを持ったまま、画面からAV女優の手が出てきてペニスを握ってくれる。強弱のスピードはリモコンの早送りボタンと巻き戻しボタンで調整可能だ。
 この技術が成功すれば、さらにエロ業界は進化する。亀吉は確信していた。
 ちょうど半年前から研究開発部を自ら発足しその費用を惜しみもなく使い、とうとう100億円を突破した今、とうとう夢のオナ2がすぐそばまで来ていた。

 今、亀吉の見ている画面の中からカエデさんの手が現実に出てきた……。
 最先端の技術は対象者のペニスの位置や硬さ直径など全てを瞬時に把握し、まるでそれを求めているかのように優しく握る。
「うふふ……もうこんなになって……」
 カエデさんの声が画面から聞こえてくる。
 その瞬間、目を閉じる亀吉。
「カエデさん……」

 動画再生ソフト『ヌック4545(シコシコ)』。開発コードネームの4545(シコシコ)をそのまま製品名につけた。

 当然、社長の涌嶋たちもその製品については知ってはいたが、あくまでこれは亀吉のみが推し進めていた製品でありその動向は社内でも開発にかかわる数名しか知らなかった……。


 ジン子がメイクルームで待っていると、ノックもなしに扉が開きDNNN所属のAV女優ほのかが入ってきた。
「もう帰ったら? ここでAVなんて作らないわよ」
「え?」
「あなた、会長に気に入られて入ったんでしょ?」
 ほのかはニヤニヤしながら部屋に入ってジン子の前に立つ。
 ジン子が返答に困っていると、
「ああ可哀そう。もうあの会長……っていうか、この会社はもう終わりよ」
「え? どういうことですか?」
「理由1。カエデさんが殺されて、亀吉会長はもぬけの殻になっちゃったから。理由2。社長がこっそり新しい会社作ってそっちにみんな誘われてる」
「え? こっそり会社?」
「そうよ。噂じゃもうここではAV作れないようにしてあるって涌嶋社長が豪語してるらしいわよ」
「そんな……」
「みんな社長の会社に移籍し終わったところなの。で、もうあなただけよ。ここの所属女優は」
「会長はどこにいるんですか?」
「知らなーい。わたし、忘れ物取りに来ただけだから……」
 ジン子を通り過ぎ、ほのかは奥のロッカールームに歩いていく。
 ジン子は会長に直接話をするべきだと考え、メイクルームを出てキョロキョロしていた。
 亀吉は先ほどまでここにいた。まだ遠くには行っていないはずだった。
 
「ドンッ!」

 ロッカールームの方から大きな衝撃音が聞こえてきた。
 その大きな衝撃音に驚いたジン子は、すぐに何か起こったと察し走り出した。
 ほのかの身に何かあったのか?
 つい今しがたまで居たメイクルームを抜け、ロッカールームに入ったジン子はそこで倒れているほのかを発見した。
「大丈夫ですか!」
 ジン子はほのかを抱きかかえ声を掛けるが、ほのかはぐったりして息をしていない。
「しっかりしてください!」
 ぐったりしているほのかの身体は、びっくりするほどびしょ濡れになっており、ジン子の周囲の床や壁にも濡れた跡がある。ロッカーにはもの凄い衝撃を受けた跡がある。
 周囲を確認するもそれ以外は特に何もなかった。
 ジン子はすぐに冴渡に連絡するため、連絡用に渡されたピンクローター型の無線機を出した。

 ブーン……。

 こっちは普通のピンクローターだ!
 すぐにもう一つのピンクローターを出しスイッチを押した!

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