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二章 異世界の中の甘味と苦味(三話)

ナコに着いて行った谷野とアカネは大きな館を見て怖じ気ついたが、ナコが門を開けて手招きした。二人は恐る恐る入って行ったが予想通り下はタイルと絨毯、上はシャンデリアと、とても豪華な造りと装飾がしてあった。玄関は靴を置くスペースがあったのでそこに靴を置いて上がろうとしたが、執事が止めたので任せた。上がりには履き物が置いてあったので二人はそれを履かせてもらった。しかし、しっかりとしているなと谷野は思いつつ玄関を歩き、リビングに来た。ナコは二人が来たのを確認すると、
「とりあえずここにいて、準備が終わったら呼ぶから。」
ナコそう言うと執事と共に奥に行った。俺とアカネはこれも豪華な椅子に座るとアカネが小声で言った。
「本当に着いて行って大丈夫だったの?」
それに対して谷野は小声で返した。
「まあ大丈夫でしょ。」
そう言ったが実は谷野は結構警戒していた。ただ、泊めてもらう事に越したことはないので着いていったのだ。そう考えていると執事が来て、
「谷野様、アカネ様、御部屋の準備が完了しました。」
と言ってきた。部屋は勿論別だったので別れて部屋に入った。谷野は部屋に入ると部屋中を探り始めた。30分探ったが怪しい物はなかったのでやっと部屋のベッドに座って、そのまま寝っ転がった。疲れた、そんな考えが真っ先に浮かんだ。谷野は今まで何があったか思い返していた。今までわかった事は、ここが異世界である事。アカネが異世界の人間である事・・・。アカネは異世界の人間の筈だろ。それにしては他の人達とは違う雰囲気がするんだ?何故だ?すると、ドアノブを捻る音がした。
「谷野様、ナコお嬢様からお話があるので来てください。」
谷野はビックリして起き上がった。執事が訪ねて来たのか。そう確認すると部屋を出て執事に着いて行き、一際大きな両開きのドアがある部屋に案内された。谷野が圧倒されて立ち止まっていると、執事はドアを開けた。そして部屋に入るとナコがいた。
「執事、席を外しなさい。」
ナコがそう言うと執事がお辞儀をしてドアを閉めた。
するとナコは谷野に席に座るよう勧めた。谷野が座るとナコが言った。
「谷野さん、あなた異世界の転生者でしょ?」
「えっ!?なんで・・・。」
谷野はビックリしてつい声が出た。
「やっぱり合ってたのね。」
唖然とした顔をする谷野にナコは付け足した。
「まあビックリするわよね。だけど、心配する必要はないわ。私は谷野さんの味方よ。」
もしかして俺の事を知っているかもしれないと思った谷野はナコに質問した。
「ナコ、俺は何故この世界に来たんだ?」
ナコは悩んだ様子で答えた。
「んー考えられるのは二つあるかな?」
一つ目、『異世界の門』から来た。
二つ目、『三次元(地球等)』で死んでしまった。
「という感じだが、谷野さんの場合特殊かな?」
そう言ったナコに谷野は返した。
「なんで俺が特殊なのか?もしかして何も覚えて無いからか?」
「谷野さんビンゴ、鋭いねー。」
ナコはそう言って谷野を指さした。その後手を下ろして更に言った。
「あとパラメーター情報送ってー、振り分けポイントを振り分けているか確認がしたいの。」
しかし、送れって言われても・・・。
「送り方が分からないけど言おう。」
「ほうそれほど自信があると。」
ナコにそう言われたが正直に自信がない谷野は少し考えて言った。
『体力10、他1だーー。」
そう言うと、
「えっ・・・。」
流石のお嬢様も固まってしまった。しかし、すぐに言い始めた。
「フーアッハッハ、なーに冗談言ってるの、ね!」
「いや、冗談と言われても事実なので。」
谷野がそう言うとナコは立ち上がって、
「・・・。は?」
と言って頭を抱えながら部屋を歩き始めた。
「(いや、何でそうなったの!)(んー何でだ?)」
ナコの独り言が聞こえている。谷野はゆっくり立ち上がると言った。
「ナコさんパニックになっても何も変わらないので一回落ち着きましょう。」
そう言うとナコの歩きが止まり、一つ咳払いをすると言った。
「・・・すみません取り乱してしまいました!まあ座ってください。」
再び座るとナコが言ってきた。
「谷野さんあなた他の転生者とは違いますね。」
そう言うとナコの表情が一変、無表情になった。
「だからあなたの転生したした理由いわゆる現実を教えましょう。」
甘い一時の苦味は重い一時だった。

続く









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