かつてネトゲで女キャラを使っていた事を理由にネカマ野郎と糾弾された少年は、女性と思えばあの手この手で擦り寄ってくる下半身に忠実な直結厨達へ天罰を下すことを誓った。
単純な誹謗中傷では意味がない。まして現実世界で危害を加えるなど以ての外。
謂れのないネカマとして糾弾されたのであれば、完璧なネカマとして報復するのみ。
完璧な女性を演じる為に並々ならぬ努力を重ねた少年は、いつしかプロネカマを自称するに至り、同時期にリリースされた国産VRMMORPG『World's End Online』を報復の舞台と定める。
ネカマであるが故に男心を知り尽くしている少年のキャラクターは理想の女性を作り出す。
いつも笑顔を絶やさず、何を言っても怒ったりせず、頼めば二つ返事で了承し、二人きりになるとほんの少し甘えてくる。
鍛え上げられた演技によって攻略された直結厨の数は知れず。
しかし、少年は彼らから崇め奉られる為にネカマを演じていた訳ではない。
これまでの行いはただの準備に過ぎず、果てしない数の信者を得られたと確信したところでいよいよかねてよりの計画が実行された。
彼の目的はただ一つ。あらゆる直結厨に制裁を。
釣り上げた男共に自分がネカマである事を告げて嘲笑い、貢がれたアイテムを聴衆にばら撒きつつ、囁かれた愛の告白の数々を暴露する。
二人きりと言う閉鎖空間で口走った歯の浮くような、或いはくさすぎる台詞の数々はキャラクター名と共にネットの海を漂い続ける。
中にはブログやSNSで自分のキャラクター名を公開している人もいるだろう。
現実の知り合いにこれらの痴態の数々がばれれば、きっと彼らはこう蔑まれるだろう。
『ネカマになんて騙されてばっかじゃないのwww」
それこそが少年の報復の全てだった。
かつて自分が糾弾されたのと同じように直結厨達を糾弾させる。
計画は順調だった。
自分がネカマだとばらし、彼らの恥ずかしい過去を暴露しようとした瞬間。
ゲームだったはずの世界にみんな纏めて集団転移する、その時までは。
ネカマとして使っていた可愛らしい本物の少女になってしまった少年の周りには騙され怒り心頭の直結厨。
システムに保護されない本物の世界で、元の世界に帰るためのサバイバルが幕を開ける。
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