「お前まじでシナジー薄すぎて使えねぇわ。パーティー向かねえからソロでやってろ」
この御伽世界でソロが意味することは『底辺』である。高難易度のダンジョンは原則ソロ攻略が禁止されている。
そして雅日が信念をもって生業としてきた《弔者》の仕事も、前衛と術士の最低二人パーティーで挑むのが必須とされ高難易度の依頼を受けることができなかった。
「俺が強いことで救われる人がいるなら」
クラス『侍』の雅日は弔者の仕事を諦めずに鍛錬をし、術士としての能力を手に入れるために霊獣『燕龍』を身に宿すことを決断した。
霊と一緒に流れ込んできた記憶と人格は『前世』の雅日のもので、全てを想い出す。
前世の剣道部で同じ様に虐げられ、みずから命を断ったこと。その時の悲しみが弔者としての動機になっていること。そしてこの御伽世界がかつてプレイしていたVRMMOとそっくりであること。
前世の記憶にあるゲームキャラクターとしての雅日は、まさに彼の理想だった。
『君のキャラを育てたのはボクだ。ボクが君をもう一度最強にする』
前世のボクと協力して三年の月日がたち……
十八歳になった雅日は、クラス侍、サブクラスに幻術士を獲得し実力者揃いの鬼の国へ住み着いてた。
弔者ギルドの支部に所属してSランクパーティー募集に参加する様になっていたが、彼にかけられる言葉は依然として心無いものだった。
「お前だけヘイト高くて連携崩れるんだよ。ソロでやってろ」
それでも彼の献身は一部で評価され、時に弔者ギルドの教官として初心者の立ち回り指導を依頼されるが、高レベルパーティーの多くは聞く耳を持たずに、全滅被害の収拾に雅日が駆りだされる日々。
教官としての彼の正しさと圧倒的な戦闘スタイルに嫉妬するものは多く、彼は自分の居場所を見失っていく。
ある日の弔者ギルド主催の研修会で、彼の前に現れた聖女の月乃は『もっとレベルを上げなきゃ行けないの』と何やら訳ありな様子で……
危なっかしい月乃を放っておけない雅日は手を差し伸べ、二人の物語が交わり始める。
聖女・月乃のやわらかな価値観とペースに巻き込まれて行くほのぼのレベリングの旅の中で、雅日は少しずつ『温かい居場所』を築きあげていく。
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