No.18 僕の姉さん
2日後。
アメリアは11年間過ごした王城を早朝に離れ、馬車でホワード家に向かっていた。
姉ちゃんたち、だいぶ寂しそうだったな。
遠くに実家である王城が見えると、出発する前のことを思い出した。
うちが出発する際姉たちは悲しそうに、というか何人かは泣いていた。
「アメリア、行っちゃうの……」
特に長女アナ姉は。
「アナ姉。そんな泣かなくとも」
「泣くわよ。離れるんだから」
「1日で行ける距離だけど」
「それでもっ……」
アナ姉はまた泣き始めた。
つられて、
泣いていないものもいたのだが。
「ヒラリーたちは泣かないのね……アメリアが離れるのは寂しくないの??」
ヒラリー、メルン、ミーシャ、
笑顔を向けるだけ。
「え、だって、スカイぺでビデオ通話だっけ??」
「そう」
「そのビデオ通話で顔はいつでも見れるし」
「えっ」
そう。
うちはヒラリー姉たちにビデオ通話という概念を教えていた。
以前はそもそもビデオ通話という概念がなく、電話のみであった。
現在はうちがビデオ通話可能な魔法道具を作り、試作品としてヒラリー姉たちの間で使用していた。
「なにそれ。私知らないんだけど」
「アメリアの開発品です。まだ、試作品ですけど…」
「「「「はぁっ!?」」」」
うちがビデオ通話となるものを作っていたことを知らないアナ姉たちは非常に驚いていた。
てっきり知っているもんかと思ってた。
「ま、ていうことで、行ってらっしゃい」
常識人ミーシャは優しい笑みでこちらに手を振る。
「……もうそろそろしないと……」
「ああ、そうだね。メルン姉。さぁ、行っておいで」
「ああ、ありがとう。ヒラリー姉」
アメリアは馬車に乗り込んだ。
すると、アナ姉たちが叫んでいた。
「絶対に帰ってくるのよ~」
「寂しくなったら、いつでも兄さんが待ってるから」
「苦しくなったら、戻っておいで」
「お土産よろしく~」
最後のいかにも空気を読んでない言葉がとても気になったけど、姉たちに手を振った。
「じゃあね。ありがと」
「「「「アメリア~」」」」
と、熱い送迎をしてくれた。
まぁ、頑張ってくるから。
うちは心の中で宣言すると、「よしっ」と声をだし気合を入れ直した。
★★★★★★★★★★
「姉さんですか……??」
少年は義母から教えてもらったが、突然すぎて困惑していた。
「ええ、そう。今日来るのよ。庶民の出だから優しくしてね」
「はい!!」
少年はとりあえず元気よく返事をしておく。
今更、養子を迎えるなんて、どういうつもりなんだろう??
しかも、僕より年上の庶民。
少年は満面の笑みの裏で少しイラついていた。
この家の子どもは僕1人でいいのに。