ルアのなが~~~~~~~~~~~い友達と…… 3話あいてその3
スアのお母さんが健在なのがわかったとはいえ、まさかあの魔女魔法出版の社長をしていたとは夢にも思わなかった、ど~も僕です。
ただ、スア的にもずっとギクシャクしていた親子関係がよくなったおかげでか、すごく機嫌がよくなっています。
どれぐらいかといいますと、昨夜の回数がいつもの……
「……旦那様……それ以上は、だめ、よ」
慌てて駆け寄って来たスアに口を押さえられたため、この内容は黙秘させていただきます、はい……
さて、スアのお母さんが慌ただしく会社に戻った翌日、今度はルア家の方が大賑わいのご様子でした。
朝からネリメリアさんがビニーちゃんを背負い紐でフロント抱っこしながら店の前の掃き掃除をなさっていたようなんですけど、
「まぁまぁ、精がでますねぇ」
と、近所に住んでいるおばさま方が歩み寄られてですね、
「ウチのルアがお世話になってますね」
「あらあら、ルア様のお母さまですの」
「いえいえ、こちらこそいつもルアちゃんにはお世話になっているんですよ」
と、まぁ、井戸端会議が始まっていきまして、朝からコンビニおもてなしとルア工房の間が見る間にすごく賑やかになっていったんですけど、よくみたらいつの間にかその井戸端会議の輪の中に、ウチのバイトの魔王ビナスさんが違和感なく溶け込んでいてですね
「あらあらまぁまぁ」
みたいな感じで笑顔で会話してたりして……
で、やっとこさ出勤してくれた魔王ビナスさんを加えて、
パン作成のテンテンコウ♂
スイーツ作成のヤルメキス
弁当・惣菜・ホットデリカ作成の僕に、魔王ビナスさんが加わって、いつものコンビニおもてなし、朝の大調理作業が始まりました。
ちなみに、ルービアスもいるのですが、彼女はもっぱら弁当の容器並べや、一杯になったゴミ箱の片付けなどといった雑務をこなしてくれています。
で、いつもの勢いでその作業を続けていると、
「タクラ、すまん! 助けてくれぇ」
と、厨房にルアが駆け込んできました。
「ど、どうしたルア? 朝っぱらから」
「そ、それが……母ちゃんが今朝仲良くなった近所のおばさん達を、いきなり朝ご飯に招待するとか言い出したもんだから、食材が全然たりなくて……」
「……あぁ、あの集団……」
……確かあの集団って10人近くいたよなぁ……なんて思い出していました。
とはいえ、他ならぬルアの頼みですので、僕は
「ビナスさん、ここの作業少し任せますね」
「はいはいお任せくださいませ」
魔王ビナスさんの返事を確認した僕はルアを連れて地下の食材保管庫へと移動していきました。
ここは、元はただの倉庫でして、中にでっかい業務用の冷蔵庫と冷凍庫が並んでいて、あとは在庫を置くための棚が並んでいるだけだったんですが、今は、スアの使い魔の森に住んでいる冷系魔獣達が交代で部屋に来てくれているおかげで、部屋全体が冷蔵室状態になっているんですよね。
ちなみに、今日は雪巨人のシアンガンタが来てくれていました。
「シアガンタ、今日はよろしくな」
僕が元気に挨拶すると、シアガンタはニッコリ笑って手を振ってくれました。
このシアガンタ、パラナミオの事をえらく気に入ってくれてて、たまに遊んでくれたりしているいい奴なんですよね、たまに『パラナミオ成分が足りない……』なんてボソッと呟いていたりしてるんですよね。
で、その冷蔵室にルアと入った僕は、棚にわんさと並んでいる
テトテ集落から仕入れた野菜や
ティーケー海岸のアルリズドグ商会から仕入れた魚介類や
イエロとセーテンが狩ってきた魔獣のお肉
それらを指さしまして
「こっから好きなだけもってっていいよ。いつもお世話になってるんだし、これくらいたやすいもんさ」
そう僕が言うと、ルアは
「ホント助かるわぁ、タクラってばこれだから好きだ」
そう言いながら、笑顔で僕に抱きついて来ました。
ぽよん
とまぁ、スアではありえない胸の膨らみが惜しげも無く僕の顔におしつけられ……
「リョーイチ?」
そんな僕の背後に、いつの間にかスアが立っていました。
いつもならまだ爆睡中のスアですが、寝間着姿のまま、目を異常なまでに見開いています。
正直、相当な殺気が……
で、それを察したルアは、慌てて僕から離れると
「じ、じゃあ、お言葉に甘えて食材もらっていくな。あ、あのビナスさんにも後でのぞくように伝えてくれよな」
そう言いながら冷蔵室の奥の方へと消えていきました。
えぇ……あえてスアの死角になる方へ移動していきやがりました、こんちくしょう。
で、僕です。
スアは、残された僕の手をむんずと掴みました。
で、僕は
「すいません、少し気持ちいいとおもってしまいましたけど、僕はスアのストーンな胸を一番愛しています」
そう言いながらスアをギュッと抱きしめました。
スアのフルフラットな前面を、自分の体全体で受け止めています。
この言葉に嘘偽りはまったくありません。
最近の僕は、スアのこの体を抱きしめるのが本当に好きなもんですから……
元いた世界では、それなりにボンキュボンなお姉さんが好みだったはずなんですけど、人間変われば変わるもんです、はい。
で、スアです。
スアは、そんな僕に抱きしめられながら、顔を真っ赤にしていました。
「……ありがと、旦那様」
恥ずかしそうにそう言いながら、スアは自分から僕に口づけてくれました。
そんな夫婦の愛情確認作業をしている間に、ルアが山のように食材を抱えて、こそこそと冷蔵室を出て行きましたけど、スアもすでに満足しているようで追撃はありませんでした、はい。
そんな一悶着もありながら、スアは巨木の家のベッドに戻って寝直しです。
僕は、厨房に戻って作業再開です。
……が
「あ、店長さん、ちょうど終わったところですわ」
と、魔王ビナスさんが、笑顔で割烹着を外しているところでした……
最近思うんですけど、魔王ビナスさん1人で十分弁当作成作業出来ちゃうんじゃないかなって……
「いえいえ、店長さんあってのコンビニおもてなしですわ」
僕がそんな事を考えていると、魔王ビナスさんは口元に手を添えながらホホホと上品に微笑みました。
で、出来上がった弁当の山は、すでにルービアスがですね
コンビニおもてなし2号店
コンビニおもてなし3号店
コンビニおもてなし4号店
コンビニおもてなし商会ティーケー海岸店
コンビニおもてなし商会テトテ集落店
それぞれの店用に準備してある魔法袋に、手慣れた様子で詰め込み続けてくれています。
もちろん、本店用の弁当も店の棚に並べてくれています。
ウルムナギ又のルービアスですけど、出来ることをコツコツがんばってくれているんですよね。
ちなみに、他のウルムナギ又の皆さんも、そろそろ人型になれそうな雰囲気らしく、作業員が増えるのも時間の問題みたいです、はい。
◇◇
みんなでの朝ご飯を終え……いつもは一緒に朝ご飯を食べる魔王ビナスさんは、今日はルア家にお呼ばれしていったんですけどね、で、僕らはいつものように開店準備を始めます。
制服を着て掃除をしていると、学校へ行く準備を整えたパラナミオが駆け寄って来ました。
「パパ、ご苦労様です。パラナミオ、学校に行って来ます!」
そう言うと、パラナミオは僕にギュッと抱きつきまして、
「ん~」
と言いながら、目を閉じて唇を突き出しています。
……どうやら、パラナミオの中でマイブームになってしまったようですね、これ。
まぁ、リョーイチ的にはオールオッケーとばかりにYO! SAYと歌って踊り出しちゃいそうな気持ちを抑えてですね、今日も僕は右のほっぺをパラナミオの口に押し当てました。
で、パラナミオです。
今日も不服そうな顔をしていますが、
「でも、ちゃんとキッスしてくれたから嬉しいです!」
そう思い直して笑顔を浮かべると
「パパ、行ってきます! パパ大好きです」
そう言いながら、学校に向かって駆けていきました。
……なんでしょう。
パラナミオ、マジ天使です……
そんなパラナミオが駆けていった横、ルア工房の中では、今もネリメリアさん主催の朝食会が続いているようです。
窓から見える感じだと、ルアとオデン六世さんがネリメリアさんの横に座らされてですね、集まっている近所のおばさま方に囲まれながら根掘り葉掘りあれこれ聞き出されている感じですね。
ルアの笑顔が強ばりまくってます、はい。
とはいえ、ルアも久々にお母さんにあえて嬉しそうです。
そんなネリメリアさんはこの日の昼に、ラテスさんと一緒に帰っていきました。
「たまにはオトの街にも帰っておいでよ、みんなでね」
「あぁ、わかったって」
そう言いながら、ハグをかわすルアとネリメリアさん。
なんか、良い光景です。
ルアとオデン六世さんは、ネリメリアさんとラテスさんを城門まで送っていきました。
僕は、そんなみんなを見送ると店に戻りました。
すでに開店している店には、かなりのお客さんが入っています。
さぁ、今日も頑張るぞ!