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おでんにまつわるエトセトラ その2

 先日開発したばかりの練り物の人気がすごいです。
 特に、ちくわです。
 串に刺して焼いた物を、その串ごと販売している物が飛ぶように売れていきます。
「これ、酒に合うでゴザル」
 と、イエロが言うように、夜営業しているおもてなし酒場で一番売れている商品になっています。
 このちくわって、串の周囲に練り物を巻き付けておいて、あとは焼くだけ状態にしておけばいいので、作り置きも簡単ですし、イエロやセーテンが酒盛りの合間に焼くのにも適しているわけです。

 加えて、ちくわパンの売り上げもすごいんです。
 ちくわの中にマヨネーズを詰めたたのがよかったらしく、
「この中、なんか甘いのが入っていてパンに合うねぇ。ちくわも美味しいし」
 と、皆さん、弁当のついでだったり、子供のおやつだったり、と、まぁとにかく買って行かれます。

 ちなみに、このちくわパンですけど、パラナミオも大好物になっていまして、学校から帰ってくると、
「ただいまパパ、おやつはちくわパンがいいです!」
 と、まぁ、最近では帰りましたの挨拶とセットで要求してくる程になっています。

 で、パラナミオ用のちくわパンは、僕が自分で焼いています。
 テンテンコウ♂の作った物ももちろん美味しいんですよ。それは僕が保証します。

 でもね、ここは譲れません。

 えぇ、パラナミオの気に入ってるパンを、父親である僕が作らなくていいのでしょうか?
 否、いいわけがない! =どど~ん=

 そんなわけで、パラナミオ用のちくわパンは僕がいつも作っています、はい。

 で、せっかく好評なのですから、色々バリエーションが出来ないかなと思いまして試行錯誤した結果。

・チーズ入りちくわパン
・ウインナー入りちくわパン
・ツナマヨ入りちくわパン

 以上の3種類を試作してみました。

 まず、チーズ入りちくわパンですが、このチーズはララコンベ温泉名物になっているカウドン乳から作られています。
 チーズとしてもなかなか好評なのですが、これをちくわパンのちくわの中に詰めてみたところ、
「パパ! これもすごく美味しいです!」
 と、パラナミオの満面笑顔を引き出すことに成功しました。

 次に試作したウインナー入りちくわパンですが、これはタテガミライオンの肉と腸を使ってすでに製造販売しているウインナーを細長くしてちくわパンのちくわの中に詰めてみたのですが、
「パパ! これもすっごく美味しいです!」
 と、再びパラナミオの満面笑顔を引き出すことに成功しました。

 さらにツナマヨ入りちくわパンですが、これはアルリズドグ商会から仕入れている魚の中にマグロもどきな魚がいたものですから、それをツナに加工した物をマヨネーズとあえて、ちくわパンのちくわの中に詰めてみたのですが、
「パパ! パラナミオはこれが一番好きかもしれません!」
 と、パラナミオから最大級の笑顔を引き出すことに成功しました。

 まさに、良一的にもオールオッケーなわけです、はい。

 で、これらの各種ちくわパンに加えて、ツナもうまく加工して缶詰風にして売り出せたらいいな、と、思いながら目下試作を繰り返しているところです。

 こうして、おでんの具材としてだけでなく、ちくわは幅広い商品展開をしているわけです、はい。

◇◇

 そんなある日、オデン六世さんが店に駆け込んできました。
 無口なのはいつもなのですが、なんか僕に向かってすっごいゼスチャーをしてきます。
「ど、どうしたんですか!? オデン六世さん」
 僕もびっくりしながらオデン六世さんへ視線を向けていたのですが、そんな僕の視線の前でオデン六世さんは、
「う……うま……うま……うま……」
「馬? 馬がどうかしたでごじゃりまするか?」
 と、僕の横でそんなオデン六世さんを一緒に見ていたヤルメキスが、首をかしげながら声をあげたのですが、
「あの……オデン六世さん……まさかルアが、赤ちゃん産まれそうなの?」
 僕がそう言うと、オデン六世さん、パン! って両手を叩きました。
 どうやら、正解だったようなんですけど、そんなオデン六世さんは僕の手を引っ掴むと
「……おね、おね、お願いします」
 そういいながら僕をルアの所に連れて行こうとしましてですね
「ちょ、ちょっと待って!? 僕じゃ役にたたないからぁ」
 と、まぁ、混乱しまくっているオデン六世さんを必至になだめ、とにかくスアにですね使い魔の森から産婆が出来る使い魔を呼んでもらおうと思ったところで


 おぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……あれ?」
 な、なんか、ルアの店の方から赤ちゃんの泣き声がしたような気が……
 で、その声を聞いた途端に、オデン六世さんはすごい勢いで工房へ駆け戻っていったのですが、
「オデン六世さん! 頭! 頭忘れてる!」
 僕は、オデン六世さんが足元に置きっ放しにしていった頭を小脇に抱え、走って追いかけていきました。
 いくらデュラハンだからって、頭を忘れていっちゃダメですよ。

 てなわけで、

 ルアが無事オデン六世さんの赤ちゃんを産みました。
 元気な女の子です。

 ……えぇ、女の子なんですが……

「……やっぱ、パパの子だねぇ」
 そう言いながら、ベッドに寝ているルアは、その横で寝かされている赤ちゃんを愛おしそうに見つめています。
 その赤ちゃんですが、猫人のルアの影響で猫の耳や尻尾がついているのですが、

 頭が首のところで離れています。

 そこは、やはりデュラハンのオデン六世さんの血なんでしょうねぇ……
 とはいえ、首が離れている以外はごくごく普通の女の赤ちゃんです。

 オデン六世さんは、ベッドで横になっているルアの頭を優しく撫でながら
「……ありがとう……ありがとう」
 そう言いながら、何度も何度も上半身を倒していました……頭は僕が持ったままだったので、ちゃんとルアと赤ちゃんの顔が見えるように調整しましたとも、ええ……

 で、スアと、使い魔の森からやってきた樹木の精霊、キキキリンリンが赤ちゃんやルアの世話をかいがいしくしてあげていたのですが、
「……デュラハンの赤ちゃんなんて、初めて見た、わ」
 スアはそう言いながら、赤ちゃんを珍しそうに見つめていまして、その横で、キキキリンリンまでもが
「私も初めてですわねぇ」
 と言いながら珍しそうに見つめていました。

 どうも、デュラハンの子供って相当珍しいみたいです。

 とはいえ、とにかく可愛い赤ちゃんなのには変わりがありません。
 スアも、リョータを抱っこしながら笑顔でお世話をしてあげています。
 リョータのお世話をすでにし続けているスアですので、赤ちゃんの世話はお手の物なんですよね。
 これには、スアの使い魔の森で産まれた赤ちゃんの世話をしまくっているというキキキリンリンも、
「いや、スア様がまさかここまで赤ちゃんのお世話に精通なさっているとは」
 と、いいながら目を丸くしていました。
 なんか、そう言われると、僕までうれしくなってきます。

 そんな赤ちゃんですけど
「旦那とも話しててさ、名前は『ビニー』にすることにしたんだ」
 ルアはそう言って笑いました。

 ……ん? ビニー

「あぁ、コンビニのビニをもらったんだ。何しろ、コンビニおもてなしがなかったら、アタシと旦那は縁がなかったわけだしね」
 ルアはそう言って笑いました。

 そうだよねぇ。
 オデン六世さんってば、たまたまやってきたコンビニおもてなしから見えたルアの姿を見て一目惚れしたんだよねぇ…… 
 で、そのルアの姿が見える場所が店の奥の魔女魔法出版の本が置かれている場所だけだったもんだから、その場に何日も何時間も居座ってねぇ……
 頭だけ置いて帰ろうとしたこともあったっけ。

 とはいえ、そんなこんなで縁があって一緒に暮らし始めた2人についに女の子、ビニーが産まれたわけです、はい。
 ウチのリョータともそんなに年齢が違いませんし、仲良くなってくれたらな、と思っている次第です。
 で、そんな2人を、パラナミオはすごく嬉しそうに見つめていました。
「2人とも、パラナミオが可愛がってあげます! パラナミオ、お姉さんですから!」
 そう言って、パラナミオは胸をドンと叩きました。
 うん、ホント、いい笑顔です。

 そんなルアとオデン六世さん、そしてビニーの姿をですね、なんかヤルメキスとパラランサが仲良く肩を並べて見つめていました。
 2人して、頬を赤く染めながら、たまにチラッと互いの顔を見つめ合っているんですよね。
 なんと言いますか、この2人も初々しいといいますか、甘酸っぱいといいますか、ヤルメキスが蛙人なだけに、憎いよこの!……と、どっかのシャツに張り付いたカエルの歌のフレースが頭をよぎったりしましてねぇ……

 で、その夜
「ルアもついにママになったんだなぁ」
 僕はベッドに横になりながらそう言いました。
 何しろ、この世界にやってきて初めて言葉を交わしたのがルアだったもんですから、ちょっと感慨深い感じです。
 で、僕がそんな事を言っていると、ベッドの中、リョータとパラナミオを挟んで向こう側にいたスアが、ベッドの上をゴソゴソ移動して僕の方へとやってきました。
 で、スアは僕の顔の前に自分の顔を寄せてきまして、
「……私も、ママになってる、よ」
 そう言いながら、自分から口づけてきました。
 スア的に、少しやきもちをやいたのかもしれません。
 スアって、二百年以上生きているのに、こういうところが可愛いといいますか……
 僕は、そんなスアをギュッと抱きしめながら……

 はい、ここからはいつものように黙秘させて頂きますよ。
 この日は、途中でパラナミオが起きだしてきて大慌てでしたとだけ……えぇ、ホント大慌てで……

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