秀長8
一番恐れていることが起こった。茶々が懐妊したのだ。これでますます動きが慌ただしくなった。秀次は摂政を引き受け大和も手にした。秀吉はすべての政務を投げ出した格好で秀長が走り回っている。
鼠から繋ぎが入った。それで蝙蝠と下忍を2人を連れて胡蝶が住まう神社に向かった。天海がここにいるとのことだ。大和から修験者の山に潜ったと聞いていたが。いつの間に大坂まで出て来たのか。神社に着くと繋ぎの年寄りが裏道に案内する。2人の下忍を逃げ道に配置して蝙蝠と屋根に上る。周りに修験者が10人ほど警戒をしている。
天井裏には鼠がいる。狗に覗き穴を替わる。蝙蝠は後ろを固める。やはり天海がいる。
「どうだ。茶々を操れるか?」
「気の強い女ですから復讐に憑りつけば」
「あれは秀吉の子か?」
「秀吉は種なしです。それで石田三成を使いました。もちろん茶々にも三成にも分からぬようにしました」
その時危険を知らす笛が鳴った。屋根裏から出ると下忍が修験者を相手に戦っている。いつの間にか30人ほどに増えている。
「よし、3方に走り出す。蝙蝠は2人の下忍を率いて走れ」
と言うと狗は屋根から火薬玉を投げつける。狗はしばらくして反対側に飛び降りる。5人の修験者が切りかかってくる。2人を切ると目の前に下忍が切られて倒れている。
「狗か?」
京之助だ。天海と行動を共にしているのだ。
「腕を上げたな?」
京之助はどこか凄みが増している。一閃が振り下ろされた。狗は転がって辛うじて躱す。それを見ていたように剣が突きだされる。今度は狗は思い切り飛び上がる。京之助も同じように飛び上がる。今まで飛び上がる高さは京之助には勝てなかったが、剣を振り切るほどに高く飛び上がって木の枝に飛びつき反転して隣の木に飛び移る。木の上では京之助には負けない。