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どっこい生きてる○き○の中 その2

 まぁ、状況はだいたいわかりました。

 以前スアに招き猫の中に封印された暗黒大魔道士ダマリナッセ・ザ・テリブルアなんですけど、長いこと封印されている間に招き猫の体に慣れてきて、とりあえず言葉を発する事が出来るようになったらしいわけです。
 で、ならばと、誰かがいるときに悪戯とばかりに話しかけていたと、こういうわけです、はい。

 で、僕や魔王ビナスさんに話しかけなかったのは
『店長にやったら、あの怖いロリ魔法使……』
「……」←睨み付けるスア
『……じゃなくて、素敵でいかした伝説級の魔法使いがでてくるじゃない。それにそっちの魔王さんは論外よ! 伝説級の魔法使い並みの力持ってるし』
 この話を聞いた僕は、

 魔王並みの力を持っているスアがすごいのか、
 伝説級の魔法使い並みの力を持っている魔王ビナスがすごいのか、

 の判断がつきませんでしたが、まぁそれは別のお話ということで……

「とにかく、店で店員や客に話しかけるのは禁止ね」
『へいへい……わかりましたよぉ……』
 ダマリナッセは、渋々ながらも了承しました。

 ……ただ、封印された状態で、かつ招き猫状態のまま動けないダマリナッセです。
 まぁ、しでかそうとした事が事だけに自業自得ではあるんですけど……さすがにちょっとだけ可哀想かな、と思ったりしたわけです。

 ……まぁ、たまには話し相手になってやってもいいかなぁ、
 そんな事を思っているとですね、ある日のこと……

 その日、僕はコンビニおもてなし4号店で勤務していました。
 営業も終了し、
「じゃ、クローコさん、後をまかせてもいいかな?」
「バッチっすよ! あとはクローコにおまかせなりぃ」
 そう言いながら舌だし横ピースをしているクローコさんに、思わず乾いた笑いを浮かべながら、僕は転移ドアをくぐって本店へと戻って行きました。

 すると

「私はパラナミオといいます。お姉さんはどなたですか?」
『わたしはダマリナッセって言うんだよ、お嬢ちゃん』

 店のカウンターに行きますと、学校から帰ってきたばかりらしいパラナミオが、興味津々な様子でダマリナッセ招き猫と話をしていました。

 そんな中、僕に気がついたパラナミオは
「パパ、この招き猫さんすごいですね、お話が出来るんですね!」
 そう言いながら顔を輝かせていました。

 いやぁ……パラナミオが感動するのはあれですけど……相手はあの暗黒大魔道士ですからね……
 なんでしょう、言霊でパラナミオを操ろうとしたりとかしようとするんじゃないかって、ちょっと良からぬ不安が頭の中をよぎりました。
 すると、そんな僕にダマリナッセは
『あぁ、店長さん、心配しなくても大丈夫。そんな力はさ、ぜ~んぶあのロリ……じゃない、素敵な伝説級魔法使いさんに封印されてるから』
 そう言いました。

 で、パラナミオの方も
「パパ、この招き猫さんと少しお話してもいいですか?」
 興味津々な様子で僕にそう聞いてきます。
 まぁ、僕も一緒にいればいいか、と思い
「じゃ、少しお話してみてもいいよ」
 僕がそう言うと、パラナミオは嬉しそうに微笑みながらダマリナッセ招き猫に話しかけていきました。

「はじめましてダマリナッセさん。私はパラナミオといいます。パパとママの娘で、リョータのお姉ちゃんです」
『はい、よく言えましたね。いつも見てたから知ってるよ。お姉さんは暗黒大魔道士だ。ちょっと前にね悪いことをしちゃって、パラナミオちゃんのパパとママにお仕置きされちゃったのよ』
「そうなんですか? でも悪いことをしちゃだけです」
『はいはい、今はとってもよくわかってますって』

 パラナミオとダマリナッセ招き猫は、そんな感じでとりとめのない会話をしていたのですが、

『へぇ、パラナミオちゃんはサラマンダーなんだ……そう言えば昔こんなことがあったんだよ……』
 そう言いながら、ダマリナッセ招き猫は、自分が知っているサラマンダーのお話を始めました。

 おおまかに解説すると

 大昔、魔王の手先だったサラマンダーがいました。
 そのサラマンダーは勇者を倒そうとしましたけど、負けました。
 サラマンダーは改心して、勇者の仲間になりました。
 その後、サラマンダーは勇者と一緒に魔王を倒しました。
 すると、よく頑張ったサラマンダーを、神様が人間の女の子にしてくれました。
 勇者は、人間の女の子になったサラマンダーと結婚して末永く幸せに暮らしましたとさ。

 と、まぁ、そんなお話でした。

 それをダマリナッセ招き猫は、パラナミオにもよくわかるように、話を物語風にして聞かせていました。
 
 ……っていうか、こいつ結構お話上手なんだなって、僕も思わず感心してしまいました。

『……はい、ダマリナッセお姉さんのお話、今日はここまでかな』
 そう言って、ダマリナッセ招き猫が話終えると
「ダマリナッセお姉さん、とっても素敵なお話でした。パラナミオ感動しました」
 パラナミオは、そう言いながら一生懸命拍手をしていきます。
「いや、マジでよく出来てたよ、今のお話は」
 僕も、パラナミオと一緒に拍手していきます。
 するとダマリナッセ招き猫は
『ま、まぁね……ホントにあったお話をさ、即興でパラナミオちゃんにわかりやすいようにしただけだからさ』
 そう言いながらも、どこか照れくさそうな声になっていました。

 で、僕達2人が拍手していると、その後方から3人目の拍手の音が聞こえてきました。
「いやぁ、言いお話ですねぇ。私とっても興味をそそられたのですよ」
 そう言いながら店に入ってきたのは、魔女魔法出版のダンダリンダでした。

 あ、そう言えば、今日はスアが原稿を渡すっていってたっけ……確か『魔法使いの初めての子育て その1』だったっけか?

 ダンダリンダは、拍手をしながらダマリナッセ招き猫へ歩みよっていくと、
「私、魔女魔法出版のダンダリンダと申します。暗黒大魔道士ダマリナッセ・ザ・テリブルアさん、いきなりで恐縮ですが、今のお話、児童向けの絵本にしてみませんか?」
『へ?』
 ダンダリンダの申し出に、ダマリナッセ招き猫は、びっくりしたような声を上げていきました。
 すると、ダンダリンダは、そんなダマリナッセ招き猫に向かってニッコリ微笑むと
「いえね、ちょうど今、我が魔女魔法出版では児童向けの絵本に力を入れようと計画しておりまして、そういったお話を収集しているところなのですよ。
 で、先ほどあなたがこちらパラナミオさんにお話していた内容ですが、ストーリーといい、言葉遣いといい、まさにパーフェクト! 私、これ絶対売れると確信したのですよ」
『え、そ、そうかなぁ』

 と、まぁ、そんな感じで、僕とパラナミオの前で、話はトントン拍子に進んでいきました。


 その後……

 パラナミオとダンダリンダが一緒にダマリナッセ招き猫からお話を聞きまして、その際にダンダリンダがその内容をすべて速記して書き留めていきます。
 で、それをすぐに魔女魔法出版本社で清書し、原稿化していきまして、その後絵描きさんに絵をいれてもらって……

 はい、絵本の完成です。

 これが、最近、閉店の後の本店のカウンター前で、毎日一回行われています。
 最近のパラナミオは、家に帰ってきたときに、このダマリナッセ招き猫のお話を聞くのを楽しみにしています。
 で、ダマリナッセ招き猫も、パラナミオにお話出来るのが嬉しいみたいでして……時折
「……いや、ここはこう言った方がいいかな……いやまてよ……」
 そんな声が、営業時間中に聞こえてくることが多くなってますけど……まぁ、これくらいは多めに、みることにしています。

 で、このお話を元にした絵本シリーズですけど……さすがに『暗黒大魔道士ダマリナッセ・ザ・テリブルア』名義では出せませんので、ダマリナッセ招き猫とも相談した結果『おもてなし絵本文庫シリーズ』として発刊されています。で、売り上げは『あぁ、この街に全額寄付してよ。結構迷惑かけたしさ』というダマリナッセ招き猫さんのご厚意により、役場へ直接送金されることになっています。
 ちなみに、売れ行きの方ですが
「もうね、これ、大ヒット御礼ですよ! 最近でいえば、『夢見る家の復興録』以来の大ヒットですねぇ」
 とのことで、ダンダリンダは、そう言いながら大喜びしています。

 そう言えば、この夢見る家の復興録って、異世界からこの世界にやってきた女の子が頑張るお話らしいんだけど……主人公の名前がヨーコっていう人狐って……なんかこの間やってきたラテスさんが、なんかそんな名前の友達がいるみたいな事を言っていたような気が……

 そんなことを考えている僕に
『なぁなぁ、店長さん』
 ダマリナッセ招き猫が話しかけてきました。
『あなたの娘さん……ホント天使ね。これからもお話させてちょうだい……お願い』
「いや、僕の方こそよろしく頼むよ。パラナミオは君の話をとっても楽しみにしているからさ」
 僕は、そう言いながら招き猫の手の部分で握手していきました。


 でもね……ひそかに、僕もやってるんですよ。
 パラナミオにね、元いた世界の昔話を話して聞かせてあげる準備をです。

 ダマリナッセ招き猫にばかり良い格好をさせるわけには行きませんからね!
 えぇ、若干ジェラシってる男親ですけど、何か?

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