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コンビニおもてなし4号店開店です その2

 コンビニおもてなし4号店が開店して2日目

「今日からよろスくおねがいスますぅクマぁ」
 週2~3日勤務予定の熊人のクマンコさんがやってきました。
 彼女は、子供さんを6人抱えたママさんです。
 どこか純朴ななまりのある言葉使いな彼女ですが、「し」が「ス」に聞こえるのとイントネーションがどこかおかしい感じがするんですけど、なんかのんびりした感じのいいおばさんって感じです、はい。
 少しふくよかな体型の彼女は、出勤するなり1人1人に
「みなさん、よろスゅうお願いスますねぇクマぁ」
 そう言いながら丁寧に頭をさげて握手をして回っていきます。
 まぁ、人柄は面接で拝見したとおりすごく良さそうですので、無理ない範囲で頑張って行ってもらおうと思っています。

 で、そんな彼女には店のレジを含めた接客作業をお願いする予定になっているため、初日の今日は少し早めに来てもらっていまして早速ヘルプで2号店からやって来ているシャルンエッセンスに指導をお願いしました。

 で、僕はといいますと
「店長ちゃん、昨日の3倍は作っとかないとマジやばいっしょ」
 ツバが商品にとんでかないようにマスクをしてはいるものの、キャハキャハと一時も口を閉じることなくしゃべり続けてるクローコさんとともに、温泉饅頭を作り続けている次第です。
 まぁ、クローコさんの場合口も動くけど手もちゃんと動いているので注意はしないことにしています。
 それに、今日すごく雄弁なのには理由がありまして、
「あのさ、アタシなんかがさ、売り子したのにチョー売れてさ、なんかもう昨日の夜は興奮しっぱなしだったんだよ、店長ちゃん」
 というわけです。
 
 話しによると、仕事そのものは真面目にやっているつもりでも、その必要以上に着飾った姿と言葉遣い、それに無類の話し好きが災いしてか、どこに務めても長くは続かなかったというクローコさん。
 まぁ、これがすごく高級な店とかだったら言葉遣いとかも直してもらわないとって思うけど、一般大衆を相手にするコンビニおもてなしですしね、むしろいい個性くらいに思うことにしているわけです。
「店長ちゃん、今日もねアタシ、パナいくらい売りまくるからね!」
 そう言いながら良い笑顔のクローコさん。
 なんか、その笑顔を見ていると、こっちも元気をもらえた気になるので不思議なものです、はい。


 温泉の街として再出発しているここ辺境都市ララコンベですけど、まだまだ発展途上の感じは否めません。
 組合のペレペによれば、温泉宿の部屋の稼働率は平均するとだいたい50%くらいだそうだ。
 ただ、この数字は当初の予定どおりではあるわけです。
 あとは、このお客さん達がリピーターになってくれるかどうか、新しいお客さんを口コミで呼んでくれるかどうかにかかっているわけです。
「またタクラ店長にはあれこれお知恵をお借りしたいですです」
 ペレペはそう言って笑っていたのですが……う~ん、温泉宿なんてやったことないですからねぇ……
 以前言った辺境小都市リバティの温泉集落のように、温泉の効能が強い上に絶景のロケーション、そしてうまい料理と整備された交通網。
 特に交通網に関しては、なんか定期魔道船とかいう空飛ぶ幽霊せ……あ、いえ、なんでまりません。
 そんなもので王都と直結してるっていうんですから、そりゃ集客もすごいことになろうと言うものです。

 景観と、泉質はもともとの物とは言え、そこに
 ・美味しい料理
 ・整備された交通網
 ・きちんとした宿泊施設
 と、まぁ、そう言ったものをしっかり整備していったからこその結果ですもんね。

 僕らも視察結果を思い返しながら、出来ることから地道にやっていかないと、と思っているわけです。


 そんなこんなで、2日目も営業開始です。

 この日もすでに出店で蒸し上がっていく温泉饅頭の匂いに多くのお客さんが集まっていたのですが、開店と同時にすごい勢いで温泉饅頭を買っていってくださっています。
(こりゃ、またすぐになくなるぞ)
 そう思った僕は、店の接客の指示をシャルンエッセンスとツメバに任せて店の奥の厨房へと移動していきました。

 すると、レジ打ちをしていたクマンコさん。
 僕の肩を叩くと、
「あンの、店長さん。あのお饅頭さつくる作業ですけンど、あたしにやらせてみてもらえんですかねぇ?」
 そう言ってきました。

 で、まぁ、やってみたいのなら、と、一緒にやってみたのですが……はっきりいいます。


 びっくらたまげた。


 いえ、もう、この一言です。
 どこか純朴といいますか、田舎のおばちゃん然としたのんびりした話し口調の彼女がですね、
「あぁ、こっただちんまりスた饅頭、よく子供らに作ってやってたんでスぅクマぁ」
 そう言いながらニッコリ微笑んでいるんですが

 その手の動きがすさまじいです。

 もう、なんといいますか、手だけ鮭を捕りまくってるとでも言いますか……僕の5倍……いや、もっと早くに温泉饅頭を作り上げていくわけです。

 正直、ここまでの能力を秘めておられたとは夢にも思っていなかった僕は、その動きにただただびっくらたまげるしかなかったわけです、はい。

 と、いうわけで、クマンコさんには急遽饅頭作成作業に従事してもらい、その合間にレジのヘルプに入って貰う事にしました。

 ……あとで、饅頭を家で作って納品だけでも毎日お願い出来ないか相談してみようと思っています、はい。


 このクマンコさんの思わぬ能力のおかげで、昨日は早々に売り切れてしまい、販売出来ない時間が結構あった温泉饅頭ですが、一度の売り切れることなく一日中販売し続けることが出来ました。
 正直言って儲けは少ないですけど、これが客寄せの一環になればとも思っているわけです。
 お土産用に袋に入れて持ち帰り出来るようにもしているのですが、そちらの売り上げもなかなか好調で、閉店時にはすべて完売していました。

 出、そんなに大量に販売したにも関わらず、厨房にはクマンコさんが午前中だけ使って作り上げた温泉饅頭が文字通り山になって残っています。
「店長ちゃん、あのクマおばちゃま、パナイね、マジパナイね」
 クローコさんも、妙にハイテンションで喜んでいます。

 で、傷むといけないので、あとは蒸すだけ状態のこの大量の温泉饅頭が全部魔法袋に入れておきました。

 これだけあれば、少なくとも明日の分は心配しなくてもよさそうです、はい。

 
 で、そんなことを思っていると
「この店かい? 昨日から何やら良い匂いをさせているのは?」
 なんか、不思議な格好をした女性が店にやってきました。
 すでに閉店時間になっていて、店の片付けをしていた僕は
「温泉饅頭のことですかね? 今日は閉店してしまったのですが……」
 そう言いかけたのですが、その女性は
「いいからいいから、まぁ、ちょっとその温泉饅頭とか言うの、ちょっと持って来てみてよ」
 そう言いながら僕の肩に手をあてて……あてて?……ちょっと待って、

 何でこの人の手、僕の肩をすり抜けてんの!?

 その人、なんか白い巫女のような装束を着ていて、なんか色白というか色素薄いなぁ、といった肌の色をしていたんですけど……え? まさかこの人……

 僕が、さ~っと顔を白くさせていると、その女性
「あぁ、ごめんごめん人里まで降りて来たのって久しぶりだったから、ちょっと気を抜きすぎてたね」
 そう言いながら、なにやらむん! って気合いを入れた……すると、すぐにその体がはっきり見えるようになって、
「ほら、今度は透けてないでしょ?」
 そう言いながら、僕の肩を、今度はしっかりポンポンと叩いていきます。
「アタシはララデンテ。この崖の上にある魔界への門の守護者だったお姉さんよ……まぁ、肉体は随分前に滅んじゃってるんだけどね」
 そう言って、カラカラ笑う女~ララデンテさんなんですけど……に、肉体は随分前に滅んでいるってことは


 やっぱ、幽霊じゃないですか!?

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