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vs, フラモン Round.5

 
挿絵


 ぞろぞろと女子高生(JK)逹が帰路へ着く。
 最初の内は物珍しさにフォト撮りとかしてたけど、どうやら見慣れて飽きたらしい。遠巻きにパシャパシャ撮るだけじゃなく、ボクとフラモンにスリーショットを頼むヤツまでいたのに……つくづく現金だな!
「じゃね」「バイバ~イ♪ 」
「うん、バイバイ……」
 ボクへと手を振って、次々と校門を過ぎて行く。
 メタリック少女を目の前にして、何でそんなに警戒心無いん?
「じゃあ、またなー?」
「うん、また……またッ?」
 また(・・)こんなトラブルに()っていいんかぃ?
 空手部の〝赤木一実(あかぎひとみ)〟さん?
 きっと、みんなこれから『マドナ』や『グラウンド・ワン』とか行くんだろうなァ……。
 ボクだって行きたいッ!
 行きたいけど……今日は無理だろうな。
 コイツ(・・・)がいるし。
 羨望(せんぼう)()(いき)に沈むと、ボクは〈フラモンベガ(人間形態)〉へと恨めしく向き直る。
 視線に気付き、フラモンベガは「てへ♪ 」と頭コッツンコ。
 いや、視線じゃなくてボクの心中に気付けよ。
 仕方なく放課後エンジョイタイムは諦めて、戦闘処理の尋問を開始。
「まず、キミの名前は?」
「わたしは〈半自律型外殻実装仕様コスモローダー・タイプA3-2006〉──気軽に〝モエルちゃん〟って呼んでね?」
 どう略したら、そうなった?
 ま……まあ、いいや。
「で? キミのドコが〈ベガ〉なのさ? ただの〈ロボットパイロット〉じゃん?」
「そう言えば、そうですわね」と、ラムス。「先程も申し上げた通り、この機体は〈半自律型外殻実装仕様コスモローダー〉──つまり状況に応じて『遠隔操作モード』『搭乗操縦モード』そして『自律AIモード』の3モードに切り換えられますの」
「うわあ? アニメロボットの発展史を単機で体現してるね?」
「……はい?」
「だって『鉄人 ● 号』にも『マジ ● ガーZ』にも『トラン ● フォーマー』にもなるんでしょ?」
「黙らっしゃい、このおバカさん♪ 」
 ニッコリと毒吐きやがった。
 何事も無かったかのように、ラムスは続ける。
 ボクの発言は黙殺されたらしい……シクシク。
「ですから『搭乗操縦モード』ならば、当然〈パイロット〉という事になりますけれど……」
「だって、本体(・・)はアッチだもん」背後の鋼鉄巨人をツンツン指差すモエル。「この姿は〈有機体仕様プリテンドフォーム〉なんだよ?」
 立ち上がって豊満な胸を……いや、視点違った……全身をボクへと見せつける。
「……プリ ● ンダー?」
「プリテンドフォームだってば!」
 小脇締めてプンプン!
 そのキャラ、数年もするとキツくなるからな?
 ()の〝さとう ● 緒大先生〟が、身を(もっ)て立証して下さっているからな?
 それを(さっ)したから〝コリ ● 星〟は〝フ ● ーザ様〟に破壊されたんだよ……おそらく。
「なるほど、そういう事でしたか」
 ラムスが納得を示した。
「どゆ事?」
「彼女は〈有機体仕様プリテンドフォーム〉と名乗った……そして『プリテンド』とは『成り済ます』とか『真似をする』という意味ですわ。そこから推察するに、おそらく現形態の彼女(・・)は、人間を()した(うつわ)──生体(バイオ)生成されたボディに、本体であるAIの人格や知性を複写した存在なのでしょう」
「……アバター?」
「マドカ様が理解し(やす)いのならば、その解釈でも(よろ)しいかと」
「……逆転イッ ● ツマン?」
「知りませんわよ」
 今度は冷徹蔑視(べっし)モードが発動したよ。
「んじゃ、さっきカタコトから流暢(りゅうちょう)になったのも……」
「うん、コッチ(・・・)主導権(ストレージ)を切り替えたの」
 モエルは、種明かしをしてテヘペロ。
 安いトリックだな? 三流作者?
 いや、メタフィクションなツッコミはいいや。
 それよりも、ボクにはずっと気になっていた点があったし。
「ねえ?」
「なあに? マドカちゃん?」
それ(・・)ッ!」
「はぇ?」
「ずっと〝マドカちゃん〟って馴れ馴れしいけどさ? ボク逹、どっかで会った?」
「ええ? ヒドイよ! マドカちゃん! わたしの事、忘れちゃったの?」
「え? あ……うん、ゴメン」
 ズイッと詰め寄るウルウル(まなこ)に呑まれ、思わず謝った。
「もう! しょうがないんだから!」
 プンプンしてるし。
 ほっぺたプゥっと膨らませてるし。
「じゃあ、教えてあげるね? ウフフ♪ 」
 今度は恍惚ながらにアッチの世界(・・・・・・)へ浸り始めたし。
 そこはかとなく怖くなってきたよ。この()
 帰っていいかな?
 もう、出会いとかどうでもいいんで……。
「あれはねえ? もう半年以上前になるんだよぉ?」
 嗚呼(ああ)、語りだしちゃった。
 脳内お花畑で語りだしちゃった。
「わたしね? ジャイーヴァ様からの出撃待機命令を()けてから、衛星軌道上に潜伏して『どうやったら効率よく地球人を制圧できるか』を考えてたの。毎日毎日、お月さまやお星さまに相談してたの」
 イヤなメルヘンワールドがキターーーーッ!
 お月さま! お星さま!
 何つーか……ホントにサーセンしたッ!
「でもね? お月さまもお星さまも、何も答えてくれないの……グスン」
 いや、そりゃそうだろ。
 お月さまもお星さまも着信拒否(ブロック)するだろ。
「でねでね? わたし(ひらめ)いちゃったの! 地球人を制圧する方法は〈地球人〉に()くのが一番だ……って」
 自慢げに「にへへ♪ 」と砕けるモエル。
 ドコに着地してんだ。オマエ。
 何だ、その「おたくの店目障(めざわ)りなんで、どうやったらたたんでくれますか?」と老舗店主に面と向かって()くようなイタイ発想は?
「だから『Facebook』始めたんだ♪ 」
 文明の利器ィィィーーーーッ!
 正しく使おう文明の利器ィィィーーーーッ!
「そしたらね? そこに『発育終わった……爆乳死ね!』って破滅オーラプンプンのスレッドがあって、それがマドカちゃんだったの」
 ……うん、アップした気がする。
 たぶん、何かしらの育乳運動が無駄に終わった時に。
 みんなもネットでの発言には気を付けようね?
「それからマドカちゃんの事が、気になって気になって……♪ 」
会ってない(・・・・・)だろ! それは! そっちが勝手にネット閲覧しただけじゃん!」
「ええ~? 毎日、会ってるよぅ? モニターの中でぇ……想像の中でぇ……そして、夢の中でぇ……いやん ♪ 」
 頬染めて恥じらうな。
 ってか、不思議な事を言い出したぞ? この天然ブリッコ?
 やっぱ電波系?
「だって、半年前から衛星軌道上で実生活を監視してるもん♪ 」
「ふぇ?」
 いまトンデモワード言わなかった?
「ずっと毎日、監視してたんだぁ ♪  毎日毎日……毎日……ウフフ♪  毎日欠かさずだよぉ ♪ 」
「おぉぉまわぁぁぁりさぁぁぁーーんッ!」
 怖くなって絶叫ッ!
 (たす)けて! パトレン ● ャー!
 もう『2045年問題』なんてモンじゃないよ!
 AIが自我覚醒する時代どころか、(すで)にストーカーする時代来ちゃってるよ!
「やがて、マドカちゃんが〈アートルベガ〉になったのを知って……嬉しかったなぁ♪  これで、わたしとマドカちゃんは〝似た者同士〟だもんね? 種族の壁なんて無いに等しいもんね?」
 知らない間に、変な親近感(いだ)かれていた。
 鋼鉄だから?
 それって〈ロボット〉と〈アートル〉だから?
 こっちは〈鋼質化細胞(エムセル)〉なんですけど?
 あくまでも生体(バイオ)的な種族なんですけど?
「ね? だから、これはもう『運命的な出会い』なんだよ? ウフフ ♪ 」
 いや「だよ?」じゃないよ。
 妄想飛躍すんな。
 そして、ボクを巻き込むな。
「……ねえ? 幸せにしてね?」
 誘惑に(うる)む瞳で(のたま)った。
 ハッ!
 まさかコイツ、妄想で一線越えたッ?
 んで(もっ)て、勝手に貞操責任(ていそうせきにん)()わされたッ?
「すてえーーぶんきぃぃぃーーんぐッ!」
 アワアワと腰砕けに怯えるボク!
 と、突然、救いの凛声が!
「ちょっと御待ちなさい!」
 ラムスだ!
 静かなる怒気(どき)(はら)み、フラモンベガと対峙する!

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