ララコンベの温泉 その2
ララコンベでスタートした『健康ランド型温泉宿』計画が本格的にスタートしています。
この計画の母体となる温泉宿ですが、まずお風呂の拡張と、各種風呂の設置作業を開始。
ただ、現在のララコンベには、そもそもの人口が少なく、作業を指揮できる人間もいません。
ここで
「しょうがないなぁ、よっしゃアタシに任せときな」
と立ち上がってくれたのが、猫人のルアでした。
最近は、酒飲み娘の3人目としての印象が強いルアですが、
もともと武具屋で、自前で武具を作っており、今はほとんどコンビニおもてなしの直属の工房として、ウチの店で扱っている弁当箱の制作を始め、各種鍋や加工した魔石を使用した魔法具の制作なども行っており、今では10人くらいの弟子を使っているすごい人なわけです。
そんなルアは、弟子を引き連れてララコンベ入りすると、すごい勢いで風呂を作成していきます。
あまりの手際の良さに、以前もどこかで手がけたことがあるのかと思ったほどなのですが、
「こんなのはなぁ、勢いでいっときゃなんとかなるんだって」
そう言いながら、グイッと水を飲んでは、アハハと笑って作業を続けていきます。
……それ、ホントに水だろうね?
ついで、害獣カウドンです。
まずカウドンの雄の狩猟ですが……まぁこれは問題ありません。
いつもガタコンベで狩猟を行っているイエロとセーテンのコンビが半日で20頭近いカウドンを仕留めてきましたので……
イエロ曰く
「こいつら、タテガミライオンに比べたら楽勝すぎでござる」
セーテン曰く
「遅いキ、鈍いキ、どんくさいキ」
とのことで、この調子なら週に1,2回こっちに来てもらって狩猟してもらえばなんとかなるかと思っているところです。
あわせて、カウドンの雌の捕獲も問題無く完了です。
全部で31頭ものカウドン雌を引き連れて帰ってきたイエロとセーテンですが、途中で手なずけたという、銀色狼~害獣指定S級~を駆使して、まるで羊の放牧を、犬と一緒に制御しながら戻ってくるみたいな感じで帰ってきた姿には、思わずアルプスの光景が目に浮かんだ次第です。
このイエロ達が手なずけた銀色狼6頭なのですが、これが結構役に立ちそうです。
というのが、この狼達、すごく知能が高いらしく、人の言葉を結構理解し、片言ですが話も出来ます。
んで
「食事ヲ保証シテクレルナラバ使役サレヨウ」
と、リーダー格の狼が言うので、その方向でララコンベに住み着いて貰う事に。
この銀色狼6頭には、とりあえずララコンベ周辺の警備をお願いしていますが、将来的には馬車の定期便の警護なんかもしてもらえたらな、と思っているところです。
ありがたいことに、すでにララコンベ入りして警備計画を策定中だったセーテン配下の猿人達と顔合わせもすでに済ませているんだけど、時々一緒になって酒を飲んでいる姿がみられるので、連携もうまくいきそうです。
そうこうしているウチに、ルア達の工事で、旅館の厨房が完成したため、早速旅館で調理作業を行う予定になっている面々……主に、先日、リバティの温泉へ視察に行った女性陣3人です。
この3人は、鬼とのハーフらしく、やや大柄です。
とはいえ、皆非常に熱心で、僕の指導をしっかり聞いてくれますので、こっちもやりがいがあるわけです。
調理の指導は、というわけで僕がしています。
カウドンの肉をなるべく薄めにスライスする作業から開始なわけですが、これは、僕がびっくりするくらい、みんな楽々とこなしていました。
なんでも、
「私達、刀とかを使い慣れているものですから、切る作業はおまかせください」
とのことだったんだけど、僕のイメージで言う鬼って、こん棒振り回してはガハハと笑うイメージだったんだけど、それを言うとイエロが
「そんな鬼、聞いたこともないでゴザルよ」
と言って、アハハ、と笑っていたわけです。
よくわかりませが、とにかく、この世界の鬼ってのは、金棒じゃなくて刀なイメージのようです、はい。
味付けも、カウドン丼のタレに関しては、容器一杯を基準にして、水をどんだけ、塩をどんだけというのをレシピにして明文化しており、それを明確に守るようにお願いしているのですが、ここで非常に頭を悩ませたのは
『少々』の量。
半鬼の女性陣は「少々?」と、非常に不安な言い方をしながら、期待通り~悪い方に~まるでお相撲さんが土俵入りする際にまく並みの量をすくってくるわけです。
なので、僕はルアに頼んで「少々サイズの計量スプーン」を作って貰いどうにか対処出来るようになりました……
まぁ、とりあえずみんな一生懸命頑張ってくれているし、オープンまでにはなんとかなりそうです。
とはいえ、いきなり半鬼さんだけにまかせるのもあれなので、オープンしてからしばらくは、本店の猿人娘を交代で派遣し、指導に当たって貰う予定です。
カウドン雌の放牧ですが、これは以前魔石の運搬のために使用していた馬を飼育していたコボルトのおじさんが2人残っていたので、この2人にお願いすることにしています。
とはいえ、搾乳はスア製の搾乳機が自動でやってくれますので……っていうか、自分で移動していって、カウドンの乳に勝手にはりついて勝手に搾乳していく機械なんですが……そ、そこまでの物を私、要求していませんでしたのよ? スアえもん……
ただ、ガラスの瓶はこの世界では貴重品になってしまうので、スアビールを入れているのと同じ木製の子が樽を使用します。
内容量的には300ml程度で、予定通り、
カウドン乳
コーヒーカウドン乳
フルーツカウドン乳
以上の3種類を製造販売予定です。
ここでは、正当派の飲み方、
『腰に手をあててグイ!』
もしっかり布教しようと思っています。
コーヒーカウドン乳と、フルーツカウドン乳の加工といいますか、混ぜ合わせ作業ですが、これもスアえもんが魔石を使用した機械をあっさり作成してくれたため、コボルトのおじさん2人は、
・カウドン雌への餌やりと健康管理
・コーヒーとフルーツの材料の補充
この作業をお願いすることになっています。
実際問題として、カウドン雌を飼育したという記録というか実績そのものがこの世界的にも前例がないらしいので、そう言った意味での情報収集もしながら、みんなで頑張って行こうと思っている次第です。
これに関しては、特にスアが興味津々ですので、そのうち
「カウドン雌の成体とその飼育方法」
なんて書籍が魔女魔法出版から出版される日もそう遠くないような気がしています。
スアの使い魔が大挙して作業してくれた街道はすでにほぼ完成しています。
とりあえずは、ララコンベと比較的近くにあるブラコンベとガタコンベの2つの都市を結ぶ街道を整備しています。
この近隣には、あと2つの辺境都市と、多数の集落があるのですが、これらのほとんどがブラコンベ近隣に存在しており、辺境都市からブラコンベまでの街道はすでに整備済みなわけですので、ブラコンベとララコンベの街道を整備したことで、この一帯の都市への移動がスムーズに出来るようになったわけです。
すでに荷馬車も準備出来ており、引っ張る馬と、その操馬手も、以前魔石を輸送していた物らでそっくりまかなう予定になっています。
好評であれば増便なり、新たに馬の購入・人の雇用を考える予定にしていますが、まずはこれでスタートしていく予定です。
温泉宿に従事する女将さんですが、一応ララコンベに残っていた旧宿の従業員だった狐人らにお願いしているんだけど、どうにも不安そうなので、しばらくブリリアンにサポートしてもらいようお願いしたんだけど
「なんで私が温泉宿の女将の補佐まで……私はスア様の一番弟子としてですね……」
と、ブツブツ言っていたのですが、リバティの温泉宿でエルフの女将さんが来ていたのとそっくりな和装を着込んだ姿でそんなことを言われてもねぇ……すまないけど、頼むよ。
あとは、温泉宿の周辺に、歓楽街とはいわないけれど、多少飲食店を集めた商店街的な物はあってほしいなと、組合のペレペに話を振ってはおいたんだけど
「……タクラ様これが一番難航しておりますです」
とのことで……