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グルグル回った挙げ句の果てに その3

 と、いうわけで……

 連絡を受けて駆けつけてきた、辺境駐屯地のゴルア隊長以下30名の部下さん達に
「え~、ララコンベを山賊達が襲っているんだ」
「なんですって!?」
「……で、これが捕まえた、その山賊達なんだけど……」
「な、なんですってぇ!?」

 と、まぁ世にも間抜けといいますか……そんなやりとりの末に、山賊達を辺境駐屯地の面々へ引き渡すことが出来ました、はい。
「連絡を受けたときは、イエロ師匠に助力を要請せねばと思っていたのですが……まさか、イエロ師匠だけで全員倒してしまわれるとは……師匠! やはり師匠は最高です! 一生ついていきます!」
 なんかもう、ゴルアとメルアの2人が、2人して盛り上がっちゃって、イエロにくっついて離れようとしないんだけど……実際は、セーテンとルアも大活躍だったんだけどね。
 僕がそう言うと、

 セーテンは、
「アタシは、ダーリンが今夜慰労してくれたらそれでいいキ」
 ルアは、
「あたしゃ、今夜もうまい酒が飲めたらそれでいいや」

 とのことだったので、
 まぁ、セーテンのお願いの方は確実にスアの怒りを買うし、そもそも僕はスア以外の女性と……なんてまったく思っていませんので、まぁ、スアビールを無償提供することで勘弁願うとしようかね。

 んで、まだ覚醒仕切っていなかったスアなんだけど
 まだあくびをしながらも、なんか山賊達の後方へポテポテ歩いて行きます。

 ん? どうした?

 そう思っていると、スア。
 山賊達の一番後方に、簀巻きにされながらも隠れるようにしていた5人の人物の前で立ち止まります。

 この5人
 フードを目深に被っているので顔がよく見えませんが、見た感じ女性のような……

 んで、スア。
 この5人に
「……フード、とって」
 と……

 そう言ったんだけど、3人ともうつむいたまま無視。

「……とって」
 と、再度スア。

 んで、再度無視の3人。

 すると、スア。
 右手をかざして短く詠唱した。

 同時に、5人が身につけていた外套が消え去り、フードも消え、その結果顔がはっきり見えるようになったんだけど……

 ……ちょっと待ってくれ
 こいつら、見覚えがある。

 で、スア
 こいつらを見下ろしながら言いました。
「……で? 言い訳は? 上級魔法使いのお茶会倶楽部の、クソ」

 え~、スアさん、お気持ちはわかりますが、もう少し綺麗な言葉でお話しましょうねぇ、ほら、パラナミオも来てることだし……

 って、そんなスアをみながら、パラナミオも
「ママ、格好いい……」
 って、目を輝かせてるし……あ~、もう

 でまぁ、とにかく奴らです。
 奴らだったんですよ、この山賊の尻にくっついてたのが

 そう、あの

**ここからしばらく表記することをはばかられる表現が続くため省略されました**

 な、上級魔法使いのお茶会倶楽部のやつらだったわけですよ……はは、言ってやった。


……で、確かこいつら、王都から逃げ出してたんじゃなかったっけ?
 ララコンベの抗議から逃げるために

「ち、違いますわ」
「わ、私達は予定されていた地方視察に出発だけでしてよ」
 お~っほっほっほ

 ほう、この後に及んでまだそんなことを言いますか?

「ち、違いますわ」
「ちょっとついていく集団を間違えただけでしてよ」
 お~っほっほっほ

 ……ゴルア、こいつらこんなこと言ってるんだけど
「あぁ、もう山賊達からの聞き取りでほぼ全容が発覚したので、そいつら、もういいです」

 だそうなんだが? 上級魔法使いのお茶会倶楽部の皆様?

「ち、違いますわ」
「私たち5人は、そんな山賊達、見たことも聞いたことも、利用したことも、あまつさえ、そいつらを利用して、恐れ多くも我ら上級魔法使いのお茶会倶楽部に対して抗議なぞしてきやがりました、クソ生意気なララコンベの奴らに天誅をくだそうなどと、まったくしたこともありませんわ」
 お~っほっほっほ

「うん、ゴルア、
 ララコンベが上級魔法使いのお茶会倶楽部に対して抗議してきたため、その仕返しとして山賊と結託してララコンベを襲ったそうだぞ」
「了解であります。魔石録音機でしっかり言質もとりましたのでばっちりです」

 そんなゴルアの言葉に、顔面蒼白の上級魔法使いのお茶会倶楽部の面々
 まったく、自分達がきちんと検査しなかったのが問題だろうに……ったく

「いえ、あのララコンベの鉱脈はちゃんと調査しましたわ」
「えぇ、みんなで話し合って結果を出しましたわ」
 お~っほっほっほ

 ……ちょっと待て
 今、話し合って結果を出したっていったか?
 まさかお前達、現地に行ってないのか?

「行くわけありませんわ」お~っほっほっほ
「あんなド田舎までねぇ」お~っほっほっほ

「お~い、ゴルア、罪状追加だ。金受け取っときながら、鉱脈の調査に行ってないぞ、こいつら」
「はい、魔石録音機でしっかり言質もとりました」

 そんなゴルアの言葉に、再び顔面蒼白の上級魔法使いのお茶会倶楽部の面々。

「わ、私達くらいの魔力の持ち主でしたらですね……そ、そう! 王都にいながらにして鉱脈の調査が出来るのよ」
「そ、そうですわ。そうですわ」
 お~っほっほっほ

 あ~、いちいち笑うのが、ホントうざい、こいつら。

 そう僕が思っていると、
 スアが、何やら5人の前に地図を広げました。

 見るとこれ、ララコンベ周辺の地図です。
 するとスア、僕に向かって「黙っててね」とばかりに人差し指を口にあて

 って、その仕草がもう可愛すぎて……すいません、少し我を忘れました。

 んで、5人に向き直ると
「……これ、とある地区の地図……どこかに魔石ある……ど~こだ?」
 そう言って両手を広げます。

 すると5人。
 簀巻き状態のままガシッと寄り添い、その地図をカッとにらみつけていきます。

 ……っていうか、誰一人、それがララコンベの周辺の地図だと気がついていません。
 ……おいおい、マジか……

 そんな中
「あそこよ」
「いや、そこじゃなくて」
「やっぱりこっちよ」
 とまぁ、みんな、スアの顔色をうかがいながら、必死になってああでもない、こうでもない、と、地図のあちこちを、顎で押していくんですけど……


 すごいですよね……すでにそこの鉱脈、掘り尽くしてるのに、それに気づけないって
 あまつさえ、そこが、ララコンベの周辺だって気づけないなんて……

 で、この後

 半日がかりで、必死に地図のほぼ全域を指し示し続けたところで、スアの種明かし。
「……これ、ララコンベ……もう魔石鉱脈、尽きてる、よ」
 と。

 すると、上級魔法使いのお茶会倶楽部の5人
「詐欺ですわ」お~っほっほっほ
「卑怯ですわ」お~っほっほっほ
「反則ですわ」お~っほっほっほ
 と、まぁ、高笑い付きで大文句をいいまくったわけなんですけど、これに対してスア、

「王都にいながらにして鉱脈の調査が出来るんじゃなかったの? ほっほっほ」
 と、抑揚のない笑い声で、一同を見回しました。

◇◇

 で、まぁ、これが決め手となり、この山賊達を率いていた上級魔法使いのお茶会倶楽部の幹部5人は揃ってゴルアに捕縛されましたとさ……めでたしめでたし。

 そうなって欲しいのは山々なんだけど、
 こいつらと途中まで行動をともにしてたはずの、魔法学校を首になってる上級魔法使い達がまだ結構な数いるはずだし……どっかでなんかしでかすような気がしないでもないんだけど……まぁ、とにまくこれで、ララコンベを襲っていた山賊事件は一件落着したわけです。

◇◇

 んでもって、この日の夕刻
 本店の営業を終えた僕は、スア・パラナミオを連れてララコンベへとやって来ました。
 スアの転移魔法で移動したので、あっという間です。

「ようこそお越しくださいました」
 そんな僕達を、ペレペ達、ララコンベに残っている皆さんが出迎えてくれました。
 山賊に襲われてはいたものの、まだ門が破られていなかったので、どうにか重傷者まではいなかったらしく、スアの回復魔法で皆さん、すぐに元気になりました。

 んで、ペレペ。
「魔石鉱脈が尽きた今となっては、どうやってこのララコンベを立て直したらいいのかと、悩むことしきりでして……」


 ペレペによると
 今回の上級魔法使いのお茶会倶楽部のずさんな試算を元にした無謀な採掘計画に基づいた都市化が招いた悲劇であることを、王都に報告し、このララコンベを集落にまで格下げしてもらう予定なんだとか。
 そうでもしないと、都市のままだと、王都に治める上納金の額がもう払えないそうなんでねぇ……

「それはもう諦めているのでいいのですが……問題は、これからです」
 と、ペレペ
「魔石に変わる何かを見つけないと、このララコンベがなくなってしまいます……」
 そう言い、寂しそうな表情をするペレペ。

 なんでも、魔石鉱脈が見つかるまでは、のんびりした耕作地だったそうなんだけど、魔石鉱脈が見つかったせいで、その耕作地を全部魔石採掘施設にしちゃったそうで、もう、今からでは戻せないんだそうだ……

 う~ん、なんとかしてあげたいのは山々だけど……こればっかりは……

 僕は、
 僕が役場の中で話をしている間中、建物の入り口で谷をスキャンしていたスアへと歩み寄っていきました。
「で、どう? 何かある?」
「……残念だけど、魔石も何も残ってない、わ……お湯くらい、しか」

……そっかぁ、魔石はやっぱないかぁ……しかもお湯ねぇ……お湯じゃあどうにも


 ん?……ちょっと待って……お湯? 


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