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店長と魔法使いの奥さまとサラマンダーの娘の休日 その4

 パラナミオとヤルメキスの2人は

 相変わらず、スアが出現させている空中に浮かんだ5m四方くらいの水の塊の中でキャイキャイはしゃいでいる。

 それを、目を細めて眺めている僕とスア。

「や~、可愛いでありますな、まさに絶好の酒の肴であります」
「これを肴にしないとバチが当たるキ」
「さぁ、まずは乾杯だぁ」
 とまぁ、とにかく飲みたいだけの、酔っ払い娘48どもは、
 イエロ・セーテン・ルアの3人を中心に、何十回目かの乾杯しながら、眺めてるわけで

 ここで僕は、コンビニおもてなし2号店と3号店のことを思い出した。

 今日は
 本来であれば、僕・スア・パラナミオの、家族3人で休日を過ごすつもりだったんだけど
 
 なんか、その横では目一杯の宴会が始まってるわけだし
 
 本店同様にお休みの、コンビニおもてなし2号店の面々も、ここに呼んであげたらどうか、と思った訳です。

 僕のその言葉に、スアは、ニッコリ微笑むと
「……あなたが、そうしたいのなら」
 そう言うと、僕の横に魔法陣を展開し、そこにコンビニおもてなし2号店への通路を作ってくれた。

 コンビニおもてなし2号店のあるブラコンベまでは、それなりに距離があるんだけど
 ホント、スアの魔法の力は、すごいな、と、感心しきりなわけです。

「でしょう!? 師匠はだから、すごいっていつもあたしがいってるれしょう~」
 と、すでに舌がまわらなくなり始めているブリリアンが、まるで自分のことのようにドヤ顔してるんだけど、自称スアの一番弟子さん、相変わらずこの話題になるとくいつくなぁ。

 と、妙な感動をしながらも、
 僕は魔法陣を通って、おもてなし2号店へ移動

 この2号店の店長シャルンエッセンスと、そのメイド・シルメール達は
 店の近くにある、彼女達のお屋敷に住んでいるはずなので、そこまで呼びに行かないと……

 って思ってたら
 なんか、僕が店の中に出現すると
 その周囲では、シャルンエッセンスをはじめとした、メイド達全員が店内にいたわけで……

 で
 シャルンエッセンス

 まず、いきなり出現した魔法陣にびっくりし
 次に、その中から現れた僕にびっくりし、
 そして、その僕が、水着に、パーカーをはおっただけの姿であったのに対し

「き、きゃ~~~~~~ぁ!? は、は、は、破廉恥ですわぁ!?
 乙女の前に、そんな柔肌をモロ出しにして現れるなんてぇ!」
 シャルンエッセンスは、そう言いながら、その顔を真っ赤にし、
 そんでもって、僕を指さしまくったかと思うと

 パタン

 と、その場に倒れ込んでしまったわけで……


◇しばらくお待ちください

 シャルンエッセンスを、店の奥にある応接間のソファに横にならせて、数分後
 ようやく目を覚ましたシャルンエッセンス。

 僕は、一応、水着の上にジャージをはいて、足の肌の露出を抑えた格好にしておいたんだけど

 ……っていうか、ハーフパンツとかはいてれば、あれぐらいの露出はあるだろうに、
 と、思っていると

「ないないない! 貴族階級ではありえませんことよ」
 そう言いながら、その顔を真っ赤にし、左右に顔を振っていくんだけど

 その横に控えていたメイドのシルメールは
「……お嬢様は、ちょっと箱入りといいますか……こっち方面にすっごく疎いんで……」
 そう言いながら、苦笑していったわけで

 まぁ、要は
 シャルンエッセンス的に、NGだったってことなんだろう、うん


 で、まぁ、ようやく落ちついたシャルンエッセンスに、
 休日の店に皆で集まって何をしていたんだい? って聞いて見ると、
「休みを利用して、店を掃除していましたのよ。
 毎日掃除はしておりますけど、周囲に1度は、皆で一斉に大掃除しておりますの」
 そう言って、ドヤ顔のシャルンエッセンス。
 そんなシャルンエッセンスの後方で、お辞儀をしていくメイド達。

 へぇ、そうなんだ
 そこまで自発的に頑張ってくれてたんだなぁ

 売り上げが順調に推移しているし
 店員が率先して店の掃除までこなしてくれている。

 うん、2号店もいい感じになってるようで、ホント、安堵しきりなわけです。

「ところで店長様、今日はどのようなご用件でございますの?」
 そう言い、怪訝そうな表情を浮かべるシャルンエッセンス。

 そんなシャルンエッセンスに、僕は
「本店の裏でさ、みんなで水遊びしながら宴会やってるんだけど、シャルンエッセンス達も一緒にどうかと思ってさ」
 そう、告げた。

 すると、シャルンエッセンス。

 なんか、僕を見つめながら、思考が停止してる……え? なんで!? 

「……あのですね」
 真っ白になってるシャルンエッセンスに困惑していると
 メイドのシルメールがおずおずと僕の耳元に口を寄せ
「……私の口からいうのもあれなんですけど……お嬢様は、とにかくお友達が少ないわけでして……」

 あぁ、まぁそうだろうねぇ
 以前の、あの、お~ほっほっほっほな性格じゃあ

「ですんで、貴族として招かれた晩餐会とか以外で、こうして個人的な遊びのお誘い受けたのって……産まれて始めてで、おそらく、何も考えられなくなっているんだと……」

 あぁ、そういうことか
 
 まぁ、身から出たさびというか、自業自得な面がぬぐい切れないとはいえ
 シャルンエッセンスも、あれこれ苦労してるんだなぁ、
 まぁ、身から出たさびというか、自業自得な面がぬぐい切れないんだけど

 そうこうしているウチに、
「……は!?」
 って、ようやく我に返ったシャルンエッセンスは

「い、い、い、いえね、お店の掃除が済みましたら、あちらこちらへお呼ばれしておりますので、何かと忙しくもあるのですが……」
 そういうシャルンエッセンス、
 その横では、メイド達が一斉に首を左右に振り「いえ、まったくありません」
 って、意思表示してますが、まぁ、それは本人にはつたえずに、と

「親愛なるといいますか
 いつもお世話になっているといいますか
 親愛なるといいますか
 本店の店長であるといいますか
 親愛なるといいますか……

 と、とにかくですね、タクラ様が、

 どうしても、と
 絶対に、と
 何を差し置いてでも、と
 
 この私をお求めなのであれば、このシャルンエッセンス、
 万全の体制を持ってはせ参じさせていただきますわ」

 なんか、シャルンエッセンス、
 顔を真っ赤にしながら立ち上がると
「この私に、今しばらくのお時間をおくんなまし!
 ただちに、準備を整えてまいりますわ!」
 そう言うとシャルンエッセンス、すごい勢いで店を飛び出して、屋敷へ走っていった。

 で、まつこと半刻……まぁ、およそ30分ってところ

「お、お、お、お待たせいたしましたでございますわぁ」
 屋敷から、息を切らせながら戻ってきたシャルンエッセンスは

 なんか、舞踏会にでも行くかのような、一張羅のドレスに身を包んで……

 って、
 シャルンエッセンス、話をちゃんと聞いてたかい?
 水遊びと宴会だよ?
 
「えぇ、ですから、そういう会におよばれしたのですから、そういう場にふさわしい格好を、と、思ったのでございますが……何かおかしかったでしょうか?」
 と、真顔で困惑しているシャルンエッセンス。

 あぁ
 これはあれか

 遊びにさそわれたことがないもんだから
 こういった、ざっくばらんな会に参加する格好がわかってないんだな……

 僕は、とりあえずシャルンエッセンス一行を、一度魔法陣の向こうへ連れて行った。

 すると
「あん? なんかすごい、ドレスの女がやってきましたね?」
 すでに、へべれけになっているブリリアンが、シャルンエッセンスの姿に気づき、そその場でケタケタ笑い始めた。

 そんなブリリアンを筆頭に

 その河原では、

 水辺で遊んでいるパラナミオとヤルメキス、それにスア
 河原で、飲みまくっている、イエロ・セーテン・ルアを筆頭とした酔っ払い娘48の面々

 この場に居合わせている全員が、水着姿なわけで

 それを見たシャルンエッセンス
 その顔を真っ赤にしたまま、その場で、しばし固まったかと思うと

「ふ、ふ、ふ、不謹慎ですわぁ!?
 このような、人前で、人前で、肌を露出する何てぇ!?」
 両頬を抑え、顔を真っ赤にするシャルンエッセンス

 すると
「む? 何を言っているでゴザルか?」
「ここは、皆、袖振り合うも、な、宴会キ」
「それに、男はタクラ1人だし、あとは全員女なんだぜ? 別に恥ずかしがらなくてもさぁ」
 と、まぁ、
 イエロ・セーテン・ルアが言うんだけど

 それを受けたシャルンエッセンス
「その1人が問題なのではないですかぁ!?」
 そう言い
 僕を見
 視線が合った途端に

 ボフン

 って、なんか、爆発音が聞こえたんじゃないかってほど、その顔を真っ赤にしたかと思うと、
 なんか慌てて魔法陣くぐって、コンビニおもてなし2号店へ逃げ帰ろうとするシャルンエッセンス

 そんなシャルンエッセンスを

「まぁまぁ、せっかく来られたのでゴザル」
「水着なら貸してあげるキ」
「さぁさぁ、お着替えはこちらだぜ~」
 イエロ・セーテン・ルアの3人、シャルンエッセンスを捕縛すると、なんか頭上に抱え上げて、コンビニおもてなし1号店の2階、居住スペースへと連れ込んでいき

 まつこと10分

 強制的に、水色のビキニ姿に着替えさせられたシャルンエッセンスが、
 連れて行かれた時と同様に、3人に抱え上げられながら連行されてきたわけで
「ご、後生ですから、な、何か着させてくださいませぇ!?」
 そう言いながら、体を丸くし、膝を抱えてるシャルンエッセンス。

 なんか、
 あまりにも……なので、とりあえず僕が羽織っていたパーカーをシャルンエッセンスに手渡すと

 シャルンエッセンス
 それを受け取りつつ、僕の姿を着て、また固まった。

 そんなシャルンエッセンスの視線の先の僕は
 パーカーを脱いだせいで、水着1枚なわけなんだけど

「き、き、きぃやああああああああああああああああああああああ」
 その直後に、シャルンエッセンスの再度の悲鳴が響きわたったわけで……

 ちなみに
 この時、シルメール達メイド陣は
 とっくに水着に着替えて、飲み会に参戦していたわけで……

しおり