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店長と魔法使いの奥さまとサラマンダーの娘の休日 序章

 最終日の営業を終え、スアの転移魔法でガタコンベに戻った僕は
 一緒に戻ってきたみんなに向かって
「みんなお疲れ様、明日はゆっくり休んでね」
 そう言葉をかけ、その場で解散した。
 まぁ、解散っていっても、みんなコンビニおもてなしの2階にある居住スペースに住んでいるから、ぞろぞろと店の2階へ上がっていくだけなのだけどね。

 ちなみに
 明日は休日で、コンビニおもてなし本店もお休みなので、僕も久々にゆっくりしたいと思ったわけなのだけど、そんなことを思っている僕に
「パパ、お疲れさまでした!」
 って、パラナミオが嬉しそうな笑顔で駆け寄ってくる。
 その姿は、バトコンベ大武闘大会期間中、すっかりおなじみになった白のワンピース。
 ちなみにこれ、スアとおそろいなんだよね。

 ……って、スアさん、なんでいつもの魔法使いローブに尖り帽子姿に戻っているのかね?
 って、僕がジト目を向けた先では、スアが
「……このカガク……実に興味深い……の」
 そういいながら、一心不乱にICレコーダーをチェックし続けているわけで……なんか、またすぐ本書いちゃいそうだな
「魔法録音機とカガクの融合によるその機能改善案」とかなんとか

 で、視線を パラナミオに戻す僕。

 バトコンベの大武闘大会の期間中、パラナミオは本当によくお手伝いしてくれました。
 3日目からは学校にもしっかり行き
 お昼に学校が済んで帰宅したら、すぐにスアに転移魔法で連れてきてもらい、出店のお手伝いを率先してやってくれたわけです。

「パラナミオ、この期間中は本当によく頑張ってくれたね、パパ、すごく助かったよ」
 そう良いながらパラナミオの頭を撫でる僕。
「パラナミオ、パパのお役に立ったですか? だったらすごくうれしいです」
 パラナミオは、僕に頭を撫でられながら、なんかすごく嬉しそうに微笑んでます。


 唐突ですが、ここでパラナミオの豆情報
 本来の姿がサラマンダーっていう龍であるパラナミオは
 サラマンダーなら誰もが使用可能な『闇召喚魔法』を当然使えるわけです。
 この大会期間に会場で偶然出会った、成人しているサラマンダー、サラさんの助言
「毎日練習することをお勧めする。それくらいの年齢から練習していれば、かなりの成長が見込まれる」
 それを律儀に守っているパラナミオは
 時間があれば、覚え立ての召喚魔法を使用して骨人間(スケルトン)を作成しています。

 で

 なんでこんなパラナミオの豆知識をここでお披露目したかというとですね。

 なんか僕の目の前で頭をなでられて嬉しそうに微笑んでいるパラナミオの横に

『次は僕の番かな?』
『早く撫でてもらいたいわ』
*田倉によるアテレコ演出*

 みたいな感じで、
 自分の頭を僕に向かって突き出している骨人間(スケルトン)達がズラッと並んでいるわけです、はい。


 まぁ、
 撫でてやりましたけどね……全員


 で、
「パラナミオが頑張ってくれたおかげで、パパ、すごく助かったからさ、
 そのご褒美に、明日はどこかパラナミオの行きたい場所へ連れてってあげよう」
 骨人間の頭を撫で終え、パラナミオの前に戻った僕は、そうパラナミオに伝えていくと、
「本当ですか! パラナミオ嬉しいです!」
 そう言いながらパラナミオ、僕に抱きついてきて、ボロボロ涙を流し始めて……

 うん
 すっごい過剰というか、行き過ぎた反応なんだけど、
 これもパラナミオの生い立ちを考えたら……

 というのも、僕とスアの養子になる前の彼女は
 赤子の頃に山賊に誘拐され、その後、この年齢になるまで、奴隷扱いされ続けていたんだよね……

 僕は、そんなパラナミオをギュッと抱きしめた。
 すると
 スアもその横に寄ってきて、僕と一緒にパラナミオをギュッと抱きしめた。
 ……ICレコーダーは、しっかりその手に握られたままです、はい。


 で、まぁ、
 ここまでならよくある仲良し親子の感動的な光景なんですが

 そんな僕達3人の周囲を
 パラナミオが召喚している骨人間達がわらわらと取り囲むようにしながら抱きしめてくれて……

 って、これ
 知らない人が見たら、

「うわ!? タクラ達が骨人間の集団に襲われてる!? まってろ! 今助けてやる!」
 確実にこうなるよね、うん。

 あ~、ルア、
 というわけで、この骨人間達は敵じゃないというか、パラナミオのお友達みたいなもんなんで、傷つけたら、多分、パラナミオ、泣いちゃうんで勘弁してやってください。

 そう、僕が声をかけると
 すでに宙に舞い上がり、その手に剣を構えていたルアは
「あわわ、そ、そうだったのか!?」
 慌てふためきながら

 スケルトンの隙間に落下

 ……うん、なんかごめん


 ってか、ルア
 いきなり店の裏にやってきて、どうかしたのかい?
「あぁ、ごめんごめん。
 これを商店街組合のエレエから、タクラ旦那に渡すよう頼まれてさ」
 そう言いながら、ルアは僕に茶色い封筒を手渡してきました。

 開けてみるとそこには
『外部都市における行事参加報告書』
 って書かれた紙が数枚
「それってさ、余所の都市でどんな行事が行われてるのかっていう情報を
 その行事に参加した人に報告してもらって、このガタコンベの運営に役立てようってやってんだよ」
 ルアの説明を聞き、僕は、へぇって感心しきり。


 ちなみに
 この辺境都市ガタコンベ
 かつてはかなりの数の人種が住み、亜人も住んでいたため辺境都市と称されていますが
 今の街の規模としては、ギリギリ辺境小都市ってくらいらしい。

 んで、
 本来ならその手続きを、領主がしなきゃいけないんだけど

 この都市には、領主がいません

 バトコンベの大武闘大会で見かけた
 辺境都市バトコンベの領主ゲルターさんや
 ……あのおじさん、なんのかんのでよく出店に通ってくれたなぁ
 辺境都市リバティの領主ゴセージさん
 ……あれ? でもあの人、奥さんみたいなエルフの人から『サファテ』って呼ばれてたような気がしないでもないけど……んでもって、その名前って、僕の元いた世界で言うと、某福岡の野球チームに在籍していた抑えピッチャーの名前だよね、どっちも……まぁ、偶然だろうけど

 ん?
 なんで僕の後ろのスアの機嫌が悪くなったんだ?
 ……ひょっとして、ゴセージさんの奥さんみたいなエルフの人?
 確かに美人で背が高くて、なんか色々すごい人だったけどさ

 僕は、スアの事がもっと大好きですけど?

 そう言うと、スア
 その両手の先に展開させていた、おどろおどろしい雰囲気を醸し出していた魔法陣を瞬時に消し
 その顔を真っ赤にしながら、体をクネクネさせていきます……ホント、我が妻ながら、何、この、可愛い生き物は!? ってなわけです。


 話を戻しますと、
 このガタコンベにも、かつては領主がいたそうなんだけど
 その人が亡くなって以後、その後任として適切な人材がいないんだとか

 なんでも、この世界の王都では
『人種至上主義』とかいうのが蔓延ってて、
 辺境都市の領主は人種でないといけないんだとか。

 で、もって、
 貴族階級って条件もつくわけです。

 ただ、このガタコンベって
 住んでいる僕だから言いますけど、すっごいド田舎なんですよね。
 そんなに目を見張るような作業もなく
 人口も少なく、しかもそのほとんど全てが亜人なわけで

 そんな都市に赴任しようという奇特な方がいるはずもなく……

 結果として、
 辺境都市ガタコンベは、

 手続きする領主がいないもんだから、辺境都市に格下げされることもなく
 ド田舎過ぎるために、新しい領主が派遣されてくることもなく

 その都市運営を、商店街組合に実質的に丸投げした状態のまま、今を迎えているわけです、はい


 まぁ、実際問題として
 このガタコンベに住んでる人種って言うと、僕と、スアの弟子を自称しているブリリアンの2人くらいしか思いあたらないわけです。
 
 目の前のルアにしても猫人だし、
 ヤルメキスは蛙人だし、
 組合のみんなは、揃って蟻人だしね

 っとまぁ、そんなことを考えながら
「じゃ、アンケートはまた書いてから組合に持って行っておくよ」
 ってルアに告げた僕は、

 改めてパラナミオに向き直って
「さぁ、どこに行こうか?」
 って、満面の笑顔で聞いていったわけです。

 そう言われたパラナミオ
 満面の笑顔で、一生懸命考えているんだけど
 なんかその仕草がまたすっごく可愛いんだよね

 で
 ついまた抱きしめちゃう僕

 で
 そこに、一緒に抱きつくスア

 で
 さらに、その周囲に抱きついていく骨人間達……


「うわ!? タクラ殿達が骨人間の集団に襲われている! 今助けますぞ!」
 って、
 ゴルアってば、なんでこのタイミングで出現するかね!?

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