第2話 出会い2
「ん~、まだ足りなかったかな?」
教室に入る直前、胃袋の一部に極わずかに空く、空白が気になった。
めっちゃ難しい言い回しになったが、ようはまだ若干お腹が空いてる感じがしたのだ。
「タロー、そんなに食べたら満腹丸になって次の時間おねんねしちゃうよ~? いいの?」
「何言ってんだよ、俺が昼休みの次の時間、起きてた事があったか?」
「……うん、ないね!」
顔パスだ。
俺は教室に背を向け、購買部に直行した。
☆
「うわ、やっべ! 遅刻遅刻~☆」
テンプレメインヒロイン如く、100円のピーナッツバターが中に入っているコッペパンを頬張り、教室に向かって階段を駆け上がっていた。
けど、本当にふざけてる場合じゃない。
結構マジで時間がやばい。
なんなら、もう授業自体は始まっている。
そして、今日に限って俺が一番嫌い嫌われている先生なんだから、間違いなく殺される。
……いや待て、ここであえて怒られないように保健室に行ってサボっちゃえば説教は回避されるのでは……!?
ダメだ、もう何回もやって毎回怒られている。
俺は階段ダッシュを続けた。
ワンちゃん運動部に入った方がいいレベル。
そして、自分たちの教室の階に到着。
ここからラストスパートのダッシュ!!
と、行きたいところだが、やっぱり廊下を走るのは良心が痛む優しい男の子だから歩くことにした。
つい先ほどまで階段を走っていたやつである。
「ちょっと退いてーーーー!!」
「ふぁ!?!?!?」
歩いていたはずの俺だったが、女子トイレから走って出て来た金髪ロングに俺はぶつかって(まって、今いい匂いした)突き飛ばされた。
ついでにコッペパンがどっかに飛んでった。
「あんた!! なにボーっと歩いてるのよ!! 授業始まってるんだから急ぎなさいよ!! バカじゃないの!!」
そして、なぜか歩いていた事を説教される始末である。
廊下は元気に走りましょうってか。
「いやアンタ、トイレに出すものを出すために急ぐならまだしも、終わってから走る奴なんて初めてみたぞ、てか俺何も悪くねーし」
「は~!? なにアンタが私に口答えしてるのよ……、って、こんな奴に構ってる場合じゃないんだった!」
そして、俺は倒されたままごめんも言われずその場を去って行った。
そんな金髪美女(笑)を俺は知っている。一方的に。
てかそもそも、この学校で彼女の事を知らない人などいるのかというレベルで彼女は有名人だ。
それもそのはず、横山 香菜(よこやま かな)は金髪美女で目立たないわけがない。
しかもそこに、どこぞのお偉いさんの娘でお金持ち。
挙句にスポーツ万能で陽キャ中の陽キャ、パリピ中のパリピだ。絶対ガバガバ。
天は俺という人間より彼女というトイレ女にハイスペックを与えてしまったのだ。
って言って、ボヤクのは何か惨めになるからやめよう。
だって……
これから俺に待つのは、鉄拳制裁卍
(そしてどこかに消えたコッペパン)