第1話 出会い1
どんなに難しい事をやるよりも、女子の更衣室をこっそり覗くスリリングよりも、また、先生が一生懸命築き上げた黒板の文字を一瞬で消す気持ち良さよりも、俺は屋上の一番隅っこで一人ボケーッと雲でも見ながら飲む甘めの雪印コーヒーが最高の癒しであり至福である。
けど、たまに一人だと、どうしても物足りなくなる時もある。
一人だと寂しい。
よし、アイツを呼ぼう。
一人でご飯を食べるより、複数人で食べた方が美味しいって言うしな。
そして、しばらくボケッと何を考えるでもなく待ってたら、屋上の扉が開いた。
「お、屋上に私を呼ぶってことはつまり……その……あれ!?」
「そうだ、あれだ」
「わ、私はまだ心の準備が……!!」
「弁当さえあれば心の準備なんて必要ないだろ、何言ってんの黛(まゆ)」
「え!? お弁当を使ったプレイがご所望ですか!?」
「ちょっと何言ってんのか分からん」
話が噛み合わない辺りで紹介します。コイツが俺の唯一の女友達であり、アホでバカで変態の花畑黛さんです。
「一緒にお弁当を食べたいって話ですが」
「あっ、あー、はいはい、なるほど」
まゆは小さい体とデカい胸を揺らし、ちょこちょこと俺のところまで走って来ると、俺の隣幅およそ0センチメートルの距離にちょこんと座った。
その時、セミロングの髪から女の子特有のいい匂いがふわりと香る。
これだけでご飯3杯は行ける気がした、てか行きたい。
「タローはもう食べちゃったの?」
「俺はもう食べちゃったよ」
「え、なんで私を呼んだの!?」
「食べて無さそうかなーと思って」
「私ももう食べちゃったよ!?」
なんて事になっちゃったから、急遽変更。食後のゆったりタイム。
「なあ、黛」
「なに、タロー」
「俺達のこれって青春じゃね」
「んー、まあ見方によってはそうかもしれないねー」
「彼女もいない俺と、彼氏のいないお前とだからこそ、ここまで青春っぽいこと出来るんだろうなぁ」
「……ん~」
「あれ、どうした?」
「なんでも無いもんっだ」
少し膨れっ面な顔をし出した黛だったが、また直ぐにいつもの笑顔に戻った。
「なんてね、冗談だよ! 私達だからできるんだよ!」
「そうだよな!」
とか何とか話しているうちに、チャイムが学校全体に鳴り響き、俺達は教室へと戻って行くのだった。