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コンビニごんじゃらす その1


 パラナミオの体験入学は1週間。
 
 シングリランの教会学校は幼少部教育なので、読み書きと計算の授業が毎日1つづつ
 昼には終わって下校になる。

 最初の頃は、緊張もあってか、何をするにしても困惑しきりだったパラナミオだったものの、
 徐々に、それにも慣れ
 ……っていうか、やっぱ後ろに僕がいたのが大きかったみたいで
 事あるごとに、チラチラ後ろを見てたものの、まぁそれを差し引いても、週末頃には、積極的に、先生の質問に手をあげたりもしてたんだけど
「……あの、パパにいいところを見せようと思って……」

 ……やばい……感動で僕、泣きそう……

 そんなこんなで1週間。

 週末の授業を終え、昼前に手を繋いで帰宅しながら
「どうする? パラナミオ、通いたいかい?」
 そう尋ねたんだけど、それにパラナミオは
「はい、通います」
 って元気な返事。

 学校が気に入ったのかな? って思ったら

「いっぱい勉強して、パパのお店のお手伝いをもっともっと出来るようになりたいです」

 って

 やばい
 今、マジ涙でた。

 その夜は、みんなでパラナミオの学校入学記念で、ちょっといいお肉を焼いたんだけど、
「お、なんかお祝いかい?」
 って、早速向かいのルアが、いい酒を持ってやってきた。
 こういう時をはずさないのって、さすがだよな、と、感心しきりだ。
「さぁ、せっかくでござる、皆で楽しく祝うでござる」
 すぐにイエロも同調し、
「祝い酒キ、飲まなきゃバチがあたるキ」
 そこに、最近イエロとのコンビが板についてきているセーテンも加わって

 場所を、いつもの店の裏の河原に移行し、どんちゃん騒ぎの開始です。

 気がつけば、
 コンビニおもてなしのヤルメキスや、猿人4人娘、
 それに、近隣の商店街のみんなや、組合の蟻人エレエ達まで、しっかり顔を見せてます。
「タクラの店の宴会がないと、活力ないないですよ」
 そう言いながら、みんなワイワイ盛り上がってくれる。
 中盤以降に参戦してきた奴らは、この会が、そもそもパラナミオの学校入学記念って知らずに参加してて
「あ? スアさんが、アレを迎えた記念じゃないのか?」
 なんて言って、スアのアナザーボディにぼこぼこにされる奴まで出たりして。

 で、
 パラナミオ本人は、いつものように、夕飯を終えてしばらくしたら、目がトロンとしてきたので、そのまま部屋に戻らせて、スアと一緒に先に寝て貰いました。

 で

 僕は、一応夜半手前まで参加。

 さすがに日付変わってまで参加すると翌朝に応えるので、
 ここで僕は退散し、あとはイエロに任せて、僕も退散。

 コンビニおもてなしの風呂で、軽くシャワーを浴びてスアの巨木の家へと移動すると、
 スアに抱きついて眠っているパラナミオの姿が。
 で
 スアもそれにつられたみたいで、スヤスヤと気持ちよさそうに寝息をたててました。

 僕は、2人を起こさないように、そっとベッドに滑り込んで、
 2人の寝顔を見つめながら、のんびり眠りについていきました。

◇◇

 翌週、
「パパママ、行ってきます!」
 自分1人での登校が始まったパラナミオは、朝から元気な声をあげて、ペコリとお辞儀をして登校していきました。
 僕とスアは、それを巨木の家の玄関でお見送り。
 パラナミオは、何度も振り向きながら、何度も手を振りながら登校していきました。

 ……こりゃ、帰りは走って帰ってくるな

 僕は、内心そう思いながら、
 ヤルメキスに、店に出していない焼き菓子を作ってもらおう、と、思ったりしていたわけです。

 で

 この日から、パラナミオの引率もなくなった僕は
 店の接客にも復帰。

「あれ? 店長、生きてたんだ。1週間見なかったから心配したんだよ」
 コンビニおもてなしは、
 常連客というか、リピーターがすごく多いので、レジ作業をしてると、そんな感じで会う人会う人みんなに気軽に声をかけられます。
 雑談に応じつつ、

 かつ

 手を止めず、生産作業は迅速に

 これ、大事です。

 そんな感じで、みんなの対応をしていると
 そんな中で、おもしろい話を聞きました。

「そういえば、先週、辺境都市ブラコンベに、コンビニがオープンしてたよ」
 って

 は? コンビニが?

「そうそう、『コンビニごんじゃらす』って看板出てたな。
 あれって、この店となんか関係あるのかい?」
 
 いえいえ、
 心当たりが全くない僕は、苦笑しながら首を左右に振ったわけです。

 で、まぁ、あれこれ思い返してみると
 ここ2,3週間くらいかな
 店の中をすごくキョロキョロ見て回ってる数人のグループがいたのを思い出した。
 毎日のように、店内を見回しては、一番安いパンか、ホットデリカを買って帰ってたな。

 僕は、店の奥に戻ると、防犯カメラの映像を確認してみた。

 あ、
 防犯カメラは、まだ生きてます。
 この店が太陽光発電を導入していたおかげです……ホント、清水の舞台から飛び降りる気持ちで導入を決めた、あのときの僕を褒めてやりたい。

 で
 その防犯カメラの映像を見返してみると
 しっかり写ってました、
 日によってメンバーに変動はあるんだけど、
 1人、金髪ロングの女性が常に交じってて、最低でも3人、多いときは5人で来店してる。
 
 コンビニおもてなしは、この世界にない店舗の作りをしているので
 はじめてやってきたお客さんが、物珍しそうに店内を見回すのはよくあることなんだけど
 この金髪ロングの女の子の集団は、それにしても、毎回小一時間は店内を見回してたので、余計に記憶にあったんだよな。

 まぁ
 この子かどうかは不明だけど

 この世界で「コンビニ」の名前を使ってるってことは、まぁ、僕のこの店をぱくったんだろうな、って想像はつく。

 ただ
 僕のように、この世界に転移してきた別のコンビニの……なんて思ってもみたんだけど、
 少なくとも、僕がもといた世界に、「ごんじゃらす」なんてチェーン店はなかったわけだし……

 どっちにしても、辺境都市ブラコンベとなると、行くのに少し時間がかかるし、
 それに、別に何か迷惑を被っているわけでもないので、この件は放置することにしました。

 この件は、その後もちらほらとお客さんから話題にされることがあったんだけど
 ……なんていうのかな
 日を追うごとに、悪評が増えている。

 曰く
 ・愛想が悪い
 ・接客がなっていない
 ・品揃えが悪い
 ・弁当やパンがまずい
 
 などなど……

 ん~……
 こりゃ、抗議しとかないと、コンビニって名前に傷がついちゃうか?
 とも思ったんだけど、

「あんまりひどかったからさ
『この店はガタコンベにあるコンビニおもてなしとは無関係だぞ~』
 って、みんなに教えといたから」
 って笑ってくれる常連さんも何人か。

 あはは
 それって立派な営業妨害なんだけど、
 聞く話聞く話が、悪評だらけになってきてるので、ここはあえてご厚意に甘えさせていただこう。


 そんなこんなで、週末です。
 パラナミオの学校も金曜まで
 コンビニおもてなしは、土曜昼まで営業して、日曜は休みの営業スタイルになっているので、
 土曜のこの日は、昼まで営業。
 昼まで、と、言っても、
 お昼のお弁当を買いにくるお客さんが一段落する、午後2時頃まで営業します。

 その後、
 閉店してから店内の清掃。
 特に、調理場はしっかり掃除をします。

 この世界にも、ゴキブリみたいなのがいますので
 そいつに蔓延られたらかなわないため、掃除がしっかりきっちりします。
 まぁ
 掃除を済ませた後、スアの害獣予防魔法を店全体にかけてもらうので、対策的にはしっかり出来てるんだけどね。

 そして閉店作業を終えてから、僕・スア・パラナミオの3人は、おもてなし1号にのっていつもの別荘へ。
 
 最近は、スアが慣れたおかげで
 家から即、転移魔法で現地に行くこのも出来るんだけど、
 パラナミオがおもてなし1号でのドライブを気に入っているので、途中まではこれで行くことにしています。

「ご主人様、奥方様、お嬢様、いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
 別荘である屋敷につくと、エルフの形をした木人形・エレが、いつものようにペコリとお辞儀して挨拶してくれました。
 木人形のため顔にほとんど表情がないエレだけど、体の中央部あたりから響いてくるような声が、心なしか嬉しそうなんだよね。

 で
 エレに案内してもらって屋敷の周囲を見て回ってびっくりしたのが
 スアが植えたプラントの苗木がスゴイ勢いで成長してたんです。
 火山地帯のため、周囲がほとんど焼け野原状態の中、この屋敷の周囲だけ、うっそうと緑になってて、目立つこと目立つこと。
 スアがプラントの木を確認したところ
「来週……来た時……には、増殖機能……も使えそう……だよ?」
 とのことだったので、増やしたい物を見繕っておかないとな、って思った次第です。

 エレは
 僕らがいない間
 このプラントの木の世話や、屋敷の掃除、週末に訪れる僕らのための食材集めなどを頑張ってくれていました。
 
 おかげで、この週末も
 家族3人で楽しく過ごせたわけです、はい。

 そんなこんなで、最近恒例の楽しい週末を終え
 日曜の夕方、スアの転移魔法で帰宅すると、
「あぁ、タクラさん、お待ちしてたんですよ」
 と、困惑気味なブリリアン。
 なんでも、「この店の店長に会わせろ」って、すごい剣幕で女が来てるとか……
 ブリリアンが、僕は別荘に遊びにいっていると伝えると一度は帰ったそうなんだけど
 先ほどまた店の前にやってきて、先ほどから待っているのだとか。

 はて?
 そんな急ぎの来客に心当たるがないんだけどな……

 僕は、少し心配顔のスアとパラナミオを巨木の家に戻らせて、
 ブリリアンと2人で店の前へと移動。
 途中
「拙者もお供するでござる」
 と、狩りから帰ったばかりのイエロも加わってくれて、3人で店の前へと移動していくと

「あなたがこの店の店長ですわね!」
 店の前で、腕組みしてる金髪の女が、なんか高飛車気味に言ってきた。

 ……あれ、なんかこの女の人、見覚えがあるぞ?

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