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じぇらしぃのぷぅ!

 組合の皆が猿人盗賊団の面々を集め聞き取り調査を行った。

 曰く
 ・どんな仕事をしたいか?
 ・どんな仕事なら出来るか?

 要は、このまま働きもせずに拘留し続けるわけにも行かないので、とっとと働けお前らってことです。

 そこで僕はふと思い立ち
 盗賊団の中に料理が出来る者がいないかどうか聞いてみた。
 すると

「盗賊団でみんなの料理を作っていましたキ……」
 って、4人の猿人の女の子達が名乗り出た。

 僕は組合のエレエにお願いして、この4人をコンビニおもてなしで引き取ることにした。

 というのも
 今のコンビニおもてなしは、弁当やパンが安定して供給出来る主力商品になっている。
 その入れ物問題が、ルアのアルミもどきのおかげで解決しつつあるものの、肝心の料理を作る人が僕一人だったわけなので……

 僕は、早速おもてなしに連れてきた猿人の女の子達に、店で販売している弁当を作って貰ってみた。
 
「な、なんなんですキ!? この台所、見たことのない調理器具がいっぱいキ!?」
 とまぁ、IHだの、レンジだのオーブンだのといったカガクの皆様の前に困惑しきりだった4人なんだけど、やっぱ料理をしていただけあって飲み込みが早く、1時間も指導すると、僕とそう大差ない弁当を作ることが出来るようになったわけで。

 ……えっと……僕の技量って、その程度だったのね……って、少し傷ついたりもしたのですが

 このおかげで、弁当の販売数の大幅に増やせる目処がついた。

 とはいえ
 弁当だけに注力するわけにはいかないわけです。

 店で売る品物がとにかく枯渇しているわけだしね。


 そんな中
 ここのところ、市場に早く出向いて野菜をあれこれチェックしていたところ、中にジャガイモに似た触感の野菜を発見した……なんでもジャルガイモっていうらしい……おいおい……

 早速、これを使ってフライドポテトとポテトチップス、ハッシュドポテトの3品を試作してみたところ、
「うむ! これはうまいですぞ!」
 店の用心棒兼店内清掃要員の鬼人(オーガピープル)・イエロをはじめ、皆にも大好評だった。
 早速、猿人料理人のみんなにも、この作り方を覚えてもらった。
 これを店で売ろうとした場合、それを入れるための容器が当然必用になるわけだけど、これは当面問題ない。
 何しろ、コンビニおもてなしの不良在庫の中に、
 店頭作成した、フライドポテト・ポテトチップス・ハッシュドポテトを詰めて売るための容器が「10年消費し続けてもなくならないんじゃね?」ってくらいに溢れかえっているわけです……えぇ。
 大量に作っておけば、コストが安くつくって思ったわけだけど、物には限度があるよね、実際問題。

 あのときは、過去の僕を罵倒していた僕
 今は、そんな過去の僕を罵倒していた僕に言ってやりたい

 なんとかなる、と。

 こうして、スナック菓子的なホットデリカも店頭に並べられるようになった。
 これ、かなり好評で、弁当購入のついでに買っていく人が相次いでいます。

 この後、このホットデリカにコロッケも追加した。


 そんな中
 エルフの魔法使い・スアが、店の裏に引っ越しさせた自宅研究室の中で、あれこれ薬剤を作ってもいたんだけど

 塗り薬
 解毒薬
 麻痺治療薬
 風邪薬
 滋養強壮剤

 とまぁ、多種多様な薬や飲み薬的な品々を開発したわけで。
 販売するための小瓶は、商店街のガラス・小瓶屋で普通に買えるので、それを使用。

 早速店頭で販売してみたところ、これがまた売れた売れた。
 なんでも、魔法使いが作成した薬って、こういった地方都市では滅多に手に入らない貴重品なんだとか。

 なんかもう、僕の方がびっくりだよ。

 一般のお客さん以外にも冒険者や旅の隊商の人達にも大人気となっており、相当数のまとめ買い注文まで承っている、これを聞いたスアもなんだかうれしそうだったので何よりだ。
 ちなみに、こういった薬剤の販売に許可がいるんじゃないのかなって、少し心配になって組合のエレエに確認したところ、薬学の博士号を持ってる魔法使いが作成した薬の販売なら問題ないとのこと。
 早速スアに確認したところ、なんか研究室の一角にちゃんと飾ってありました……

 スアさん、これ『魔法学教員免許状』って書いてありますけど?
 それを聞いてスア、なんかあちこちごそごそし始めて
「……どこか……に、ある……と、思う」
 って、おい!?

 ちなみに、鍋敷き代わりになってた書類の束の中から無事発見されました……何カ所か変なシミがついてるけどね。


 こうして、

 弁当の作成量の増加
 ホットデリカの新発売
 薬類の新販売

 と

 一時壊滅的だったコンビニおもてなしの品揃えが、ようやく改善されはじめたわけで、僕も安堵しきりなわけで。

 ちなみに
 新たに面倒を見ることになった猿人盗賊団の女の子4人は、不良在庫がなくなって、ようやく使用可能になった空き室2つを2人づつで使ってもらうことにした。
 4人を部屋に案内したら
「こ、こ、こ、こんな綺麗な部屋、ホントに使っていいんですキ?」
 って、すごく恐縮されてしまった。

 聞けば、
 猿人達は、野蛮で粗暴と言うレッテルを貼られていて、辺境都市でもなかなか街中では暮らせないのだとか。
 そのため、4人も産まれてから今までずっと洞窟暮らしだったそうだ。

 なんですか、この涙腺をぶん殴るお話は……

 ちなみに
 4人は私服も、動物の毛皮を加工した物しか持っていなかったため、あとで一緒に買いに行った。
 商店街の服屋に入ったみんな、一様に感動してたのは言うまでも無く。
「これがいいキ」
 って、4人が持ってくる服も、どれも実用的で、リーズナブルな物ばかり。

 あぁ
 元の世界で、貢君属性だった時代 - 黒歴史 - の僕が、感涙流しているよ……

 で、まぁ
 そんな感じで4人に服を買ってあげて帰宅すると、そんな僕をスアが待ち構えていた。

 スア、なんか腕組みしたまま、その頬をプゥって膨らませてる。

「スア、どうかしたのかい?」
 って尋ねた僕を、スア、なんか手を引っ掴むと家の外へと連れ出していく。
 ちょっとどこ行くの? って思ったら、ついさっき僕が4人を連れてきたばかりの服屋へと入っていく。

 ってか、おい、大丈夫なのか? 対人恐怖症!?

 案の定、店に入ったスア、プルプル震えて固まってんだけど
 僕の腕を掴んだスアは
「……私にも……服……選んで」
 って……
 
 とにかく、スアにあまり無理はさせられないので、スアの体のサイズをだいたいで見当付けて店の中を物色。
 ちょっとワンピースっぽいダボッと着れるタイプの服を色違いで3着チョイスした。
「これでどう?」
 って確認する僕に、コクコクと頷くスア。
 
 やっぱ、辛そうなので、急いで会計済ませた僕は、スアを抱きかかえるようにして帰宅した。


 これてアレなのかな
 僕が猿人の女の子4人に服を買ってあげた事に、スアが嫉妬した?

 ……いや、ないな

 自重しろ田倉良一
 お前にそんなモテ期が来るわけがなかろう?
 

 そんな感じで自分を納得させた僕だったんだけど、
 その夜
「……どう……かな?」
 買ってあげたばかりの服を着たスアが、僕の部屋を尋ねてきた。

 っていうか
 ちょっとマジ驚いた。

 すごく適当に選んだ服だったんだけど、スアにすごく似合ってる。
 思わず
「いや……すごく似合ってる……天使みたいだ」
 そう言った僕。

 スア、なんか真っ赤になってうつむきながらも
「……ありがとう……リョウイチ」
 そう言って、自分の家へと戻っていった。

 なんかそれにすごい違和感を感じた僕。
 その違和感が

 タクラ じゃなく、 リョウイチ と、はじめて下の名前で呼ばれたからだと気がついたのは、その後お風呂に入っていた時だったわけで……
「ダーリン!? 今日こそお背中流しますキ!」
 って、どこからともなく乱入してきたセーテン。

 お前、いろいろ台無しだよ! 空気読めよ!

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