翡翠の合わせ鏡
試しに。姫は、旅商人から貰った
更紗眼鏡の筒をコジ開け、
翡翠や貝や金銀を、入れてみる。
陽の光や、蝋燭の炎を受け、
筒穴の窓《なか》に揺らめく色模様は、色彩は。
一見、乱雑なようでいて、合わせ鏡の規則に沿って、映った。
あの旅商人のように。
その頃 ――
翡翠絵の噂を聞いた旅商人は。
姫から貰った翡翠石を手に広げ、眺める。
「翡翠の国の姫様は、元気だろうか?」
と、巡らせながら。
足早に、糸魚川を目指していた。
旅商人の想いは、翡翠色の風に乗り。
姫へと向かって、吹いた。