石の御相手
石は... 石のまま、其処《そこ》に在る。
のが、ありがたい。
あるがままで、変わらない。
人の心は、遷《うつ》り、変わって。何処かへ行ってしまう。
他者の心は、特に。
いくら自分が、
誰かに対し、頑張った所で。
報われない事もある。
相手だけを責めたい刻もある。
だが、石は石のまま、変わらない。
想うような色を創れなかったり、
紙の相性に合わせられず、色が上手く紙に乗らなければ、
石が悪いのではなく。調合や配合や画法が悪く、
自分が悪い。
石を相手にしていると、
責任の所在がハッキリしていて、心地好い。
誰を責める立てることも無く、恨むことも無い。
心おきなく、手早く。次へと進める。
次?