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強欲の味

そういえば ――

昔、幼い姫が、石の種を植え、育てだした頃。
周囲は、大笑いの種にし、誰も信じていなかった、のに。

一儲けへの企てか。足掛かりか。
コッソリ、翡翠石を植え始める者も出る始末であった。

儲け話や、儲けの神髄、カラクリなどは、
他人には教えないものである。此度も同様。

皆、翡翠を育てるコトは巧妙に隠しつつ。
我先にと、植木鉢を求める者があらわれ。
飛び込みの客が、増えた。

「植木鉢、あるかい?」
「えぇ。何をお育てで?」
「チョイとね... ツマらねぇシロウト遊びの入り用ってヤツで...
 そうさなぁ... まず大きいに越したこたぁねぇやね」

などといった会話が、店先で交わされる。

鉢の大きさは、欲望の大きさ。
重い植木鉢を両の手で抱え。
足取り軽く、両の足が浮いた客の背中を見送った後。

店主は、買い手の真の目的を知らないまま。
訳も理由も分からず、早合点の憶測で。

「売れ筋ならば」

と、今のうちに...植木鉢を。
他所《よそ》から、無理にでも、買い占められるだけ、
買い占めておいて......っと。

「後から、高値で売り付けよう」

と算段する。そうだ。少々、多めに仕入れとこう。
腐るモノじゃあるまいし。

商売人の顔が綻び、笑みが溢れる。

みるみるうちに ――
藩内から、植木鉢が消えていった。

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