59.ニューフェイス
2日後――寮に戻った怜央とコバートは、先に戻ってたアリータとテミスに紹介した。
「彼女がラフマ。俺と怜央が苦労して連れてきた、新しいギルドメンバーだっ。そーれラフマ、皆に挨拶してみ!」
コバートの後ろに隠れてたラフマは、顔を覗かせ寮の住人を伺った。
ラフマの世界には居なかった獣人、リヴィアとシエロに警戒している様子だ。
「あ、あの……ラフマって言います……! ――よろしくっ!」
それだけ言うとコバートの後ろに引っ込んでしまった。
それも幼さ故の照れかと、皆は邪険に思うこともなかった。
「しかしアンタ、わざわざ連れ帰ってくることもなかったんじゃ無いの?」
「いやなあ……流石に1人置いてくことはできねーだろー? それならと思って、ラフマと俺と怜央で相談したんだ。結果、うちのギルドで働いてくれるってことになって落ち着いたってー訳」
「まあ俺も、依頼を手伝ってもらおうとかは思ってないよ。どちらかといえば裏方の手伝いをお願いしようかなって。ね、ラフマ」
怜央とは既に打ち解けていたため、素直に頷いて答えた。
「何はともあれ、皆もよろしく頼む。――ラフマのこと」
コバートはすっかりラフマの兄貴ポジションに収まっていた。
実際、ラフマにはコバート兄と呼ばれるようになっている。
怜央は夏目兄だ。
「――そういえばアリータは宝石? 買うとか言ってたけどどうなったの?」
「ああそれね。結局良い物が見つからなかったから買わなかったのよ」
「そうか、そいつは残念だ」
「……ん? なんでアンタが残念がってるのよ?」
「や、言葉の綾だよ。そいつは残念だったなって」
アリータの聴覚は人並み以上だ。
訝しむのに十分な確証があった。
ジトーっとした目で見つめてボロを待った。
「怪しい……」
「ははは、それよりほらっ。ラフマの初、異世界記念に飯でもいこう!」
今回の件には微力ながら協力したアリータ。
怜央もこのタイミングでは切り出せないと判断したが、関税について、またの機会に教えてあげようと改心したのだった。
しかしこの時、もう一つの副産物があることに、コバートと怜央はまだ気付いていなかった。
気づいていたのはテミスだけである。