閑話.軍の動き
怜央らが逃走に成功してから30分、敵の戦闘司令部は一行の所在を見失っていた。
「ええい!何をやっとるか!早くテロリスト共を見つけ出せ! 」
そこを仕切る高級将校は机を叩き、苛立ちを隠せずにいた。
そんな折、司令部に入室してきた女通信手がいた。
「大佐、報告です。
映画館のスクリーンばりに大きいモニターには、どこかトンネル内部の映像が表示された。
「テロリストはケプラコラール南西のインターチェンジからそのまま西海岸方面へと逃走しました。そして全長7.3kmのトンネルに差し掛かり、行方が分からなくなったとのことですが、そこの保守点検用カメラが姿を捉えていました」
流れる映像は2つ。
そのカメラは鋭いカーブを死角なく捉えれるよう配置されたものだった。
映像では入口方面から装甲車が入ってきて、そのカーブの中心に止まり、1人の女性が降りてきた。
フードを目深に被る女性、テミスである。
「一瞬ですが、ここで1人の女が降りてくると確認もせず2発、カメラに向かって発砲しています。どちらも命中しカメラを破壊しました」
「……バカな、一瞬すぎる。ハンドガンであの距離を、狙いも付けずにだと?」
「はい、このことからトンネルの下調べを行っていたと推測できます。また、トンネルは既に調べましたが装甲車は発見できませんでした。トンネル外に出たことは未だ確認できていませんので、ここで停車したことに深い意味があるのでしょう」
「――間違いない……相手はプロの集団だ」
「はい、それに加え、市場には出回ってない最新式装甲車を持っていたことから、背後には大きな組織の関与も考えられます」
大佐と呼ばれる男は机の上で手を組み思慮に
(どういうことなんだ!? あのデカい車が忽然と消える訳がない! もしメンテナンスエリアから逃げたとしても車ごと持って行けるものか! ……どうにかして
大佐は内心でぼろくそに悪態をついていたが、頭は
そこに大佐の
大佐はすぐさま的確な指示を出した。
「こうなったら引き続き身元調査、及び情報の収集に務めろ! 市街地での戦闘で何人かは面が割れている。それにあの時間帯は他の通行車両も多かったはずだ。どのような手段を使っても構わん。草の根を分けてでも探し出し、必ず行方を突き止めろ!」
女通信手は敬礼をし指示された業務に取り掛かった。