08.勢揃い
街中で発砲したことをコバートに告げると、警察がやってくるということだったので、急いでその場を後にした一行。
寮に戻るまでに先程の経緯を伝える怜央。
コバートは笑って聞いていた。
「なるほどねー。流石テミス嬢! でもなんで輩連中に絡まれてたんだ?」
「なんてことないわ。懐に隠してた拳銃に触らしてってお願いしただけよ。それなのに彼ら、頑なに拒否するんですもの」
「それで揉めてたってことね! そりゃ揉めるわ!」
「てかそれさっきの連中悪くなくね!? 悪人かと思ってたら庇った女の方がじゃん!」
「あら失礼ね。私は悪人なんかじゃないわ。言うなれば――そう、神よ!」
テミスは両手を広げてやや厳かな表情を作る。
怜央はそれを見て、
「あっ……(察)」
となった。
突然人に向けて発砲するヤバイ女から、自称神のヤバイ女にランクアップした。
怜央が冷ややかな視線を送り、言葉を失っている間にも寮についた。
203号室の扉を開けるとアリータは一人、机に突っ伏していた。
扉の開く音で頭を上げると眠そうだった顔から一転、ショックを受けたように覚醒する。
「ちょっとー、何で皆一緒にいるのよ? 私だけ除け者!?」
1人が寂しかったのか、相変わらず不機嫌っぽい。
「そんなんじゃねーよツン子。明日は仲良く皆で依頼に行こうぜ」
学園でその提案を聞いていた怜央は後押しをする。
「俺は賛成! 他のみんなは?」
アリータとテミスは参加するか不安だったが、アリータは除け者にされたと感じているらしく、容易に乗ってきた。
「しょーがないわね。私の力が必要ってなら付いてってあげるわよ」
それを聞いてか否か、幸いなことに気まぐれのテミスも乗った。
「……面白そうね。私も付いていこうかしら」
「よっし! 決まり! それじゃ明日は冒険に備えて各々準備しといてくれよ! 受ける依頼は俺が決めてくるぜ!」
「大丈夫なのか? 変な依頼受けてこない?」
「ばっか心配するな! 初めての依頼らしく、簡単なものにしておくさ」
アリータは自信に溢れているのか、それでは物足りないと告げる。
「私がいるんだからどんな依頼でも大丈夫よ! どうせなら高額報酬を基準に受けたら?」
「ばかね。私達は皆ホワイトなのよ? 受けれる依頼なんてたかがしれてるわ」
テミスは自分の指輪をアリータに見せつけた。
そこにはこの場にいる皆と同じ、白く透明な指輪。
予想外の指摘にムスッとしたアリータはただでは終わらない。
言い返さないと気が済まないのだろう。
「分かってるわよそのくらい! 私が言いたいのは――」
言い争いに発展しそうな気配を感じた怜央とコバートはお互いアリータとテミスの間に入って仲裁をする。
「おおう、おう、おう、まあま、そのくらいに」
「そうそう、仲良くしよう! 仲間なんだからさ!」
テミスは元よりさほど荒れてないが問題はアリータだ。
妙に高飛車なところのあるアリータは、ぷいっと顔を逸らす。
「とにかく雑用はチャラエルフに任せるわ! 変なもの受けたらたたじゃおかないんだから! 」
ぷりぷりしながら早足で出ていくアリータ。
残された3人は自然と顔を見合わす。
コバートは両手を挙げて、「参ったね」という様子。
「……まあ、初めはこんなもんでしょう。いずれ仲良くなるよ。きっと」
怜央は場を和ませるために言ったがテミスはあまり気にしてないみたいだった。
「別に仲良くなる必要なんてないけどね」
(クールなんだか協調性がないんだか。上手くいかないもんだな……)
怜央は苦笑いするしかなかった。