解決の糸口
出社命令が下りた。誰も今回のことは話したがらない。どこかびくびくしているところがある。彼らのうち何人が不正に気付いているのだろうか。私の部下のパワハラを訴えた女性が退職している。さすがに次長も新しい仕事を言いつけない。それで金庫の中で気になっていた睡眠口座の復活の事例を調べた。
すでに1年前に睡眠口座として解約処理されたものだ。金額は2千万余り、個人名義で架空口座臭い。本人が来ず社長と名乗る人間が来たので一度は断ったようだが、後日運転免許を持った社員と社長が来た。処理は経理主任がしている。支払いは仮払い処理している。その後すぐに仮払いは消されている。消された日付の2千万の支払いのあった伝票を2時間かけて発見をした。
今日は珍しく1階の古本屋のシャッターが上がっていて光が漏れている。
「ママは?」
「古本を売りさばいたようだよ」
文庫本に目を落としたまま定位置の国語の先生が答える。ほとんど同時にマスクに軍手をしたぽろんが上がってくる。
「いつまでも形見だと言ってれないものね。謹慎は解けたの?シチューがあるけど食べる?」
「最近いろいろ作るようになったな?」
「ほれ料理の本を下から持って上がって積んである」
先生が笑う。どうやらベトナムへ進んでいるようだ。続けて小声で囁く。
「3か月ぶりの昨日は赤タオルだよ」
「ところで東京には彼女がいるの?」
「ああ、いたが別れた。銀行を辞めると言ったら疎遠になった。彼女は平凡なサラリーマン生活に憧れたいるのさ」
「未練はない?」
「彼女とは泥酔状態の出会いだから」