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パワハラ

 予期すべく事件は起こった。8時過ぎに金庫の中での作業を終了した時、上半身裸の経理担当の女の子が背中から抱きついてきて金切り声で叫んだ。待ってましたと言うように次長と経理主任が駆けつけた。それで彼女の供述のみ本店人事部に報告された。と言うことで支店長から自宅謹慎を申し渡された。
 これについても検査部長に報告のメールを入れた。検査部長からメールが返ってきて、人事部の調査役がそちらに行くことになったので事前に今回の調査を話したので事実を伝えるようにと言うことだった。頭取の派閥がどれほどの大きさなのか分からない。
 初めて開店時間の5時にドアを押した。
「風邪ひき?」
「パワハラで自宅謹慎だ」
「そんなわけないでしょ?」
と無関心に炊事場からカレー粉を鍋に入れている。
「料理を作るのを見たのは初めてだ」
「ポールウインナーだけじゃないよ。5時から8時までは夕食兼のお客さんが多いのよ。いつも残っているいのは食べ残し」
「それで警察に引き渡されるの?」
と言いながら出来立てのカレーライスを並べて小瓶を抜く。
「銀行はそんなことはしない。都合退職だろう。でもこれは仕組まれたものだ」
「怖いところだね」
「検査部が庇ってくれなければ辞めるさ」
「ビルの入札が決まったわ。明日弁護士がビルの設備の立ち合いをする。いつまで店が出来るんだろうかしら。あなたには何か記念になるのを考えておくよ。何しろ気持よかったナンバー2だから」
「ナンバー1は?」
「もちろん高校の頃のヘッドよ」

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